しかし話題性だけではなく、味の面でもすぐれた特徴があるそうだ。
「同じ煮干しのだしでも、一般的なイワシと比べ、『あごだし』は魚独特の臭みやクセが少ないですね。上品でスッキリした甘みと深いコクのあるうまみが特徴です。また、他のだしや食材とも融合してくれるので、隠し味としても使いやすくて重宝します」
飲食店にも広がる「あごだし」ブームの波
飲食店における「あごだし」の活用については、和食の業態はもちろんだが、洋食、中華にも広がる可能性があるという。
「だしの使い方に決まりはありませんので、ラーメン、うどん、など麺類のベースとして。また中華のベースとなる「湯(タン)」や、洋食の「ブイヨン」の材料のひとつに『あご』を加えても面白いのではないでしょうか。とにかくどんな料理にも馴染んでくれるのが『あごだし』の特徴です」
手軽なパックの普及によって、「あごだし」を簡単に作れるようになったのも、外食のメニューとして取り入れられた一因だろう。しかし、鵜飼さんは飲食店での活用については、一からだしを取る事を薦めたいという。
「だしソムリエ協会でも、5年ほど前からあごだしを検定講座に取り入れていますが、特に飲食店の方から好評を頂いています。とにかく味や価格面で大きな差が出ますので、飲食店ではできるだけ手作りをおすすめしています。作り方は意外と簡単です。一番だしの味を実感したら、カツオや昆布などのだしとブレンドしながら目的に応じた味付けを加えてください。ブレンドすることで、あごだしの味やうまみがより一層際立ちますよ」
<あごだしの簡単な作り方>
(1)水に対して3%の『あご(トビウオの煮干し)』を適度な大きさにほぐし入れます。
(2)一晩水に浸けて『水だし』を作ります。
(3)弱火で10分ほどゆっくり煮出します。
(4)冷ましたら出来上がりです。
※ほかの煮干しと同様に、粉末状のものを使うと濃厚なだしになり、場合によっては魚臭さが強調されますので、できれば丸ごとの煮干を使ってください。
和食文化やだし文化など、いくつもの理由に後押しされる形で脚光を浴びているあごだし。2020年のオリンピックを控え、海外から日本のだし文化に注目が集まるなか、あごだしの人気は一過性では終わらないと鵜飼さんは見ている。店の看板メニューとしてあごだし使用を大々的に打ち出すもよし、隠し味として使うもよし、今後も店の味をワンランク上げるアイテムとして活用され続けるに違いない。