
河内氏:キャップをかぶりメダルを首にかけた人物
岡山県吉備中央町を拠点に、樹木の管理・特殊伐採を手掛ける株式会社かわうち林業の代表・河内 孝介(31歳)が、2025年12月5~7日に香港で開催されたツリークライミングの国際大会「HKTCC2025(Hong Kong Tree Climbing Championship 2025)」において、世界各国の強豪を抑え、最高位を獲得。国際大会において日本人が活躍する前例が非常に少ないなかで、日本人の若手アーボリスト(樹護士)として大きな存在感を示した。
ツリークライミングチャンピオンシップについて

当大会出場者の集合写真

決勝で活躍中の河内氏
予選を勝ち抜いた5名で争われた決勝は、高さ約25m、2本の巨木をまたいだ水平移動距離30mに及ぶ、極めて難易度の高いセクションで実施された。
制限時間30分以内に、自ら樹上にロープを設置し、四方に配置された4つのベルを鳴らして地上に戻る。移動経路の設定やベルを鳴らす順番は選手に委ねられており、技術だけでなく「戦略(プランニング能力)」が勝敗を分ける内容だ。
今大会の決勝は例年以上の難設定となり、他の有力選手が苦戦する中、「4つすべてのベルを鳴らし、かつ使用したロープをすべて完璧に回収して降りてくる」というミッションを完遂したのは、河内孝介氏ただ一人だった。
タイムを競うだけでなく、ISAの国際基準を満たす安全性と無駄のない動きが高く評価され、総合優勝を果たした。
※ISA (国際樹木栽培協会)
国内外における「アーボリストの認知」と「樹木に対する保護意識」の違い
アーボリスト(樹護士)についてアーボリストとは、樹木の特性を熟知し、ロープ技術を駆使して高所でのメンテナンスや診断を行う「樹木の専門家」。河内氏のような若手アーボリストが国際大会で優勝することは、日本の林業・樹木管理業界における技術革新と、樹木の保護意識の向上を後押しする出来事といえる。
実は、日本にアーボリストの存在が本格的に導入されたのは、わずか約20年前のこと。日本では樹を切るのも保全するのも林業家として一括りに考えられる。「樹木の健康状態を診て、適切に整備し、何百年先まで残す」というアーボリストの役割は、まだ十分に浸透していない。

日本庭園において松の巨木を保全する河内氏

株式会社かわうち林業のスタッフ
海外では「マインドフルネスを目的として森林浴へ行く」「家の庭に大きな樹があると不動産の価値が上がる」など樹を大切にする傾向がある。
その一方で、日本は森林資源に恵まれているからこそ、不要な巨木は撤去するという感覚が根強い。
また高齢化に伴い個人で樹木の保全が難しい家庭も増えている。樹木の保全に対する意識の差は今後も広がり続けるだろう。
人を愛するように、樹を愛してほしい

今後の展望を語る河内氏
河内氏は、「多くの方に、樹を生き物として愛してほしい」と語る。
「私たち林業家は、樹を伐ることで生計を立て、樹に生かされている存在です。しかし、せっかく立派に育った樹を本当は伐り倒したくない。だから健康な樹を伐るご相談があった際には、必ず保全の提案もしています。また、日々の業務を通じて改めて感じるのは、樹と共に暮らすことが、いかに私たちの心を豊かにしてくれるかということ。例えば、庭の木を剪定して大切に育てている方は沢山いらっしゃると思います。それと同様の眼差しで身近な森や樹木のことを見つめてほしい。今回の国際大会の優勝をきっかけに、アーボリストという仕事、そして樹木に対するリスペクトを、一人でも多くの方に伝えていければ嬉しいですね。」
河内氏をはじめ、かわうち林業のスタッフたちは、世界レベルの技術を通じて日本の樹木文化を「消費」から「共生」へと変えていくことを目指している。
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◆経歴
河内 孝介氏
1994年岡山県生まれ。幼い頃から自然に囲まれて育ち、物心ついたころから樹々を大切にしたいと思うように。中学生時代の夢は宮大工。2016年から岡山県の森林組合で3年働き、2019年に独立し、2021年は「株式会社かわうち林業」として法人化。
JAC樹護士アーボリスト(R)チャレンジ2022とJAC樹護士アーボリスト(R)チャレンジ2024では会社内のメンバーを集めたチームで出場し、二連覇を果たす。
2025年には、香港で開催されたツリークライミングの国際大会「HKTCC2025(Hong Kong Tree Climbing Championship 2025)」で優勝。加えて、同年タイで開催されたツリークライミング国際大会でも優勝を飾る。
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