株式会社帝国データバンクは、生鮮食品などの値上げを加味した食卓への影響度を示す「カレーライス物価指数」を独自に試算し分析を行った。
総務省「小売物価統計」から、カレーライスの具材となるじゃがいもなどの材料や、電気・ガス代など水道光熱費の全国平均価格を基に、それぞれの分量や各調理工程の分あたりエネルギー使用量を配分し、算出した。
<調査結果(要旨)>
- カレー1食分の調理費用、6月は329円 過去10年の最高値を更新
- 「カレーライス物価指数」は前年同月比9.8%増、13カ月連続のプラス
- 7月のカレーライス物価は過去最高値を更新する見込み 8月以降は下落の可能性も
[注]カレーライス物価:カレーライスで使用する原材料や、調理にかかる水道光熱費などを独自に試算した指標
各種価格データは「小売物価統計調査(総務省)」のうち各都市平均値(全国平均)、2024年6月確定分まで
カレーライス物価指数:各月のカレーライス物価を基に、2020年平均=100とした価格推移。なお、前年同月比の計算式は下記に準ずる
(計算式)([当月の指数]-[前年同月の指数])/[前年同月の指数]×100
カレーライスの材料・エネルギーの定義は下記の通り。調理シーンは「6食分(市販のカレールー1/2パック)をまとめて調理した」ものとした
【原材料】 ニンジン、ジャガイモ、タマネギ、牛肉(輸入)、コメ(コシヒカリ、1食:200g換算)カレールー(市販)、食用油
【エネルギー】 電気(炊飯器での調理、約7合分の炊飯+6時間の保温を加味した)、ガス(強火・中火・弱火の各調理手順)、水道水(上水道分のみ、下水道使用料は除く。食材・食器類の洗浄にかかる水量は考慮していない)
調査機関:株式会社帝国データバンク
家庭の食卓で人気のメニュー「カレーライス」の調理費用が高騰を続けている。カレーの調理に必要な原材料や光熱費等の価格(全国平均)を基に算出した、カレーライス1食当たりのトータルコストを示す「カレーライス物価」は、2024年6月に329円となった。2023年8月以降11カ月連続で300円台となったほか、単月では2015年以降で最高値を更新した。
1年前の2023年6月(299円)からも30円・10.0%値上がりし、安価で手軽に調理できるカレーライスのコスト負担増が続いている。肉や野菜の値上がりに加え、近年価格が安定していたコメ価格の急上昇が、カレーライス物価の上昇に大きな影響を及ぼした。
「カレーライス物価指数」は前年同月比9.8%増、13カ月連続のプラス
帝国データバンクは、生鮮食品などの値上げを加味した食卓への影響度を示す「カレーライス物価指数」を独自に試算した。カレーライス物価を構成する費用の内訳をみると、最も費用が高いのが全体の約6割を占める「カレー具材(肉・野菜)」で、前年同月から20円増の203円だった。円安の影響で輸入牛肉の価格が上昇したことに加え、野菜類も前年同月からキロあたり各100円超の値上がりとなったことが影響した。また、「ごはん(ライス)」の価格も急上昇しており、1食当たり97円と前年同月(89円)から8円増加した。品不足の懸念から販売価格の上昇が続いており、カレーライス物価を押し上げる要因となった。「カレールー」(24円→25円)、炊飯器での炊飯やガス調理など「水道光熱費」(4円、変化なし)では、前年同月から大幅な変化はなかった。
カレーライス物価を基に、2020年平均を100とした独自算出の「カレーライス物価指数」をみると、2024年6月の指数は120.0、前年同月比では9.8%上昇し、13カ月連続のプラスとなった。調理費用はコロナ禍以降で約2割上昇するなど、物価上昇の影響を強く受けている。
7月のカレーライス物価は過去最高値を更新する見込み 8月以降は下落の可能性も
東京都区部の物価動向を基に予想した7月のカレーライス物価は、6人分調理では初の2千円超えとなり、1人当たり費用で340円前後と大幅に上昇する可能性がある。農林水産省が7月末に発表した8月分の野菜価格動向については、ジャガイモ(バレイショ)とニンジン、タマネギともに「平年並みで推移」とされ、8月の同指数は6・7月の水準に比べると値下がりの期待感も出てきた。ただ、品不足が続くコメや輸入牛肉の価格は当面の間「上昇局面」が予想され、カレーライス物価は7月をピークとしながら今夏中は高値圏での推移が見込まれる。