北海道の温泉を“点”から“面”へ。洞爺湖、知床・ウトロ、養老牛、川湯、湯の川の担い手が岩内で語った、温泉地存続のリアル

掲載日: 2026年08月12日 /提供:円山連携会議

源泉確保、宿泊施設の減少、飲食機能不足、価格競争--「ONSEN JOURNEY(R) SUMMIT 2026」が問い直した、温泉文化を次世代へつなぐ地域経営


参加者による集合写真

円山連携会議(北海道岩内町、代表高島将人)は2026年8月10日(月)、北海道岩内町の荒井記念美術館・いわない高原コンサートホールにおいて、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)青年部が制定した記念日「宿の日」に「ONSEN JOURNEY(R) SUMMIT 2026」を開催しました。
本サミットには、円山連携会議がブランド化を進める「いわない温泉(https://iwanai-onsen.jp/)」を起点に、北海道での宿泊観光産業の魅力や日本のおもてなし文化を広く伝えていく活動のひとつとして、円山連携会議を起点に、洞爺湖温泉、知床・ウトロ温泉、養老牛温泉、川湯温泉、湯の川温泉など、北海道各地で温泉地の経営や地域づくりを担う実践者が集結。国の観光政策、日本人と温泉文化、各温泉地が直面している課題、そして地域を越えた連携の可能性について議論しました。

温泉をまもる、温泉でつなぐ。
サミットの出発点にあるのは、温泉を単なる入浴施設や観光商品としてではなく、自然、食、文化、歴史、人々の営みをつなぐ地域資源として捉え直すという考え方です。
人口減少、地域産業の担い手不足、施設の老朽化、事業承継の困難、若者の流出。全国の温泉地が地域そのものの持続可能性を問われるなか、「温泉を守ることは、湯を守るだけではなく、その土地で働き、暮らし、訪れる人々の関係を結び直すことである」との問題意識から、ONSEN JOURNEY(R)は始まりました。


趣意説明 円山連携会議 代表挨拶 高島 将人 

歓迎の挨拶:岩内町 町長挨拶 木村 清彦


基調講演1.

温泉が地域を変える ~これからの観光政策と持続可能な観光地づくり、そして温泉の可能性~

北海道運輸局 観光部 部長 山崎貴志氏

観光客数を増やすだけでは、地域は豊かにならない
基調講演「温泉が地域を変える」では、国土交通省北海道運輸局 観光部長の山崎貴志氏が、人口減少時代における観光産業の役割と、持続可能な観光地づくりの方向性を提示しました。
講演では、訪日外国人旅行者約6人の消費によって、定住人口1人の減少に伴う年間消費額を補えるとの試算や、2025年の訪日外国人旅行消費額が約9.5兆円に達したことが紹介されました。
北海道においても、観光総消費額は約1兆5,159億円と、農業産出額約1兆2,558億円を上回る規模にあり、観光が地域経済を支える基幹産業の一つであることが示されました。
一方、重要なのは単に旅行者の数を増やすことではありません。
地域固有の歴史、文化、食、自然、暮らしを分かりやすく伝え、体験の価値を高め、旅行者の消費を地域内へ還元していくこと。山崎氏は、温泉を軸に地場産業や自然、歴史を掛け合わせることで、単独の資源からは生まれない高付加価値な観光コンテンツをつくることができると語りました。
そして観光の最終的な目的について、旅行者だけでなく、受け入れる地域と、そこで暮らす人々も幸せにならなければならないとの視点を示しました。

基調講演2.

日本人と温泉 ~その営みとしての温泉文化~

温泉学教授 松田忠徳氏

「産湯」に始まり、「湯灌」に終わる。温泉は日本人の営みそのもの
温泉学教授の松田忠徳氏は、基調講演「日本人と温泉~その営みとしての温泉文化~」において、温泉を観光施設としてだけではなく、日本人の生活、信仰、療養、自然観、精神文化が積み重なった「地域の営み」として捉える必要性を訴えました。
松田氏は、日本人の人生が「産湯」に始まり、「湯灌」に終わることを紹介。日本の湯浴み文化は、身体の汚れを落とす行為にとどまらず、神道における禊や、入浴によって功徳を得るとする仏教思想とも結びつき、心身を清める文化として受け継がれてきたと説明しました。
しかし、その文化を支える基盤は縮小しています。
講演では、全国の温泉旅館数が1995年頃の約1万5,800軒をピークに、現在は約1万3,000軒まで減少し、年間約300軒のペースで減少していることが紹介されました。
旅館や共同浴場の閉鎖、後継者不足、施設の老朽化が進むことは、宿泊施設が減るという経済的問題だけではありません。その地域で受け継がれてきた入浴方法、湯治文化、信仰、食、暮らしの記憶まで失われる可能性があります。
松田氏は、海外からの誘客に先立ち、まず地域住民や日本人旅行者自身が、その土地の価値を理解し、魅力を感じられる温泉地をつくることが重要であると指摘しました。

道内の温泉地の今と未来を語り合うクロストーク

温泉地の課題は、来訪者数だけでは測れない

パネルディスカッションの様子


株式会社萬世閣  代表取締役社長 浜野 清正 氏
有珠山とともに変化する源泉を、どう守るか--洞爺湖温泉洞爺湖温泉は、木材の集積拠点だった虻田港で働く労働者の湯治場として発展したと伝えられ、開湯から約110年を迎えます。
株式会社萬世閣 代表取締役社長の浜野清正氏は、有珠山の噴火とともに地域環境や源泉の状況が変化してきた歴史を紹介。将来の火山活動も見据え、温泉地として源泉をどのように安定的に確保していくかが重要な課題であると語りました。




北こぶしリゾート 代表取締役社長 桑島大介氏
世界自然遺産でも、地域内の飲食機能が足りない--知床・ウトロ温泉北こぶしリゾート 代表取締役社長の桑島大介氏は、利用できる温泉資源に制約があることに加え、地域内の飲食店不足が深刻な課題になっていると説明しました。
また、専務取締役の桑島敏彦氏は、知床が主要都市から離れているため、温泉だけを目的とした誘客では連泊につながりにくいと指摘。温泉、自然、野生動物、アクティビティ、食、サウナを一体的に体験できる「ネイチャーリゾート」へと地域ブランドを転換し、滞在すること自体が目的となる地域を目指す方針を示しました。




湯宿だいいち有限会社 代表取締役の長谷川周栄氏
6軒の温泉宿が、1軒に--養老牛温泉湯宿だいいち有限会社 代表取締役の長谷川周栄氏が幼少期を過ごした頃、養老牛温泉には6軒の温泉宿がありました。現在営業を続けているのは1軒です。
温泉地の存続そのものが危機に直面するなか、宿泊業の枠を越えたまちづくりが必要だと考え、日本語学校や専門学校の誘致にも取り組んできました。今後は、一企業として町とどのように連携し、地域全体を持続させていくかが問われています。




株式会社川湯ホテルプラザ 総務課支配人 榎本茂人氏
12軒から3軒へ。強酸性泉を地域再生の核に--川湯温泉川湯温泉は、1934年の国立公園指定以降、団体旅行を中心とする温泉観光地として発展してきました。しかし、旅行形態の変化や価格競争への対応が遅れ、12軒あった宿泊施設は3軒まで減少しています。
株式会社川湯ホテルプラザの榎本茂人氏は、新たな事業者の参入や地域再生に向けたまちづくりプランを紹介。行政と民間が一体となり、川湯温泉固有の強酸性泉と国立公園の自然環境を生かしたブランディングを進める考えを示しました。




湯の浜ホテル 代表取締役社長の金道泰幸氏
施設が増えても、価格競争という課題が生まれる--湯の川温泉300年以上の歴史を持つ函館・湯の川温泉。北海道新幹線の開業などに伴って宿泊施設は増えましたが、施設間の価格競争が激しくなり、需要と供給のバランスが崩れていることが課題となっています。
湯の浜ホテル 代表取締役社長の金道泰幸氏は、温泉事業者だけでなく、地元高校生、神社の宮司、寺院の住職、商店街関係者なども参加する「湯の川未来会議」を立ち上げ、地域全体で温泉地の将来を考えていると説明しました。



北海道の温泉を「点」から「面」へ。ただし、均一化はしないクロストークで共通して語られたのは、北海道の温泉地を個別の「点」として発信するだけでなく、地域同士が連携し、「面」として国内外へ伝える必要性です。
北海道は広大であり、地域間の移動距離が長いという根本的な課題を抱えています。一方で、各温泉地が同じ商品や体験を提供する必要はありません。
洞爺湖の火山、知床の自然と野生動物、養老牛の静かな環境、川湯の強酸性泉、湯の川の歴史と都市性。それぞれの違いを失わせるのではなく、異なる泉質、自然、食、文化を組み合わせ、一つの旅行体験として編集することが重要です。
川湯温泉の強酸性泉と、十勝川温泉のモール温泉を組み合わせた旅のように、異なる温泉地の個性を比較しながら楽しむ周遊商品も紹介されました。



クロストークの様子

完全な合意を待つのではなく、まず小さく始める温泉地を次世代へつなぐために必要なこととして、桑島敏彦氏は「まずは自分たちでやってみることが重要である」と述べました。
地域全体の完全な合意形成を待つのではなく、民間事業者ができる範囲から小さく試し、成果をつくり、地域へ広げていく。北こぶしリゾートが知床の自然や野生動物を守る「クマ活」や、サウナという新しい観光文脈を取り入れてきた事例も、その一つです。
さらに、新しいコンテンツを生み出す際には、若い世代が企画の主体となることの重要性も語られました。
一方、湯の川温泉の取り組みが示すように、民間による小さな実践だけでなく、高校生、寺社、商店街、宿泊事業者など、世代や業種を越えて地域の将来を話し合う場も必要です。



北こぶしリゾート 専務取締役 桑島 敏彦 氏

クロージング


円山連携会議 副代表 荒井 高志 氏
締めの挨拶では、円山連携会議 副代表の荒井高志が、今後のONSEN JOURNEY(R)について、「たびまえ・たびなか・たびあと」の一連の体験を通じ、温泉地との継続的な接点をつくる構想を示しました。
「たびなか」は、単に訪問先を巡るスタンプラリーではありません。
例えば洞爺湖温泉であれば、有珠山の噴火の歴史と温泉の成り立ちがどのようにつながっているのかまで知る。入浴だけでなく、その背景にある大地、歴史、暮らしの物語まで体験する仕組みを目指していけるのではないかと提案しました。
「たびあと」には、Tシャツやソックスなどを日常生活で使い、旅の記憶を持ち帰るという考え方があります。現在開発を進めているシャンプー、コンディショナーに加え、入浴剤やフェイスパックなど、温泉の特性を生かした商品の展開も検討していることを明らかにしました。
温泉地を一度訪れて終わるのではなく、旅の前から旅の最中、そして旅を終えた後まで、温泉と地域との関係が続いていく。その仕組みを北海道各地につくることが、ONSEN JOURNEY(R)の目指す姿であることを伝えました。
登壇者の方々からの応援も頂き、次年度の開催も行うことを伝え、閉会しました。



開催概要

名称
ONSEN JOURNEY(R) SUMMIT 2026

開催日時
2026年8月10日(月)15:00~18:00

会場
荒井記念美術館・いわない高原コンサートホール
北海道岩内郡岩内町野束505

主催
円山連携会議

後援
経済産業省北海道経済産業局
国土交通省北海道運輸局
公益社団法人北海道観光機構
公益財団法人はまなす財団
一般社団法人洞爺湖温泉観光協会

会場入り口

終了後の開催された交流会


ONSEN JOURNEY(R)について

ONSEN JOURNEY(R)は、「温旅で、まじわる」を合言葉に、新たなONSENライフスタイルブランドです。温泉を単なる入浴や観光商品としてではなく、自然、食、文化、歴史、人々の営みをつなぐ地域資源として再定義する取り組みです。
温泉を守ることを通じて、その土地で働く人、暮らす人、訪れる人の関係を結び直し、温泉を「地域資源」から、次世代へ継承する「社会資源」へ広げていくことを目指しています。

ONSEN JOURNEY(R)オフィシャルサイト
https://onsenjourney.jp/

2026年7月16日に開催したローンチイベントの様子はこちら
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000113207.html

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