「京橋の東側エリアって、オジサンの街なんですよ。だから当時は男性向けの渋い燻製専門店を目指していたのです。でも全然受け入れてもらえませんでした。すると現場のスタッフから、私とは正反対の意見が上がってきたんです。『ちょい飲みが女性にも流行っているので、思い切って女性向けの店にしてはどうか』と」
その言葉を受け、店作りやメニュー作りを女性向けに大きく方向転換した『鉄燻CHOI』は、瞬く間に人気となり、ほどなく大阪で話題のバルストリート「お初天神裏参道」に、2号店となる『鉄燻CHOI URASAN』をオープンさせる。
もっと食べてみたいと思わせる、燻製オタクたちのこだわり
大阪・裏参道への出店にあたっては、さらに女性を意識した店作りが行われた。そのひとつが、看板である燻製メニューのブラッシュアップだ。
「おつまみや前菜はもちろん、肉や魚のメイン料理、サラダ、パスタ、ご飯もの、デザートまで、全て燻製メニューにしました。1号店では燻製を使っていないメニューも出していましたが、お客様に『これは燻製じゃないんですね?』とガッカリさせてしまったことがあるので」
燻製の既存イメージを覆すようなメニュー構成は、鉄燻CHOI URASANの真骨頂ともいえる。
同店ではソーセージやベーコンなど、燻製としてイメージしやすいものから、牛すじ、フォアグラから、かまぼこ、芋けんぴまで、ありとあらゆる食材が燻製になっている。しかも決して奇をてらったメニューではなく、いい意味で想像を裏切る味に仕上っている。
「人気メニューのフォアグラも、サーモンもベーコンも、全て塊の状態から仕込みます。調味液に浸けるのに2日、それから塩分を抜いて燻煙と乾燥を何回も繰り返すんですが、一般的なものに比べて、燻煙や乾燥も軽めに仕上げています。
提供前に鉄板で焼いたり、一手間加えたりする前提ということもある。燻製の香りは強いので、やり過ぎるとたくさん食べられないという。
また素材によって大きさも違えば、香りの付き方も違う。もっと食べてみたくなる燻製度合いの見極めは、研究に研究を重ねた経験則のなせる技といえる。
しかしあらゆる食材を使って、燻製の試作を重ねる中で、失敗も数多く経験したという。