「まさにそこがビジネスの隙間ですね。みんな夜も遅くまで働いているので、少しでも早く家に帰りたいだろうなと思います。でも食事はしっかり摂りたい。さらに、少しでもヘルシーなものを食べたい。そんなワガママをすべて叶えるようなモノにしたかったです。だから、結果的にサラダになりましたが、条件さえ満たせば他の料理でも良かったのかもしれません」
食事の提供スタイルも、忙しく働く人のニーズを拾っているというわけだ。
日本になかったサラダの新しい食べ方を提案
おしゃれでゆったりとした店内でまず目を引くのが、広々としたオープンキッチンと、そこに並ぶ食材の数々。「スタッフのアドバイスを参考にしながら、自分好みのサラダをカスタムできる楽しみがある」と宮野氏は言う。
注文した具材は、キッチンスタッフが客の好みの大きさにチョップする。半月状の特殊な包丁を左右に動かし、切り刻んでいくその手さばきには見る楽しみもある。そこはもちろん「あえてお客様に見せる設計にした」と宮野氏。「店内で起きるすべてのことにはコストが掛かっているので、少しでもお客様が喜んでくれる要素があるのなら見せなければもったいない」という、宮野氏なりの経営哲学に基づくものだ。
「すべての具材を細かく切り刻んだチョップドサラダは、スプーンで食べます。すべての具材を混ぜることでドレッシングともよく絡み、見た目にも鮮やかな仕上がりになります。また単なるサラダと異なり、スプーンですくった時に“完成した料理”になっていることも魅力ですね」
サラダのボリュームは重さにして400~500g。手で持ってみるとずっしりと重い。食事としての食べ応えも十分だ。“サラダをご褒美に”というコンセプトも、これなら納得である。
「店のサラダは、合成保存料や合成着色料を一切使っていません。またできる限り作り置きはせず、ほぼすべての食材を店舗で毎日調理しています。確かに手間はかかりますが、丁寧に手作りした本物の味を提供し続けることで、最終的に評価をいただけると思っています」
自家製ハムも、新鮮な生肉を使い店内で昔ながらの製法で作り、チキンは自家製マリネートに漬け込んでから焼き上げるそうだ。ドレッシングやマヨネーズも、毎日手作りしているという。それだけ調理にこだわりながらも、「うちにコックはいません」と宮野氏は笑う。