キユーピー株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役 社長執行役員:高宮 満、以下キユーピー)は、卵黄で作った“卵黄型マヨネーズ”のコクに寄与する成分の探索を行い、卵黄由来の低分子ペプチドがコクに寄与する可能性を確認しました。本研究成果について、2025年3月4日(火)~8日(土)に開催される日本農芸化学会2025年度札幌大会※1でポスター発表します。
■本研究の目的
卵黄で作った“卵黄型マヨネーズ”は、卵黄量が多いほどコクが強く、また製造直後よりも数週間後の方がうま味やコクを強く感じることが知られています。先行研究では卵黄型マヨネーズに含まれる卵黄由来ペプチドの量が、製造後、時間の経過とともに増加していることを確認しました※2。今回さらに研究を進め、卵黄型マヨネーズのコクに寄与する成分の探索を行いました。
■結果の概要
卵黄型マヨネーズのうち、卵黄配合量が多いマヨネーズほど、保存後(2カ月相当)に低分子ペプチドが増加していることが分かりました。一方、高分子ペプチドおよびタンパク質は、卵黄配合量が多いマヨネーズで保存後に減少することが分かりました。本結果から、卵黄型マヨネーズにおいて卵黄由来の低分子ペプチドのコクへの寄与が示唆されました。
ポスター発表ではさらに、卵黄型マヨネーズのコクに寄与すると考えられる成分がヒトコク味受容体「CaSR」※3に受容されるか(=受容体がこれらの成分を受け取り、味覚神経を介して人がコクと認識しているか)についても報告します。
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キユーピーが1925年に日本で初めてマヨネーズの製造・販売を始めてから今年で100年です。商品の改良に加えて、長年にわたり、おいしさの本質を追究する研究も続けてきました。今後も“おいしさ研究”を通して豊かな食生活を実現し、世界の食と健康に貢献していきます。
※1 日本農芸化学会2025年度札幌大会 https://www.jsbba.or.jp/2025/
※2 キユーピーアヲハタニュース 2021 No.97参照
※3 人の舌には、各味に対応する「味細胞」が存在し、その表面には「味覚受容体」があります。コク味受容体「CaSR(calcium-sensing receptor)」がコク味物質を受け取り、味覚神経を介して情報を脳に伝達することで、人はコク味を認識しています。
<研究概要>
■事前検証: 卵黄を高配合した卵黄型マヨネーズの味覚で感じるコクの変化
(試験内容)
卵黄を高配合した卵黄型マヨネーズ(高卵黄型※4)について、保存前と保存後(2カ月、6カ月、10カ月、12カ月)に官能試験を行いました。
(結果)
保存前に比べ、保存後はコクが強く感じられることが分かりました。
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図1 卵黄を高配合した卵黄型マヨネーズのコクの経時的な変化 /コクに関わる複数の要素について採点法で評価し、平均値を算出。保存前を「1.0」として相対値で比較。評価は基本的な味を認識するように訓練されたパネリストが実施。異なるアルファベット間で有意差あり。
■試 験: 卵黄配合量の異なるマヨネーズのペプチド量の変化
(試験内容)
卵黄の配合量が異なる2種類のマヨネーズ(低卵黄型、高卵黄型※4)について、ゲル濾過クロマトグラフィーで分子量分布を測定し、保存前および保存後(2カ月相当)の、「低分子ペプチド」と「高分子ペプチド・タンパク質」の量の変化を比較しました。
(結果)
低分子ペプチドは、保存により増加し、高卵黄型でその増加量が多いことが分かりました。一方、高分子ペプチド・タンパク質については、低卵黄型は保存前後の量に大きな差は見られなかったものの、高卵黄型では減少することが分かりました。高卵黄型で高分子ペプチドやタンパク質の分解が進み、低分子ペプチドが増加したためと考えられます。この変化が保存後の卵黄型マヨネーズのコクに影響を与えている可能性が示されました。
※4 高卵黄型は、低卵黄型に比べ約2.3倍の卵黄を配合。
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図2 卵黄配合量の異なるマヨネーズの保存前後におけるペプチド量の比較 /ゲル濾過クロマトグラフィーで分子量分布を測定(低分子ペプチド:1000Da以下、高分子ペプチド・タンパク質:1000Da以上)。上記グラフではゲル濾過クロマトグラフィーの応答値について、低卵黄型の保存前を「1.0」とした相対値で比較。