カゴメ株式会社(以下 カゴメ、※1)と日本電気株式会社(以下 NEC、※2)が設立した、AIを活用して加工用トマトの営農支援を行う合弁会社DXAS Agricultural Technology LDA(以下 DXAS、※3)は、NECの農業ICTプラットフォーム「CropScope」の少量多頻度灌漑(※4)に対応したAI営農アドバイスと自動灌漑制御機能(※5)を組み合わせたサービスを、北イタリアとポルトガルのトマト圃場に導入しました。「CropScope」初導入となる北イタリアでは、本年4月~8月に実証試験を実施したところ、導入していない区画と比較して少ない灌漑量で収量が増加しました。また、ポルトガルの大規模トマト圃場にも同時期に商用導入し、高い収量を得ることができました。今後3社は再現性の確認を行いながら導入地域を拡大し、世界各地で問題となっている営農現場における水不足に対応することで、より環境に優しく収益性の高い営農を促進し、持続可能な農業に貢献します。
(※1)代表取締役社長:山口聡 本社:愛知県名古屋市
(※2)取締役 代表執行役社長 兼 CEO:森田隆之、本社:東京都港区
(※3)CEO:中田健吾 本社:ポルトガル・リスボン
(※4)作物が必要とする量の水や肥料を多数回に分けて少しずつ与え、作物にとって最適な土壌水分量を保つ栽培手法のこと。
(※5)灌漑設備と連携し、水や肥料をリモート・自動で制御する機能のこと。
■背景
昨今、農業資材やエネルギー価格の高騰に加え、干ばつをはじめとする気候変動が世界各地における農作物の栽培に大きな打撃を与えており、持続可能な農業にとって水不足対策が喫緊の課題となっています。一方で少量多頻度灌漑は、最適な土壌水分量を保ちながら水の消費量を削減する栽培手法として知られています。しかしこの手法は、変動する土壌水分量を最適に保ちながら細やかな管理が求められ、広大で複数の圃場をもつ生産者には判断が難しく、管理が複雑で作業負荷が大きいことから普及が進んでいませんでした。
■今回の取り組みの概要と結果
今回、「CropScope」のサービスメニューである少量多頻度灌漑に対応したAI営農アドバイスと自動灌漑制御機能を、北イタリアとポルトガルのトマト圃場に導入しました。
「CropScope」初導入となる北イタリアでの実証試験では、「CropScope」を活用していない区画と比較して、約19%少ない灌漑量で収量を約23%増加することができました。これにより、今まで「CropScope」を導入していた地域とは気候や土質などが異なる新たな栽培環境でも、良好な成果が得られることを確認しました。またポルトガルでは、熟練指導者の技術も組み合わせることで、約21ha(2圃場合計)と大規模な商用圃場で148t/haと高い収量を得ることができました。
<北イタリア試験圃場における取り組みの概要と結果>
<ポルトガルDXAS商用大規模圃場における取り組みの概要と結果>
(*) 「UG11227」「UG16112」は、カゴメグループUnited Genetics社の品種です。
■今後の展開
カゴメとNECは今後、本取り組みから得た知見を「CropScope」の機械学習に取り込むとともに、DXASも加えた3社で実証試験を繰り返し行い再現性を高めることで、AI営農アドバイスの精度を向上し、ソリューションを強化する予定です。またDXASは、本サービスを世界の加工用トマト市場に普及させていくことで、さらなる営農支援を加速していきます。
※参考
■DXAS Agricultural Technology LDA(ディクサス アグリカルチュラル テクノロジー)
■DXASの核となるサービス「CropScope」のご紹介(機能と提供価値)