お客様に喜ばれながら楽しく働きたい気持ちに、国境はない
【Q】タイ料理に特化した業態で展開されていますね。
国内にタイ料理やタイ文化の魅力を広めることを、会社の理念として掲げています。主力業態の『クルン・サイアム』と、オフィス街向けの『オールドタイランド』は、どちらもタイ・バンコクに残る、20世紀初頭の洋館のイメージです。
現地タイの高級ホテルや有名レストランで腕を磨いたタイ人シェフによる本格的な味を、カジュアルに楽しんでいただけます。また、『タイ料理研究所』はもともとレシピ開発用のテストキッチンから生まれました。出店先の立地や坪数などで使い分けています。
【Q】従業員の7割が外国の方だとうかがいました。
当社のシェフは全員タイ人です。店長も含めて従業員の国籍は不問ですが、自然とタイ人の割合が多くなりますね。外国人アルバイトの中には進学のために来日して半月足らずというスタッフもいます。
日本語の勉強をはじめたばかりで、飲食店で働いた経験や、お酒を飲んだこともありません。そんな状況でも一生懸命に働いてくれます。
【Q】接客などで、多国籍ならではの難しさはありますか?
言葉の問題はもちろんありますが、育った環境や文化の違いにも理解が必要です。たとえば日本ではお客様が席についたらまず水をお出ししますが、タイにはないサービスです。接客経験すらないスタッフに、まずそこから教える必要があるため、社員がサポートをしているものの、お客様にご不便をおかけすることもあります。
時には「日本語がぜんぜんできない人を、なぜ雇っているの」というお声もいただきます。そこで、“当店のスタッフは日本語を一生懸命勉強しているところです。ゆっくりお話しいただくか、もしくはタイ語でご注文ください”と口頭でお伝えしたり、店舗によっては貼り紙をしています。
それは、お客様に満足していただき、かつ、従業員がニコニコ働いているのがお店として目指すべき、あるべき姿と考えているからです。たとえばお客様のご来店時に水をお出しするオペレーションは決まりですが、目的ではありません。なぜお出しするのか、それが“おもてなし”だからだと理解できれば、自然に接客として身についていくでしょう。
そのため、日々の行動を振り返るチェックシートを用意して、「楽しく働けたか」「人に親切にできたか」などを書き込むようにしています。
【Q】従業員の自主性を重視されているのですね。
我々は、従業員を第一に、お客様、お取引先様、地域の方など関係する人々に幸せを感じてもらうことを目指しています。それが経営理念である『タイ料理を広めていく』につながると考えるからです。
たとえば、同じ労働時間でも、給料目的で働く人と、自分と周りの幸せのために働く人、大いに成功するのはどちらでしょうか。同じ事象に対してもポジティブに幸せと捉える人は成功しますし、それは意識すればできると思います。そのためのチェックシートです。