そんな中、急務となるのが外国人の受け入れ体制の確立だ。言語や文化、慣習の違いなどでクリアすべき課題は少なくない。日本人とは別のマニュアルを用意するなど、外国人向けの教育制度の整備が不可欠だ。そして何より大切なのは「この人たちとガッチリ組んで一緒にやっていく」という組織としての気概と覚悟である。
採用にあたっては、224ヶ国、10万人以上が登録している外国人専用求人サイト「YOLO JAPAN」など、専門のサービスを活用する手もある。5ヶ国語翻訳での情報発信、動画による応募者の日本語力の確認など、便利で役立つ機能があり、全登録企業のうち70%が飲食業界だ。
とはいえ、小規模の飲食店にとっては、外国人採用に不安やハードルの高さを感じることもあるだろう。そんな場合は、最初から大量に採用しようとせず、1人からスタートしてもいい。まずは目の届く範囲でしっかりサポートしよう。
軌道に乗れば、その1人が「この店は働きやすくて楽しい」というクチコミを外国人コミュニティに流し、人が集まることも多い。そこから、トレーナー的な存在を育成し、母国語でよりリアルなニュアンスを外国人スタッフに伝えてもらうという仕組みを作ることもできる。
飲食店の経営者として、理念の浸透は急務
これまで示した教育や評価制度、労務環境改善の結果が出ない場合はどうすべきか。その時は今一度、経営理念を現場に落とし込めているか見直しが必要だ。これは、経営者の思いを現場に押し付けることとは異なる。「美味しい」「笑顔」「清潔」といったワードは、どんな飲食店にも共通する理念だ。
しかし、ただ掲げただけで、スタッフが具体的なアクションをしていなければ、仕組みとして機能しない。経営理念に沿ったお店を作るためには、現場スタッフに理念を唱和させるだけでなく、どう行動するかを考えさせ、話してもらうことが不可欠だ。
また、今の若い人たちの価値観を理解することも大切である。経営者が起こしがちな間違いが、「仕事は目で盗むもの」「怒鳴られて覚えるもの」という妄想だ。そういう方法で自身が育った人もいるだろうが、今の若い人たちにはパワーハラスメントのある職場としてしか捉えられない。
人が定着する仕組みづくりは、既に取り組んでいる飲食店もあるだろう。ただ、自社内ですべてを構築することが難しい企業は、外部の専門機関に意見を聞くのもいいだろう。客観的で的確なアドバイスが得られるはずだ。いずれにせよ、改善に向けた早急な対策が必要なのは間違いない。