20年にわたり進めてきたシステム化
―叙々苑のIT方針について教えてください。
システム管理部 主任 鮎澤 亮佑氏(以下、同):2020年にシステム管理部を新設し、社をあげてデジタル化による業務改善を体系的に考えていこうという方針で進めています。
IT化を進めるのには理由があります。コロナ禍になったことで以前よりも早い経営判断が求められるようになり、現状の売上やコストなどの状況をいち早く把握する環境を作る必要があったためです。
私はシステム全般に関する業務を行っていて、店舗へのシステム導入や電話・インターネット環境、パソコン周りの対応やPOSレジのサポート、メニューの価格変更時の設定などを担当しています。
―IT環境はどのように整備されていますか?
もともと2002年頃にレジスターからPOSレジに変え、店舗と叙々苑フードファクトリー(セントラルキッチン)間のやり取りをFAXからシステムに切り替えたり、売上管理システムを入れたりしてきました。
当社では「店では数字目標を負わせない」というポリシーがあります。店舗に売上や人件費、原価率などの予算を与えてしまうと、サービスの質が落ちると考えているからです。それよりも、店舗ではお客様が満足していただけるような接客をしてもらいたい。だからこそ、原価などの経営数値は本部とフードファクトリーが担っています。
しかし、コストの大部分を占める食材の納品書が紙のままで、事務作業に大きな負担がかかっていました。店舗が仕入れ先へFAXで発注し、納品後に検収済みの納品書をフードファクトリーに郵送します。フードファクトリーでは店舗ごとの納品書をもとに仕入れ品の金額、数量などを売上管理システムに手入力し、さらに本部が請求書の金額と合っているか再度チェックするという2重、3重の確認作業が発生していたのです。
さらに大量の紙がたまって保管場所にも困るほどでした。1店舗あたりFAX発注で毎日10~15枚の用紙を使うので、全68店舗からフードファクトリーに送られる納品伝票は1日1000枚にもなっていました。このほか、FAXだとどうしても誤送信や郵送の手間、送り漏れ、紛失のリスクもあります。
紙の書類処理で大変だったのは店舗だけではなく本部も同じです。経理担当者2名で毎月500社ほどの請求書を処理しているのですが、紙の金額を会計システムへ入力・確認する作業に多くの労力を割いていたのです。請求書が届く日も取引先によって違うため、月次決算は翌月下旬にようやく出るような状況で、経営判断のスピード化に支障が出ていました。
こうした課題の解決のためにさまざまなシステムを模索していたところ、取引先の多くからインフォマートの受発注システムなら対応できるという声をうかがいました。調べてみると7割の取引先がすでにインフォマートの受発注システムを使っていたのです。そこで早速『BtoBプラットフォーム受発注』『BtoBプラットフォーム請求書』を採用しました。
―システム導入後、稼働まではいかがでしたか?
システムの導入から本格稼働までは、他社システムの導入と比べてもフォローが手厚く確実に早かったと思います。当社ではシステム導入の対応は基本的にひとりでやっていたのですが、インフォマートで取引先への案内や導入説明会の開催、その後の取引先へのフォローなどを請け負っていただきました。取引先もスムーズに進められたと感じています。また、社内の従業員向けに操作説明会を何度も開催していただいたことで、問題なく店舗でシステム発注を開始できました。
FAX発注の脱却で、金額の確認作業から解放
―システム化で負担は減っていますか?
店舗ではタブレットやパソコンを使って発注していますが、現場の負担は大きく改善されたと感じています。紙からデータ管理にしたことで店舗でのFAX送信、伝票の郵送作業がなくなり、ひと月前の仕入れ金額が分からないということもなくなりました。
さらに本部でも、今までは紙の請求書の内容を経理ソフトに手入力していましたが、『BtoBプラットフォーム受発注』で出力したCSVデータを読み込ませるだけになったので、その手間もなくなり正誤チェックも不要になりました。
以前は早くても翌月20日にならないと正しい月次決算が出ませんでしたが、システム化のおかげで翌月5日にはある程度の数字が出せます。棚卸しの精度もこれからさらに上がっていくと思います。
―請求書も紙ではなくデータでやり取りされていますね。
『BtoBプラットフォーム請求書』を導入した目的は2つあります。ひとつは請求書をデジタル化することでインボイス制度や電子帳簿保存法に対応すること。もうひとつは、経理処理にかかる手間とコストを減らすためです。
今までは、経理担当2名で1ヶ月に500社分もの請求書を経理ソフトに手入力していました。それがCSVデータの読み込みで完了するようになったので、店舗別の完全な収支がスピーディーに出せるようになりました。その甲斐もあり、新たに仕入れの分析などを担当する「購買管理係」というチームを作り、システム化によって蓄積したデータを分析する余裕ができたのです。今後は購買管理係が見積管理も担うことで、仕入れに関する社内統制もよりしっかりしていくと考えています。
バックヤード業務の自動化で、サービスに集中する環境を構築
― 作業の削減は、働く側のモチベーションにも関わってきますね。
当社では「良質吟味、おいしさが最良のサービス」という理念をうたっているのですが、「おいしさ」をあえてひらがなで表記しています。漢字の「美味しい」を使わないのは、叙々苑の考える”真のおいしさ”とは味だけではなく五感すべてが満たされて至福の幸福感を味わっていただくことで、初めて成立するものだと考えているからです。システム化もそのためにあるものです。
バックヤードの業務が自動化されれば、現場は本来の仕事であるお客様対応に集中できるようになります。作業に追われることがなくなり、現場が人とのやり取りに専念できれば、メリハリのある働き方が叶うでしょう。結果として、外食産業で働くことに対する楽しみや意義が見えやすくなり、業界全体が良くなっていくのではないかと思います。そのためにも、まずは現場がいきいきと働ける環境を作ることが大切だと考えています。システム化は手段のひとつであり、そのための環境を作るのが私たちシステム管理部の任務だと思っています。
― 今後の展望をお聞かせください。
今回は発注業務や請求処理をシステム化しましたが、今後もシフト管理や報告書作成など引き続き現場の負担となっているバックヤード業務の改善ができるシステムを導入したいと考えています。お客様に費やせる時間を少しでも増やしていくことで、お客様に“真のおいしさ”を感じていただくためのシステム化を当社は目指しています。
株式会社叙々苑
本社所在地:東京都港区六本木6-1-24 ラピロス六本木 5F
代表者:代表取締役社長 新井 昌平
事業内容:焼肉レストランの経営/焼肉弁当・焼肉のたれ・サラダのたれの製造販売
公式ホームページ:https://www.jojoen.co.jp/