2026年11月4日(水)にアイメッセ山梨で開催される「第18回農商工連携マッチングフェア」(主催:山梨県商工会連合会)に市川三郷町商工会(山梨県西八代郡市川三郷町)の、会員事業者4者が出展します。
出展するのは、Sunny Kitchen、Maho Ichinose、coworker(カウワーカー)、株式会社タチカワの4事業者。
このうち、Sunny Kitchen、Maho Ichinose、coworkerの3事業者は、展示商談会への出展そのものが今回初めてです。
これまで一人または少人数で商品をつくり、地域を中心に販売してきた小規模事業者が、自らの商品を初めて本格的な商談の場へ持ち込みます。
一方、過去にも同フェアへの出展経験を持つ株式会社タチカワは、新たな商品「葡萄の炭火」(手持ち花火)について、顧客や用途、売場などの可能性を探る市場調査の場として今回のフェアを活用します。
4事業者に共通しているのは、今回の出展だけで市川三郷町商工会との関係が始まったわけではく、な創業支援、補助金申請支援、広報支援、税務支援など、これまで何らかの経営支援を受けてきた事業者であることです。今回の出展は、そうした日常的な支援の延長線上にある、次の成長段階への一歩と位置付けています。
特に、初めて展示商談会に出展する3事業者については、事前に専門家による個別指導を実施し、ブースの見せ方、来場者への声掛けや商談の進め方、アンケートの取り方・集計方法などを確認。単に出展するだけで終わらず、来場者やバイヤーから得た声を次の商品改善や販路開拓につなげられるよう、出展効果を高める準備を進めています。
■伝統産業・特産品を「つくる」から「売れ続ける」へ
市川三郷町商工会では、伝統産業の振興と、地域資源を生かした特産品の開発・販路開拓を地域経済支援の大きな柱として取り組んでいます。
しかし、商品を開発することと、それを継続的な事業に育てることは同じではありません。
商品ができた後には、
誰に売るのか。
適正な価格はいくらなのか。
卸売に対応できるのか。
月にどのくらい生産できるのか。
どのように配送するのか。
商品の価値は市場に伝わっているのか。
といった新たな課題が生まれます。
そこで本会では、商品開発や創業をゴールとするのではなく、その後の市場評価、販路開拓、改善までを一連の支援として捉えています。
■4段階・40項目で「今どこにいるのか」「次に何をするのか」を共有
こうした支援の質をさらに高めるため、市川三郷町商工会では新たに「販路開拓 現在地診断シート」を作成し、経営指導員等の間で共有・活用する取り組みを始めています。
販路開拓の成長過程を、
A段階 初商品・初卸
B段階 県内小口・反復取引
C段階 県外販路拡大
D段階 全国・海外展開・大量取引
の4段階に整理。
さらに各段階を合わせて40項目の課題に分け、それぞれに、
「どのような課題があるのか」
「どのような支援を行うのか」
「どこまで到達すれば次へ進めるのか」
を設定しています。
例えば初期段階では、原価計算、卸価格、商品説明、バイヤー向け商品シート、商品写真、食品表示、生産能力、配送条件など、展示商談会に参加する前に確認すべき項目を整理。
「商品提案書を完成させる」「月産能力を説明できる」「配送条件を確立する」など、支援後の到達点も明確にしています。
さらに各段階には、継続取引先数、利益率、商談成約率、月産能力など、事業の成長を確認するための目標も設定。
支援内容だけでなく、その支援によって事業者がどこまで進んだのかを、可能な限り数値や明確な到達基準で確認する仕組みとしています。
これにより、担当する指導員個人の経験や感覚だけに依存するのではなく、事業者の現在地と目標を職員間で共有し、支援の再現性と支援レベルの底上げを図ります。
■「販路を増やそう」の前に、生産・物流・表示まで確認する
展示商談会では、商品そのものの魅力だけで取引が決まるわけではありません。
バイヤーから、
「月に何個つくれますか」
「最低発注数はいくつですか」
「注文から何日で発送できますか」
「賞味期限は何日ですか」
「全国配送できますか」
と聞かれた際、それに答えられることも事業者として重要です。
そこで「販路開拓 現在地診断シート」に加えて、「バイヤー対応版 配送・物流確認シート」を用意。
製造人数、現在・最大の生産量、生産を制限している要因に加え、配送温度帯、賞味期限、配送可能エリア、発送リードタイム、最低発注数量、梱包、送料などを確認します。
また食品事業者については、「食品表示法改正対応チェックシート」を用意。
原材料規格書、アレルゲン、栄養成分表示、賞味期限の根拠、ロット管理などを確認し、取引拡大の前に対応すべき課題を可視化します。
単に「商談会へ行きましょう」と勧めるのではなく、取引する側であるバイヤーの視点から、事業者が不足している準備を一緒に確認する。
これも本会が目指す販路開拓支援の一つです。
■今回は「最初の一歩」にいる事業者が中心
今回出展する事業者の多くは、販路開拓の成長段階で見ると、まだ初期段階に位置しています。
目指す次のステップは、「県内小口・反復取引」です。
いきなり全国展開や大量受注を目指すのではありません。
まずは、
自社の商品が誰に評価されるのかを知る。
実際の取引に必要な条件を知る。
小さくても継続する取引先をつくる。
ことから始めます。
そのため、今回初めて展示商談会に参加する3事業者にとって、最も重要なのは「何件売れたか」だけではありません。
市場へ出たことで、自分たちの現在地と次の課題が何だったのかを持ち帰ること。
そこから商品や売り方を改善し、単発販売ではなく、県内で継続的に注文を受ける「小口・反復取引」へ進むことを目指します。
■会場では、「良いですね」のその先を聞かせてください
そこで今回、来場者やバイヤーの皆さまにお願いしたいことがあります。
商品をご覧いただき、「良いですね」と評価いただくだけでなく、ぜひ一歩踏み込んだ率直な意見をお聞かせください。
例えば、
「誰が買いそうか」
「どんな売場なら置きたいか」
「この価格なら仕入れられる」
「ホテルで使うなら、この包装にしてほしい」
「この発注量に対応できれば取引を検討したい」
「商品の背景はもっと前面に出した方がよい」
「取引するためには、あと何が不足しているか」
といった具体的な声です。
小規模事業者にとって、普段接することのないバイヤーや消費者から直接受ける評価は、次の商品づくりや経営判断につながる貴重な情報になります。
●台湾から市川三郷へ。初めて展示商談会で「次」を探す
Sunny Kitchen|パイナップルケーキ
Sunny Kitchenは、台湾出身の店主が一人でパイナップルケーキを製造しています。
これまでは生産量が限られるため、マルシェなど、作り手とお客様の顔が見える範囲を中心に販売してきました。
商工会への相談を重ねる中で、これからも商品を届け続けていくためには、小さな商いから少しずつ「事業」として次へ進む必要性を感じ、今回初めて展示商談会へ出展します。
目標は、いきなり大量に売ることではありません。
まず、「今の自分たちに何が足りないのか」を知ること。
将来的にはホテルなどで提供される茶請け菓子として使ってもらうことも目標に、価格、生産量、包装、納品方法などについて市場から直接評価を受けます。
●令和7年創業。商工会の創業支援から、初めての展示商談会へ
Maho Ichinose|ガトーノワ
Maho Ichinoseは、令和7年に市川三郷町商工会の創業支援を受けて創業しました。
管理栄養士の資格を持つ女性店主が、胡桃と自家製キャラメルを使った「ガトーノワ」などの焼き菓子を一つひとつ手作りしています。
今回が初めての展示商談会です。
将来の夢は、自分自身の飲食店を持つこと。
創業支援から、商品づくりへ。そして次は販路開拓へ。
創業をゴールとせず、その後の成長につなげるために市場の声を聞きます。
●女性クラフトマンも初出展。「素材の背景」まで価値になるかを市場へ問う
coworker(カウワーカー)|革と帆布の巾着バッグ
coworkerは、一人の女性クラフトマンが革や帆布を使った製品を手掛けています。
展示商談会への出展は今回が初めてです。
同事業者では、峡南地域で駆除された害獣の皮を活用する「峡南レザー」の取り組みや、家族の思い出が込められたランドセルを日常で使える製品へ生まれ変わらせるリメイクなどにも取り組んでいます。
今回の展示商談会では、製品そのものだけでなく、素材の背景や職人のものづくりへの考え方が、どのような顧客に価値として伝わるのかを確かめます。
●葡萄の剪定枝が「花火の火」に。新商品は誰に響くのかを市場調査
株式会社タチカワ|葡萄の炭火
株式会社タチカワは過去にも同フェアへの出展経験があります。
今回は新商品「葡萄の炭火」の市場調査を目的の一つとして出展します。
葡萄の剪定枝を炭焼きして花火の材料として利用し、江戸時代から受け継がれる橙色の伝統的な「和火」を表現した手持ち花火です。
山梨の葡萄と、市川三郷の花火。
「どんな人が買うのか」「土産、観光、贈答、体験などどの用途に可能性があるのか」「どの売場なら価値が伝わるのか」。
既存の出展経験を、新たな商品を市場に問う機会へつなげます。
■市川三郷の「文化的テロワール」を、事業として磨く
台湾から市川三郷へ移り住んだ人の食文化。
創業したばかりの作り手の技術と夢。
峡南の素材や家族の記憶を受け継ぐクラフト。
葡萄と花火という地域産業の交差。
本会では今回、こうした土地の素材だけでなく、人の経験、技術、歴史、文化、記憶までが商品価値に重なることを「文化的テロワール」と表現しています。
ただ物語をつくるだけではありません。
地域に眠る価値を見つけ、商品にし、市場に問い、その評価を受けて磨き直す。
その繰り返しによって、文化的テロワールを持続可能な事業価値へとつなげていきます。
■「小さくても強い企業」を増やしたい
市川三郷町商工会が目指す「強い企業」は、必ずしも規模の大きな企業ではありません。
自社の現在地を把握できる。
強みと課題を説明できる。
市場の声を聞くことができる。
必要な改善を自ら行える。
自分たちに合った顧客と継続的な取引をつくれる。
そうした企業です。
今回の展示商談会も、
経営相談→ 現在地診断→ 目標設定→ 出展準備→ 市場での検証→ 振り返り→ 次の支援
という一連の伴走支援の途中にあります。
「出展した」で終わらない。
事業者が一つ上の段階へ進んだかまで確認しながら、支援を積み重ねる。
市川三郷町商工会では、伝統産業や特産品の価値を地域の外へつなぎながら、地域に「小さくても強い企業」を増やしていきます。
ご来場の際は、ぜひ4事業者のブースにお立ち寄りください。「こんな売場に合いそう」「ここを変えればもっと伝わる」といった皆さまの率直な声が、事業者の次の一歩になります。市場との対話を通じて商品を磨き、地域に「小さくても強い企業」を一緒に育てていければと考えています。









