「きつね色」ってどんな状態?視覚障がい者が料理の音声ガイド役に 味の素(株)から、「音でみるレシピ SOUNDFUL RECIPE」公開

更新日: 2025年02月20日 /提供:味の素

全盲の視覚障がい者が、「音」で料理を楽しむコツを紹介 ~「音声読み上げ」に最適化されたUIUX。プロトタイプ版レシピを3月までに100点公開~

 味の素株式会社(社長:中村 茂雄 本社:東京都中央区)は、料理のインクルーシビティ向上を目指し、「音でみるレシピ SOUNDFUL RECIPE」を2月19日(水)に公開します。通常のレシピサイトは、画像・映像などのビジュアル中心で構成され、「きつね色」や「肉の色が変わるまで炒める」など、目が見えないとわからない表現が多く含まれていました。そこで、見えない人も見える人も、より料理を楽しめるように、一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティの協力のもと、全盲の視覚障がい者とともに新しいレシピサイトの在り方を構築。第一弾として、3月までに100点のレシピをプロトタイプ版として公開。スマートフォンなどの音声読み上げ機能に最適化されたUIUX設計のほか、音で料理を楽しむコツをご紹介します。





           「音でみるレシピ SOUNDFUL RECIPE」サイトURL:
          https://www.ajinomoto.co.jp/event/otodemirurecipe/

プロジェクト背景と概要
 味の素(株)は、12,000件を超えるレシピをWeb上で公開しています(※2025年2月時点)。しかし、その多くは視覚情報に依存した内容で構成されていました。日本に暮らしている全盲者のうち、晴眼者と同じようにガスコンロを使って日常的に料理を行う人も少なくありません。そこで、ソーシャルエンターテイメント・プログラムを提供する一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティの協力のもとリサーチを開始。視覚障がい者の方々との対話を通じて、レシピサイトにおけるアクセシビリティの課題を洗い出しました。その中で、視覚を使わずに料理をおいしく作るコツが「音」に秘められていることを発見。視覚障がい者も晴眼者も、より料理を楽しめるようなサイトづくりを目指して、まずはプロトタイプ版として「AJINOMOTO PARK」に掲載されているレシピのうち100レシピを変換して3月までに公開。(※2月19日時点では30レシピを公開)今後、継続して内容の改善・拡充に取り組んでまいります。

「音でみるレシピ SOUNDFUL RECIPE」設計ポイント
 「音でみるレシピ SOUNDFUL RECIPE(以下「SOUNDFUL RECIPE」)」は、大きく3つの特徴があります。スマートフォンの「音声読み上げ機能」を使って、視覚障がい者の方々が普段どのようにWebサイトを利用しているかを知り、また「音」に耳を傾けながら料理をする楽しさを体験いただけるサイトになっています。

ポイント1. 音声読み上げに最適化されたUIUX
 視覚障がい者の方々は、スマートフォンやPCの「音声読み上げ機能」を活用して、Webサイトの情報にアクセスすることができます。しかし、通常のサイトは晴眼者向けに設計されているため、あらゆるテキスト情報を一通り聴かなければ、肝心のレシピ情報にたどり着くことが難しい状況です。また、音声読み上げに対応していない画像は、ノイズとなってしまいます。そこで今回は、音声読み上げを前提としたUI/UX設計に挑戦しました。読み上げの妨げとなる文字や画像は排除し、必要な情報に最短でアクセスできるよう工夫しました。さらに、読み間違いが発生する文字を変換するなど(例: “g”は音声読み上げで”ジー”と読まれるため、”100g”を”100グラム”に変換)、詳細なルールを設定し、既存のレシピを見直しました。

ポイント2. 視覚に依存する表現の変換
 一般的なレシピには、視覚情報に依存した表現が多く含まれています。たとえば、「きつね色になったら」「焦げ目がついたら」といった表現は、視覚障がい者の方々にとっては理解が難しい障壁となります。「SOUNDFUL RECIPE」では、これらの視覚に依存する言葉を、目が見えなくても理解できる表現に変換しました。その結果、晴眼者にとってもわかりやすいレシピへとアップデートされました。また、一部のレシピには盛り付け方法も紹介しています。写真を見なくても盛り付け方法が理解でき、料理のおいしさが伝わる工夫を施しています。







ポイント3. 料理大好きな全盲のみきさんによる音声コラム
 今回公開するレシピのうち、10点には、料理大好きな全盲のみきさんによる特別サウンドコラムが付いています。コラムでは、みきさんが視覚を使わずに長年料理を続けてきた経験から、「天ぷらがおいしく揚がった時の音」「シチューがちょうどよく煮詰まったときの音」といった独自の視点で、つくり方のポイントを語っています。この音声コラムは、みきさんご本人の声で届けられ、晴眼者にとっても新鮮な気づきや発見が満載です。






プロジェクトのステートメント(みきさんより)
「料理をつくるとき、私は視覚以外の感覚をつかって、食材や調理器具と対話をします。
天ぷらを揚げるときは、耳を澄ませて。チャンチャン…と油が踊りだしたら、いまだ!
肉じゃがは、指先の感覚を頼りに。個性豊かな食材たちが、鍋で煮込むうちに仲良くなって一体感のある香りが生まれたら、完成の合図。慣れ親しんだ調理器具は、私の宝物です。
包丁の切れ味、鍋の奏でる音など、たくさんのことを教えてくれます。





視力を失い、できていたことができなくなり、不便を感じる生活の中で、視覚以外の感覚で楽しめるものが料理だったんです。
料理は私に生きる楽しさを教えてくれました。これからも、一生、ずっと、大好きです。目が見えないからこそ出会えた料理の楽しみ方をみなさんにも、おすそ分けさせてください。
料理大好きな全盲のみき」

みきさん プロフィール
広島県生まれ。フェリス女学院大学音楽学部声楽学科を主席で卒業。在学中、オーケストラとの共演を果たす。透明感のある歌声と表現力豊かな歌唱に定評があり、年に数回のコンサートを行う。2005年から「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」でアテンドを務め、企業研修のトレーナーも担当。また、聴覚、嗅覚、触角などの繊細な感性を活かし、商品コンサルティングも行う。?みきティ”の愛称で親しまれ、底抜けに明るいキャラクターで人気を博しファンが多い。また、飲食店を経営していた両親の影響により、幼い頃から食に関する興味を持つ。視覚を失ってからも工夫を凝らし料理をすることで成功体験を積み重ね、料理の時間を日々楽しんでいる。 ふだん大切にしていることは、「いいことをたくさん考えること。どんなことも好奇心を持って楽しむこと。しっかりと挨拶をすること。」

一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ代表 志村季世恵さん メッセージ
「ある時、みきさんが肉じゃがを作ってくれました。そばで作っている姿を見ていると、みきさん、うれしそうに素材を触っています。ニンジンの大きさやジャガイモの芽の位置を確認。包丁で薄く皮を剥き、芽もきれいに取り除いています。その日のお肉は豚バラで脂がどれくらいついているかを指で確認。『わぁ、いいお肉。脂もいい感じについてる。今日は、油は使わずお肉の脂だけで十分。豚肉の脂は甘いからコクも出るよね』と素材とおしゃべりをしているのでした。お鍋の中から届く情報には耳や鼻を使っていて、何だかとっても楽しそう。みきさんの感性にすっかり刺激を受けた私は、お夕食はもちろん肉じゃがにしました。





だってあんなに美味しかったのですもの、作ってみたくなります!感覚をフルに使い作ってみると、お料理がいつもより数段楽しかった。もちろん、その楽しみは今でも続いています。みきさんのサウンドフルレシピが多くの方に伝わりますように。お料理がもっと楽しくなること間違いナシです!」

志村季世恵さんプロフィール
バースセラピスト / 作家 /クリエイター / 一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ代表理事 /
ダイアログ・イン・ザ・ダーク コンテンツプロデューサー
バースセラピストとして心にトラブルを抱える方、子どもや育児に苦しみを抱える親御さんのケアを行う。また末期がんを患う方へのターミナルケア及びグリーフケアは独自の手法を以て本人や家族と関わり多くの医療者から注目を集める。1999年からはダイアログ・イン・ザ・ダーク(以下DID)の活動に携わり、発案者アンドレアス・ハイネッケ博士から暗闇の中のコンテンツを世界で唯一作ることを任せられている。活動を通し、多様性への理解と現代社会に対話の必要性を伝えている。大手通信販売会社とのコラボにより開発した商品「抱っこ帯」は累計35万本を超える超ロングランヒット商品に。また、DIDの視覚障害者×今治タオルメーカー×会津漆器職人のコラボ企画ではプロデュースを担当しグッドデザイン賞受賞に導く。著書に『エールは消えない いのちをめぐる5つの物語』(婦人之友社)、『さよならの先』(講談社文庫)など多数。

一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティについて
https://djs.dialogue.or.jp/
 たがいを認め、助けあう社会を実現するためのフラッグシッププロジェクトを開催。1999年以降、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」「ダイアログ・イン・サイレンス」「ダイアログ・ウィズ・タイム」のソーシャルエンターテイメントプログラムを開催し、これまで延べ約28万人が体験しました。2020年8月には、東京・竹芝に「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」をはじめとしたプログラムを体験できるダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」をオープン。これまで1,000社以上が導入した企業研修や、障害者「だからこそ」の感性を生かした製品評価や開発なども実施し、企業や団体と協業しながら多様性のある社会の形成及び発展を目指しています。
所在地 :東京都港区海岸1-10-45 アトレ竹芝シアター棟1階
設立  :2011年11月25日
代表理事:志村季世恵
事業内容:対話、五感及び異文化コミュニケーションに関する調査・研究事業
各種セミナー・講演・ワークショップ・出版等による普及啓蒙事業

味の素(株) 担当者 コメント
「料理の楽しさを、一人でも多くの人に届けたい。そう願い、私たちはこれまでも数々のレシピを発信してきました。けれど、それらが『みんなに』やさしいものであったか--レシピ情報の中に使われる料理の画像や映像は、視覚情報として便利な一方で、音声読み上げで利用する際は、情報の妨げになることもあると気づきました。そこで、レシピの情報を音声に特化させ、視覚障がい者の方々にとって心地よいレシピサイトのあり方を模索しました。その中、今回の取り組みにおいて多大なるご協力をいただきました、全盲であるみきさんの料理する姿には大変心を動かされました。包丁を巧みに操り、鍋のふたの振動で煮え具合を知る。炒める音の変化を合図に料理を完成させていく。視覚に頼らずとも、料理の中にはたくさんの情報があり無限の発見がある。音で”みる”料理のコツを、みきさんご本人の声で伝えるサウンドコラムは、晴眼者にとっても新鮮な魅力や気づきに満ちています。料理することの楽しさや喜びや感動を、もっと多くの人へ届けたい。その想いを込めて、『音でみるレシピ SOUNDFUL RECIPE』を公開します。」

プロジェクトメイキングムービー
 今回のプロジェクトのメイキングムービーもWebで公開いたします。視覚障がい者の方が、実際にどのようにスマートフォンでサイトにアクセスしているのか。どのように料理を作っているのかをご覧いただくことができます。ぜひご覧ください。(こちらの動画は公式YouTube「味の素KK公式チャンネル」で公開いたします。https://www.youtube.com/@ajinomoto





「SOUNDFUL RECIPE」は、まだ完成版の状態ではございません。今後より多くの視覚障がい者の方々はもちろん、晴眼者の方々のご意見や気づきもいただきながら、より良いレシピサイトのカタチを模索してまいります。

味の素グループ概要
味の素グループは、“Eat Well, Live Well.”をコーポレートスローガンに、アミノサイエンス(R)で、人・社会・地球のWell-beingに貢献し、さらなる成長を実現してまいります。
味の素グループの2023年度の売上高は1兆4,392億円。世界34の国・地域に拠点を置き、商品を販売している国・地域は130以上にのぼります(2024年現在)。
詳しくは、 https://www.ajinomoto.co.jp/ をご覧ください。

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