
■研究の背景
日本の伝統的な発酵調味料である「塩こうじ」は、たんぱく質を分解して食材を軟らかくし、風味を向上させる調味料として広く注目されてきました。しかし、塩こうじに含まれる個々の酵素や成分が、食材のたんぱく質に対して科学的にどのように作用しているか、その詳細なメカニズムはこれまで十分に解明されていませんでした。そこで当社は、2018年度から2022年度まで、茨城大学との共同研究を通じて「液体塩こうじ」の肉の軟化効果と風味向上効果の科学的根拠を実証するための研究を行いました。■研究の内容と結果
今回の共同研究により、以下の3つの重要な知見が得られました。1. 「液体塩こうじ」による肉のたんぱく質分解の最適条件を特定
「液体塩こうじ」で牛肉を処理した際、たんぱく質の分解は温度40~50°C、pH 5.0の環境下で最も促進されることが分かりました。また、一般的な食肉の漬け込み温度である冷蔵環境下(4°C)や、一定の塩分が存在する状態でも、たんぱく質がしっかりと部分分解され、軟化効果を発揮することが確認されました。
2. 酵素以外の酸や塩による、「非酵素的軟化因子」の寄与を示唆
物理的な牛肉の硬さ(破断応力)を測定したところ、「液体塩こうじ」への浸漬によって牛肉の破断応力が45%程度低下(軟化)しました。さらに、熱処理によって酵素を完全に失活させた液体塩こうじを用いた場合でも、未処理の肉と比較して、20%程度軟化することが認められました。これは、塩こうじに含まれる酸や塩といった成分が、酵素以外の「非酵素的軟化因子」として、肉の軟化に相乗的に寄与していることを示しています。

3. 主要酵素が、旨味・甘味を向上させるメカニズムを解明
塩こうじから、主要な酵素である酸性プロテアーゼ「アスペルギロペプシンI」を多く含む画分を分離し、牛肉の筋原線維(筋肉の構造を作るたんぱく質)に対する作用を調査しました。
調査の結果、「アスペルギロペプシンI」が筋原線維の特定部位を分解し、筋肉構造を細分化していることが解明されました。さらに、この分解にともない、旨味成分(グルタミン酸・アスパラギン酸)や甘味成分(アラニン・グリシンなど)となる遊離アミノ酸が有意に増加することが確認されました。



■今後の展望
本研究成果により、当社の「液体塩こうじ」が持つ高い肉の軟化効果と風味向上効果のメカニズムが、酵素および非酵素的な調味成分の双方から科学的に裏付けられました。当社はこれからも、この知見をベースに、発酵の力を活かした健康で豊かな食生活への貢献を目指し、さらなる研究開発に取り組んでまいります。■掲載論文の詳細
【論文1】● 雑誌名:『Food Science and Technology Research』, 32 (2), 211-218, 2026
● 論文タイトル:Effect of shio-koji on proteolysis of bovine protein and beef tenderization
(和訳:牛タンパク質の分解および牛肉の軟化に対する塩こうじの影響)
● 著者:Yuji MIYAGUCHI, Mirai KOMAKI, Masumi OGAWA, Eisaku YAMAMOTO
● DOI:https://doi.org/10.3136/fstr.FSTR-D-25-00148
【論文2】
● 雑誌名:『Animal Science Journal』, 97(1), e70188, 2026
● 論文タイトル:Effect of Proteases in Fraction in Commercial Shio-Koji on the Proteolysis of
Bovine Myofibrils
(和訳:市販塩こうじ中のプロテアーゼ画分が牛筋原線維の分解に及ぼす影響)
● 著者:Yuji Miyaguchi, Miho Suzuki, Kana Tohyama, Eisaku Yamamoto
● DOI:https://doi.org/10.1111/asj.70188
■商品概要
粒状の塩こうじをハナマルキ独自の圧搾技術(製造特許取得)で液体化した万能発酵調味料です。非加熱製法で酵素を活かしたまま仕上げており、1.素材を軟らかくする「軟化効果」 2.うま味を引き出す「うま味増強効果」 3.気になる風味を抑える「マスキング効果」4.歩留まりを向上させる「保水効果」というハイブリッド効果を発揮します。原材料は「米こうじ・塩・水」のみというシンプルな調味料、2012年の国内発売以来、着実に販売を拡大し、現在は米国・タイをはじめ海外展開を加速しています。









