エキシマレーザ直接加工によるガラス材料への高生産性微細穴貫通(TGV)加工技術を開発しました

掲載日: 2024年12月04日 /提供:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

―加工径20μm以下で毎秒1000穴以上の微細貫通穴加工を達成―

 NEDOの「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」(以下、本事業)において、ギガフォトン株式会社と学校法人早稲田大学は、KrFエキシマレーザと深紫外域回折光学素子(DOE)によるマスクレス同時多点加工技術(以下、本技術)を開発しました。本技術により、中間基盤(インターポーザ)向けのシリコン、ガラス材料などの微細貫通穴(TGV)加工を高効率で実現します。
 本技術により板厚100μmのガラス材料にエッチングを用いず加工径20μm以下、アスペクト比5以上、かつ毎秒1000穴以上のマイクロビア直接加工ができることを実証しました。
 今後ギガフォトンは、さらに板厚200μmのガラス材料に対しても加工径20μm以下、アスペクト比10以上、かつ毎秒1000穴以上の加工生産性が得られる見込みであり、実証試験を進めていきます。ギガフォトンは本加工技術を用いたガラスインターポーザおよびガラスコアサブストレートのハイエンドCPU/GPUへ展開を推進することによりデータセンタの高性能化、低電力化に貢献していきます。

図1 開発した高生産性微細加工実証装置と実証結果

1.概要
 ポスト5G時代のAI、サーバで用いられる先端半導体では、大容量のデータを高速で処理することが必須であり、シリコンやガラスを材料としたインターポーザにより半導体チップと基板を高密度に接続する技術(2.5次元化、3次元化)が求められています。しかしながらシリコンを用いたインターポーザは高コストかつ誘電率が大きいため配線による電力ロスが大きいという課題があり、代替として期待されるガラスも微細穴あけ加工が難しく、加工生産性が低いという問題がありました。
そこで、ギガフォトンは、ガラスの難加工性の問題を解決するためKrFエキシマレーザと深紫外域回折光学素子(DOE)※1を組み合わせた高生産性微細穴あけ加工方法を考案しました。しかしながら、その実現には、回折後の光を微細かつ均一に照射する必要があるため、DOEの高性能化およびDOEを用いるための本技術の開発が課題となっていました。
 このような背景の下、NEDOは本事業※2で、前述の課題を解決できる技術として、ギガフォトン、早稲田大学と共同で、インターポーザ用難加工材(ガラス材料)への高生産性微細貫通穴(TGV)※3加工技術開発に取り組んできました。
 本事業により、板厚100μmガラス材料に対し、ガラスマイクロビア(微細貫通穴)の加工径20μm以下、アスペクト比5以上、かつ毎秒1000穴以上での直接加工による生産性を実証しました。本事業終了後も引き続き開発を継続し、ガラスインターポーザによる先端半導体の高性能化に貢献していきます。

2.今回の成果
(1)高生産性微細加工技術の開発
 KrFエキシマレーザと深紫外域DOEを組み合わせることにより、高効率マスクレス同時多点加工方式(図2)を実現し、難加工材における高生産性微細加工技術を開発しました。具体的には、〔1〕DOEを用いた深紫外域同時多点加工光学系の開発、〔2〕高ビーム品位KrFエキシマレーザ光源の開発、〔3〕アブレーション学理研究による難加工材微細穴の高生産性照射プロセス開発を実施しました。


図2 同時多点加工方式概要

 本開発の実施により、ガラス材料への微細穴加工かつ高生産性を得るためのレーザ照射要素技術が得られました。これらの成果は、本事業の課題である「DOEの高性能化およびDOEを用いるための同時多点加工光学技術の開発」を解決する基礎技術となります。

(2)高生産性微細加工技術の実証
 高生産性微細加工技術の開発で実現した技術をもとに、加工実証装置を製作しました。本実証装置にて、板厚100μmのガラス材料に対してマイクロビアを加工径20μm以下、アスペクト比5以上、かつ毎秒1000穴以上の直接加工生産性を達成しました。


図3 製作した高生産性微細加工技術実証装置の外観

 本実証装置での確認により、高生産性微細加工技術の開発での成果を装置レベルで実証することができ、同時にこれまで問題であったガラス材料への微細穴加工、加工生産性を解決できることを実証しました。

3.今後の予定
 ガラス板厚200μmにおいても加工径20μm以下、アスペクト比10以上、かつ毎秒1000穴以上の加工生産性が得られる見込みであり、ギガフォトンではさらにガラス板厚1000μm以上の材料に対する加工径20μm以下、アスペクト比50以上の実証試験を進めていきます。
 ギガフォトンは従来より本技術を用いた高生産性微細加工装置の市場導入を目指した活動を進めています。本技術をハイエンドCPU/GPUの製造工程に展開していくことで、データセンタの高性能化、低電力化に貢献していきます。

【注釈】
※1 深紫外域回折光学素子(DOE)
Diffractive Optical Element(回折光学素子)のことで、光の回折現象を利用し、レーザ光を空間的に分岐させることができる素子になります。

※2 本事業
事業名:ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先導研究(助成)
/ポスト5G、AI対応先端大規模LSIモジュール向け微細穴加工技術の研究開発
事業期間:2021年度~2024年度
事業概要:ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業

※3 高生産性微細貫通穴(TGV)
Through Glass Viaの略で、ガラスに形成された微細な貫通孔のことです。

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