
魚の鮮度は飲食店の生命線だ。しかし、従来の流通では、魚は産地の地方市場から中央市場を経由して地元に戻るため、鮮度ロスは避けられなかった。
この「流通の壁」を破り、広島の食のプロに“朝獲れ級”の鮮魚を届けているのが、魚靖(うおせい)だ。同社の強みは、社長が長年築いた地方市場との強いネットワーク。この伝手で、境港などの市場から魚を直接仕入れ、翌日には広島市内の飲食店へ配送するスピードを実現している。中央市場を介さないこの独自ルートは、他店との決定的な差別化を生む。なぜ魚靖は鮮度にこだわるのか。その戦略と想いを追う。
鮮魚を取り扱う長年の経験を生かした小売と卸売の両立
【Q】御社の事業について教えてください。

代表取締役 湯浅 裕靖 氏
代表取締役 湯浅 裕靖 氏(以下同)2024年に開業した複合型商業施設「Spirup Garden OHZU」(広島市南区)内に店舗を構える鮮魚店です。地元・広島に加え、山陰地方や九州などの産地からも仕入れています。消費者向けの小売のほか、飲食店向けの卸売も展開しており、市場から直接仕入れることで実現した鮮度の違いにお得意先様から好評をいただいています。
店舗では、内蔵処理や切り身加工、煮付けや塩焼きなどの調理販売をしています。自前ですべて加工できるため、釣り客が持ち込んだ魚の調理など、幅広いご要望に応じています。
【Q】境港の市場から直接仕入れていますね。

当社を立ち上げる以前、私は広島、鳥取、兵庫などの地方卸売市場で競り人として、長年、海産物に関わってきました。現場経験で培った目利きと相場感、加工技術を持つ鮮魚店は、顧客対応の強みになります。
そのような経緯で市場とのつながりがあるため、伝手を使って市場から直接仕入れることが可能なのです。通常、地方市場の商品は、東京や関西の中央市場へ一旦流れます。その後、再び地方へ戻るという流通経路をたどります。例えば、兵庫県境港で競り落とされた商品は、大きな市場を経由してから広島に届くため、どうしても鮮度が落ちてしまいます。
しかし、当社の場合は、今日境港で競られた商品を、翌日お得意先の飲食店様に配送することができます。この鮮度の差こそが、他社との差別化につながっています。
【Q】他の生鮮卸と共同配送されていますね。
他社の青果卸、食肉卸と配送体制で協力しています。各社のトラックで商品をまとめて配送することで、限られた人的リソースを有効活用しつつ、配送時間の対応を柔軟にしているのです。得意先の飲食店様にとっても、鮮魚、精肉、青果の生鮮3品がまとめて納品できるので、たいへん重宝されています。
現在は広島市全域と東広島市をカバーしていますが、今後は、広島市の東エリアに新店を設けて、2個所から配送できる体制を考えています。
おいしい魚を知ってもらい、魚を好きになってほしい
【Q】湯浅社長のこだわりとは?

私は、とにかく「おいしい魚を食べていただきたい」という一心でこの事業を興しました。残念ながら魚嫌いな方は少なくありません。それは、きっと状態のよくないものを食べた経験から増えていったのだと考えています。本当においしい魚を食べる経験があれば、きっと好きになるはずです。
多くの人が魚に抱く認識を変えていきたいと思っています。実際、当社の魚に出会って魚が好きになったと言っていただけることもあります。鮮度がよくおいしい魚を、自信を持って提供していきたいですね。
大量調理にありがたい加工納品に対応
【Q】今後、事業展開で注力したいことは何でしょうか?

現在、プロ野球チームの広島カープの大野寮へ納品していますが、今後は野球以外のスポーツ分野との取引も積極的に広げていきたいと思います。さまざまな市場から良質な鮮魚を仕入れているので、どのような顧客にもご満足いただける自信はあります。大衆魚から高級魚まで幅広いレパートリーに対応しており、細やかな加工にも応じることが可能です。
特に寮のような施設では、一度に多くの食事を用意するので、下処理を済ませて納品できるのは大きなメリットになるでしょう。その日のメニューに合わせた下処理に対応できる柔軟性が、当社の強みだと考えています。
株式会社魚靖
所在地:広島県広島市南区大州5-5-31 Spirup Garden OHZU 1階
代表者:代表取締役 湯浅 裕靖
企業HP:https://www.instagram.com/fishmonger_uosei/









