理不尽だった職場のストレスを「働きやすい職場づくり」で解消
【Q】イタリア料理レストラン「トスカーナ」を開いた経緯を教えていただけますか?
私の実家は割烹料理屋を営んでおり、両親の姿を見て子供のころから「自分も飲食店をやろう」と思っておりました。独立志向が強く、修行に時間がかかる和食ではない飲食店をやりたいと思ったときに、好きだったパスタに目をつけ、当時2時間半待ちというパスタ専門の行列店に就職しました。
当時はまだパスタが今ほどひんぱんに食べられるものではありませんでしたが、勤めていたお店には一週間に2回も3回もパスタを食べに来る人がいたので、今後ラーメンのように普及していくだろうと見込み、自分もパスタ屋として看板を立てました。
【Q】正社員とアルバイトの構成比について教えてください。
人数的には、8店舗で正社員38人、アルバイトが19人です。ふつうはこの構成比が逆というお店が多いのではないでしょうか。社員のほうが長時間働くので、実際に店にいるスタッフの9割が社員という構成になっています。大手町や神谷町など、アルバイトの確保が難しいオフィス街の店舗でも安定して運営できるのは正社員が多いからだと思います。
人材は、毎年、出店計画にあわせて都内の調理士専門学校に求人を出して確保しています。見学に来る学生たちが働きたいと思えるような、従業員が楽しく働ける環境づくりを心がけています。働いている人がつまらなさそうだったら働きたいと思えないですからね。
【Q】「従業員が楽しく働ける環境づくり」にこだわるようになった理由を教えてください。
高校卒業後に最初に働いたお店が理不尽なことが多かったからですね。先輩社員に突然殴られて「理由は自分で考えろ」というようなことばかりで、後輩のほうが先輩より大人の感覚を持って接さないといけないというシステムがおかしいなと。
自分自身、飲食店という仕事を愛していたので、10人入って9人が辞めるというのが当たり前となっていることが残念でしたし、飲食業に夢を持って入ってきた人が、飲食業を嫌いになって去ってしまうという状況がとてもいやでした。従業員が働きやすいお店を作ることが、自分が勤めていたときのストレスの解消にもつながっています。
また、自分が店を持つという夢を実現できたので、同じ夢を持っている若い人を応援できる場所を作りたいという気持ちもありますね。自分自身人を育てるのが好きな性格というのも手伝っていると思います。
【Q】どのように「働きやすい環境づくり」をされていますか?
たとえば新入社員を面接するときも、入社後の働いている自分の姿をイメージしてもらうために、事務所などではなく実際に配置するお店を選んで現場を見せて安心してもらいます。入社後も現場で先輩から歓迎の気持ちを伝え、先輩から自己紹介させるようにしています。そして「教える前に相手がどんな人か教わりなさい」と。相手がどれくらいできる人なのかを知り相手のレベルにあわせた教え方をするようにしています。
また、社員が「ちゃんと評価されているのか」と不安に思ってストレスがたまらないように評価チェックシートをつくっています。店長、スーパーバイザー、本人がひとつひとつの作業項目に対して採点し、個人面談を通じてお互いの評価に食い違いがないかを理解しあう場を設けています。