令和3肥料年度春肥の肥料価格について
全国農業協同組合連合会(JA全農)
JA全農は、令和3肥料年度春肥の単肥価格について以下の内容で決定しました。
1.決定内容
肥料原料の国際市況は、穀物相場の上昇を受け肥料の好調な需要が続くなかで、尿素やリン安の世界最大の輸出国である中国が国内需要を優先する政策を示したことから世界的に需給不安が高まり上昇を続けています。加里についても、好調な需要を背景に国際市況は大幅に上昇しています。為替は日米金利差の拡大を受け、円安基調で推移しています。
この結果、令和3肥料年度春肥の単肥価格は、下表のとおり石灰窒素を除いて、窒素質、りん酸質、加里質肥料、いずれも値上げとなりました。
春肥価格は秋肥価格に続いて2期連続の値上げとなり、前年の春肥価格との比較では、国際市況が急騰したリン安を使用する品目(複合肥料等)は、概ね20%を超える値上げとなります。
分 類 | 品 目 | 成 分 | 前期比(%) | |
単 肥 | 窒素質 | 尿素(輸入) | 46 | 17.7 |
尿素(国産) | 46 | 17.7 | ||
硫安(粉) | 21 | 10.6 | ||
石灰窒素 | 21 | 0.0 | ||
りん酸質 | 過石 | 17 | 4.9 | |
重焼りん | 35 | 4.6 | ||
加里質 | 塩化加里 | 60 | 17.0 | |
けい酸加里 | 20 | 3.9 |
注.価格変動率は本会の県JA・経済連向け供給価格ベースであり、JA・農家向け供給価格の変動率とは一致しません。
適用開始:令和3年11月から(地域・作物により異なる場合があります)
2.今次価格交渉をめぐる情勢
(1)海外原料市況
ア.窒素質肥料の原料であるアンモニアの国際市況は、堅調な需要に対し、中東のプラントトラブルの影響で需給が逼迫したことや、欧州の天然ガス価格が高騰したことから大幅に上昇しています。国産アンモニアも、原油価格の上昇や国際市況の高騰の影響を受けて、市況は上昇しています。
イ.尿素の国際市況は、穀物価格の上昇や好調な出荷、原油価格の上昇を受けて大幅に値上がりしています。夏場の不需要期に一時的な市況の下落が見られたものの、中国の国内需要優先の政策の強化による需給の引き締まりや、原油や天然ガス市況の上昇を受け、足元ではさらに急騰しています。
ウ.りん安の国際市況は、穀物価格の上昇とそれに伴う旺盛な需要や、原料の硫黄やアンモニア価格の高騰などにより急激に上昇しています。夏以降は中国の輸出停止への懸念から需給不安が高まっており、今後も堅調に推移するとみられます。
エ.塩化加里の国際市況は、北南米の旺盛な需要に加え、カナダの大規模な鉱山の漏水深刻化による稼働停止や、世界有数の加里産出国であるベラルーシに対する欧州・米国の経済制裁などにより需給逼迫が懸念され、特に北南米において急騰してきました。世界的な需要は好調であり、主要な輸入国である中国やインドの国内在庫が減少を続けていることから、アジア向けの市況も今後さらに上昇すると見込まれています。
(2)海上運賃
海上運賃は、旺盛な鉄鉱石需要や穀物輸送が堅調であることや、原油市況の上昇にともなう燃料油の値上がりから上昇しています。また、コンテナについても、アジア・北米間の輸送需要が増加していること、コロナ対策の検疫によるコンテナ船の稼働率低下から運賃の上昇が続いています。今後も輸送量の増加が見込まれており、海上運賃は堅調に推移すると見られています。
(3)外国為替
外国為替市場は、米国におけるワクチン接種の進展に伴う景気回復期待から米長期金利が上昇して日米金利差が拡大したことから円安基調となっており、現在は110-113円前後で推移しています。