経営課題からものづくりプロセス全体の変革手法をまとめた「スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン」を公開

更新日: 2024年07月01日 /提供:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

―スマート化の道筋を描くための考え方や姿を「7つのリファレンス」で提示―


 NEDOは、「5G等の活用による製造業のダイナミック・ケイパビリティ強化に向けた研究開発事業」(以下、本事業)の一環で、強化すべき事業領域や取り組むべき研究開発課題を再定義するとともに、具体的な戦略におとしこみ、本事業の後継研究開発事業につなげることを目的とした「製造現場のダイナミック・ケイパビリティ強化施策と今後の普及に係る調査事業」(以下、本調査)に取り組んでいます。
 今般、本調査において、製造事業者が直面する経営課題の解決に向けて、デジタル技術を用いた、ものづくりの全体プロセスを最適化する手法について、特に、経営・業務変革課題の特定を起点としてデジタルソリューションを適用・導入する企画・構想設計段階に重点を置いてまとめた、「スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン」(以下、本ガイドライン)を公開しました。本ガイドラインでは、製造事業者の実態に即した変革をいかに進めていくか、その主体的な思考を補助し、スマート化の道筋を描くための考え方や目指す姿を具体的に示した「7つのリファレンス」を提示しています。
 本ガイドラインが、実際にスマート化プロジェクトのリーダー役を担う管理職やプロジェクトオーナーの経営層、また、各部門の実務リーダーにとっての「手引き」としても広く活用されることで、スマートマニュファクチャリングの促進につながることが期待されます。


1.背景
 2020年初頭からの新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、国内製造事業者の多くがサプライチェーン寸断リスクにさらされました。世界各地での地政学的リスクの増長や国内災害の多発なども含め、サプライチェーン寸断リスクを引き起こす「不確実性」は今後もさらに高まるであろう中、国内製造事業者にとっては、こうした状況でもなお柔軟・迅速な対応によりサプライチェーンを維持するためのダイナミック・ケイパビリティ※1の強化が一層重要な課題になるものと想定されます。こうした想定の下、NEDOは2021年度より本事業※2を開始し、製造現場において、5G等の無線通信技術の活用により、柔軟・迅速な組み換えや制御が可能な生産ラインなどの構築や、IT/OTのシームレスなデータ連携によるサイバーフィジカルシステムの構築を通じて、工場の自律的かつ全体最適な稼働を可能とすることで、不測の事態でも柔軟・迅速に対応できるダイナミック・ケイパビリティの強化を目指しています。
 本事業では、2021年度から2023年度までに11事業を採択し、前記取り組みに係る研究開発を実施するとともに、事業終了後の実用化確保の観点から、将来係る研究開発成果を実際に活用し得るユーザー企業も実証実験先として参画し、事業終了後にダイナミック・ケイパビリティ強化の先行事例として実用化し、関連市場への浸透・横展開を図るべく事業を推進しています。その一方で、本事業の事業領域は、製造現場のDXを主体としており、サプライチェーン間連携まで及んでいません。また製造現場でも当初期待されていた、ローカル5Gの活用による超低遅延性を生かした生産機器・制御装置といった遠隔リアルタイム制御なども実用レベルに達していないなど、今後に向けた課題も散見されています。
 本調査※3では、国内製造業のダイナミック・ケイパビリティ強化に向けて、ダイナミック・ケイパビリティを具備したスマート工場※4の全体像を示した上で、国内における現状と目指すべき方向性、評価指標、業種や規模別の導入事例など、製造事業者が直面する経営課題の解決に向けて、デジタル技術を用いた、ものづくりの全体プロセスを最適化する手法について、特に、経営・業務変革課題の特定を起点としてデジタルソリューションを適用・導入する企画・構想設計段階に重点を置いてまとめた本ガイドラインを公開しました。本ガイドラインにより、強化すべき事業領域、取り組むべき研究開発課題を再定義するとともに、具体的な戦略におとしこみ、本事業の後継研究開発事業につなげることを目的として調査を実施しています。

2.本ガイドラインの概要
 本ガイドラインは画一的な回答を提示するものではなく、製造事業者が自社に合ったスマート化の道筋を描くための考え方や目指す姿を具体的に示した「7つのリファレンス」を提示するものです。
 7つのリファレンスは図のように構成され、本ガイドラインの本文では、各リファレンスの概要や使い方を抜粋して説明しています。

図 7つのリファレンス構成図

 ガイドラインの各章の主な内容は表に示すとおり、ガイドライン本文では、スマートマニュファクチャリング構築の全体の流れや各リファレンスの概要を説明することに重点を置いています。本文では、各リファレンスのポイントを抜粋説明するにとどめており、各リファレンス自体は本ガイドラインの別紙にまとめています。

表 「本ガイドライン」各章の主な内容

 各製造事業者の生産システム特性の違いを踏まえつつ、経営課題からものづくりプロセス全体の変革へと展開する手法をまとめたものは、公表されている範囲では国内外でも例が少なく、本ガイドラインは、経済産業省のDX ガイドライン※5を充実させ、オペレーション領域の変革手法に新たなスタンダードを提起するものです。本ガイドラインが、実際にスマート化プロジェクトのリーダー役を担う管理職やプロジェクトオーナーの経営層、また、各部門の実務リーダーにとっての「手引き」として広く活用されることで、スマートマニュファクチャリングの促進につながることが期待されます。
 なお本ガイドラインは、以下よりダウンロードできます。
 スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン
 https://www.nedo.go.jp/library/smart_manufacturing_guideline.html

【注釈】
※1 ダイナミック・ケイパビリティ
環境や状況が激しく変化する中で、企業が、その変化に対応して自己を変革する能力のことです。(出典:経済産業省 2020年版ものづくり白書)
※2 本事業
事業名:5G等の活用による製造業のダイナミック・ケイパビリティ強化に向けた研究開発事業
事業期間:2021年度~2025年度
事業概要:5G等の活用による製造業のダイナミック・ケイパビリティ強化に向けた研究開発事業
https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100191.html
※3 本調査
事業名:5G等の活用による製造業のダイナミック・ケイパビリティ強化に向けた研究開発事業
/製造現場のダイナミック・ケイパビリティ強化施策と今後の普及に係る調査
事業期間:2023年度~2024年度
事業概要:「5G等の活用による製造業のダイナミック・ケイパビリティ強化に向けた研究開発事業
/製造現場のダイナミック・ケイパビリティ強化施策と今後の普及に係る調査事業」に係る実施体制の決定について
https://www.nedo.go.jp/koubo/IT3_100300.html
※4 スマート工場
工場内外のデータを可視化・連携することで、生産の最適化に閉じず、企業競争力の強化をもたらせる工場のことです。
※5 経済産業省のDXガイドライン
経済産業省製造産業局「製造業を巡る現状と課題今後の政策の方向性」(2024年5月22日開催「第16回産業構造審議会製造産業分科会配布資料4)の「2.製造業DX に向けた政策の方向性」(P31~)
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/seizo_sangyo/pdf/016_04_00.pdf

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