NECと米国のスタートアップ企業であるClimateAi社(注1)は、気候変動による影響に対するレジリエンス強化を目的とした事業共創に関する覚書(MoU)を締結しました。
ClimateAi社の気候リスク予測技術と、NECのアグリテックとAI・データ分析・最適化の知見を融合し、気候変動適応に関わる意思決定に直結するソリューションを提供する事業の構築を目指します。
背景
気候変動の進行により、食料安全保障や企業のサプライチェーンに対する物理的リスクが高まっています。一方で、気候変動に対する適応策の投資対効果(ROI)の可視化や導入後の継続的なモニタリングは依然として困難であり、資金の動員や予防施策の最適配分が進みにくい状況が続いています。
NECとClimateAi社は2025年8月、アフリカのカカオ・米を対象に、灌漑・品種変更・作付時期変更などの適応策の効果をAIで定量化するコンセプトモデルを共同構築し、適応ファイナンスや政策立案、現場の営農に資する可能性を確認しました。この成果はTICAD 9(注2)やCOP30(注3)の場で発表し、国際機関や開発銀行、民間企業などからの関心を得ています。
今般締結したMoUは、実証段階から事業段階への移行を見据え、農業現場から企業のサプライチェーン、金融・保険にわたる一貫した気候レジリエンス・ソリューションの共創を推進するものです。
具体的な取り組み
両社は、以下の領域での事業開発を協働で推進することを合意しました。
1.農業分野における気候変動適応策の投資対効果(ROI)分析
- ClimateAi社の長期気候変動予測技術と、NECのアグリテック事業で培ったノウハウを組み合わせ、品種変更や灌漑設備導入などの適応策を実行した場合の収量及び投資対効果を分析するサービスの開発を目指します。また、土地ごとに異なる気候変動の影響を踏まえて、経済的観点から最適な適応策を分析し、国際機関、開発銀行、各国政府による農業支援の高度化を支援することを目指します。
2.気候変動適応の観点から見たサプライチェーンのレジリエンス強化
- 農産物を主な原料とする製造業(食品や飲料メーカーなどを想定)に対して、調達先最適化や、調達先農場のレジリエンス向上などを支え、産業の気候変動適応を支えるサービスの実現を目指します。
- 上記産業に限らず、様々な産業のサプライチェーンや調達の意志決定を支援することを目指します。
3.金融サービスや保険を含む、他産業向けデジタルソリューション
- 農業保険など、気候変動に適応するために求められる金融サービスの高度化や、他産業における気候変動適応データのユースケース探索を実施し、事業領域拡大の検討を行います。
両社のコメント
本覚書の締結に当たり、両社のコメントは以下の通りです。
NEC みらい価値共創部門 ビジネスイノベーション統括部長 松田 尚久
NECは、ClimateAi社との協働による事業開発に合意できたことを心より歓迎します。ClimateAi社の強みである気候リスク予測・解析力と、NECのAI・データ活用力と社会実装力を掛け合わせることにより、サプライチェーンやインフラのレジリエンス向上と気候変動適応の両立に貢献できると確信しています。NECは「NEC Open Innovation」の理念のもと、多様なパートナーと新たな社会価値の創出を推進しています。今後もClimateAi社との協業を通じ、気候変動の影響の可視化と意思決定の高度化を軸に、国内外での実装を加速し、持続可能な社会を共創していきます。
ClimateAi CEO Himanshu Gupta
NECのグローバルネットワークとパートナーシップは、最も必要とされる場所で気候変動への適応策を実施する道を開きます。私たちは、農業計画策定における組織の支援、サプライチェーンのレジリエンス強化、そして迅速かつ大規模に展開できる実用的なソリューションの構築といった、今後の取り組みに意欲を燃やしています。この連携により、気候変動に関する情報に基づいた知見をサプライチェーンや調達計画に活かすことが可能になり、気候変動による圧力が高まる中で、産業界がより良い意思決定を行えるよう支援します。
今後の展開
本MoUに基づき、優先地域・作物・顧客セグメントを明確にし、国際機関、開発銀行、現地パートナー、食品メーカー、商社、金融・保険機関等との連携を強化し、早期の商用化を目指します。NECとClimateAi社は、持続可能な農業と食の安全保障、産業のレジリエンス向上に貢献していきます。
NECの新規事業開発は、「仕掛けよう、未来。」をキーメッセージに、スタートアップやパートナー企業との多彩な共創を通じた「NEC Open Innovation」(注4)を推進しています。今回のClimateAi社との連携もその一環として取り組んでいるもので、革新的な技術と領域を超えた連携により、これからも社会価値を生み出し、新しい未来を創造していきます。
(注1)
ClimateAi, Inc. https://climate.ai/
本社:米国 カリフォルニア州、設立:2017年、事業内容:ClimateAiは農業、食品、消費財分野向けに設計された気候適応とレジリエンスのプラットフォームを提供するスタートアップです。AIを活用した気象モデリングと生物季節データおよび水不足データを組み合わせて、短期、中期、長期にわたって、高度にローカライズされた作物固有の農業への影響に関する洞察を提供します。ClimateAiは、気候と農業の相互作用に関する深い専門知識と、農業および消費財を扱う多国籍企業や農業投資家にわたる顧客基盤を持ち、複雑な気候データを実用的な洞察に変換します。
(注2)
NEC、「TICAD Business Expo & Conference」とTICAD 9関連イベントに参加
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001016.000078149.html
(注3)
NEC、COP30の環境省主催セミナーにおいて「デジタルテクノロジーによるサプライチェーンレジリエンスの強化」について講演
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001139.000078149.html
(注4)

https://jpn.nec.com/innovation/index.html
<参考サイト>
NECデジタル適応ファイナンス https://jpn.nec.com/pcc/index.html
<本件のお問い合わせ先>
NEC ビジネスイノベーション統括部
E-Mail:info@agri.jp.nec.com









