<推定野菜摂取量測定器「ベジチェック(R)」を用いた研究成果>皮膚カロテノイドレベルが高い人ではアルツハイマー病に関連する血液指標が良好であることを確認…

掲載日: 2026年10月28日 /提供:カゴメ

~カゴメ、弘前大学、シスメックスの共同研究~

 カゴメ株式会社(代表取締役社長:奥谷晴信 本社:愛知県名古屋市)と弘前大学(学長:福田眞作)は、臨床検査機器・試薬を開発・製造・販売しているシスメックス株式会社(代表取締役社長:松井石根 本社:兵庫県神戸市)との共同研究において、弘前大学COI-NEXT拠点(*1)が有する岩木健康増進プロジェクト(*2)の健康ビッグデータを活用し、推定野菜摂取量測定器「ベジチェック(R)」(*3)で測定される皮膚カロテノイド(*?)と、アルツハイマー病に関連する血液バイオマーカーとの関係を解析しました。その結果、60歳未満の健診参加者において、皮膚カロテノイドレベルが高い群では、アルツハイマー病に関連する血液指標である血中アミロイドβ42/40(*?)が良好であることが示されました。本研究成果は、2026年10月1日に国際学術雑誌である「Scientific Reports」に掲載されました。


■発表のポイント
- 岩木健康増進プロジェクト健診で得られた健康ビッグデータを用い、皮膚カロテノイドレベルとアルツハイマー病に関連する血液バイオマーカーとの関連を解析しました。
- 60歳未満の成人において、ベジチェック(R)で測定された皮膚カロテノイドレベルが高い群では、全自動免疫測定装置で測定された血中アミロイドβ42/40が良好であることが示されました。
- 血中アミロイドβ42/40は、アルツハイマー病の症状が現れる前から変化する早期血液指標と考えられています。本研究は、日常の食生活を反映する皮膚カロテノイドレベルが、比較的若い世代からこの指標と関係している可能性を示すものであり、食生活と将来の認知症との関係を解明するための新たな手がかりになることが期待されます。



■研究の背景
 超高齢化社会において、認知症は個人だけでなく社会全体で取り組むべき喫緊の課題です。アルツハイマー病は認知症の主要な原因の一つであり、早期診断や適切な介入が重要とされています。アルツハイマー病に関連する脳内病理の評価には、アミロイドPET検査(*?)や脳脊髄液検査(*?)などが用いられていますが、検査へのアクセス、身体的負担・費用などの課題があります。そのため近年、より負担の少ない血液バイオマーカーへの注目が高まっています。
 アルツハイマー型認知症は発症の数十年前からアミロイドβやタウといった物質が脳内に蓄積され、それに伴う変化が血液中にも反映されることが分かってきています。そこで近年、血液中のアミロイドβやタウなどを測定することで、アルツハイマー病に関連する脳内病理を低侵襲に評価するための研究開発が進んでいます。中でも血中アミロイドβ42/40は、最も早くから変化する血液指標の1つであると考えられています。
一方、野菜に多く含まれるカロテノイドは抗酸化機能を有し、認知症の予防に繋がることがこれまでの研究で示唆されています。しかし、自身の野菜摂取量や体内のカロテノイド量を正確に把握することは容易ではありません。ベジチェック(R)は、手のひらを専用の機器に約30秒程度かざすだけで皮膚カロテノイドレベルを推定できる機器であり、日頃の野菜摂取状況を簡便に把握することができます。
 皮膚カロテノイドレベルとアルツハイマー病に関連する血液バイオマーカーとの関係を明らかにすることは、食習慣とアルツハイマー病関連病理との関係を理解するための基礎的知見になると考えられます。今後、長期的な追跡研究などを通じて両者の関係をさらに検証することにより、将来の認知症予防に役立つ知見につながることが期待されます。


■研究方法
 2024年岩木健康増進プロジェクト健診の参加者770名を解析対象としました。生体内のカロテノイド量は、皮膚カロテノイドレベルを測定できる「ベジチェック(R)」を用いて評価しました。アルツハイマー病に関連する血液バイオマーカーは、血中アミロイドβ42/40をはじめとする5つの指標を用いて評価しました。
 皮膚カロテノイドレベルは四分位に分類したうえで、年齢、性別、教育歴、喫煙・飲酒歴、社会的・精神的健康度などの要因で調整し、アルツハイマー病に関連する各指標との関連を重回帰分析によって解析しました。ただし、加齢に応じてアルツハイマー病理指標の進行が加速することを考慮し、60歳未満とそれ以上に分けて解析しました。


■研究の結果
 解析対象者の平均年齢は50.0歳であり、60歳未満の集団に絞ると43.8歳でした。
 皮膚カロテノイドレベルとアルツハイマー病に関連する各指標との関連を解析した結果、60歳未満の集団においては、皮膚カロテノイドレベルの低値群(第1四分位、中央値4.4)と比較し、高値群(第4四分位、中央値6.8)では、血中アミロイドβ42/40が統計学的に有意に良好であることが明らかとなりました。
 年齢と血中アミロイドβ42/40との関連を皮膚カロテノイドレベル別で可視化した結果、皮膚カロテノイドレベルの高値群と低値群の間には、年齢に伴う約4.5~7年分の変化に相当する差が認められました。

図1:皮膚カロテノイドレベル別 年齢と血中アミロイドβ42/40との関連

血中アミロイドβ42/40は、高値であるほど良好。網掛けは95%信頼区間。

■掲載論文情報
- 論文名:Skin carotenoid levels are associated with blood amyloid-beta 42/40 ratios in healthy individuals under 60 years of age
- 掲載誌:Scientific Reports
- 著者:Toshitaka Yamauchi, Naoko Waki, Shigenori Suzuki, Shun Murakami, Kengo Ishiki, Kazuto Yamashita, Masahiro Miura, Jun Sato, Toshiyuki Sato, Tatsuya Mikami, Koichi Murashita, Shigeyuki Nakaji, Yoshinori Tamada, Ken Itoh
- DOI:10.1038/s41598-026-69139-5



■ 注の解説
*1 弘前大学COI-NEXT拠点
弘前大学では、2022年10月に文部科学省・国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)」に採択されました。弘前大学COI-NEXT拠点では、健康を基軸に、若者が地域で働きたいと思える成長産業として魅力的なヘルスケア産業を創出することによって、地域の人々を健康にしながら経済発展し、全世代の人々が生きがいをもって働き続けることができ、心身共にQOLの高い状態での健康寿命を延伸する、well-beingな地域社会モデルの実現をめざしています。これまでの弘前大学COI拠点の成果を発展的に承継し、持続的に成果を創出する自立した産学官共創拠点の形成を目指すプロジェクトです。


*2 岩木健康増進プロジェクト
弘前大学が青森県弘前市岩木地区で2005年から継続実施している大規模合同健康調査で、約3,000項目という世界に例のない膨大な健診項目を設けることで、巨大な健康ビッグデータを記録しています。弘前大学では、2013年に文部科学省・JSTによる「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」に採択され、岩木健康増進プロジェクト健診の超多項目健康ビッグデータの解析により、認知症・生活習慣病などの早期発見を可能にし、予防方法の創出と検証を行い、その成果を社会実装する研究活動を弘前大学COI拠点で展開しました。(2013~2022年)


*3 ベジチェック(R)
自身の皮膚に含まれるカロテノイド量、および推定野菜摂取量を約30秒で表示する機器です。センサーに手のひらを押し当てるだけで結果が分かります。
※「ベジチェック(R)」は医療機器ではありません。表示値はあくまで目安となります。





*? カロテノイド
野菜(特に緑黄色野菜)や果物に主に含まれる色素成分で、トマト・スイカに多く含まれるリコピン、にんじんに 多く含まれるβ-カロテン、葉物野菜に多く含まれるルテインなどがよく知られています。摂取することで体内に吸収され、皮膚にも蓄積することがわかっています。体内で発生する有害な活性酸素を消去する働き(抗酸化作用) があり、生活習慣病のリスクを下げる可能性などが報告されています。


*? 血中アミロイドβ42/40
アミロイドβは、アルツハイマー病に関連して脳内に蓄積するタンパク質の一種です。血液中のアミロイドβ42とアミロイドβ40の比率(血中アミロイドβ42/40)は、脳内のアミロイドβの蓄積との関係を評価するための血液バイオマーカーとして研究されています。一般に、この比率が低いほど脳内にアミロイドβが蓄積している可能性が高く、高いほど蓄積が少ない可能性を示します。ただし、この指標のみでアルツハイマー病の診断や将来の発症を判断するものではありません。


*? アミロイドPET検査
アルツハイマー病に関連するタンパク質である「アミロイドβ」が脳内に蓄積しているかどうかを、放射性薬剤を用いたPET(陽電子放出断層撮影)によって画像として確認する検査です。脳内のアミロイドβの蓄積状況を非侵襲的に評価できる方法として利用されていますが、検査へのアクセスや費用などの課題があります。


*? 脳脊髄液検査
脳や脊髄の周囲を循環する脳脊髄液を採取し、その中に含まれるアミロイドβやタウタンパク質などの量を測定する検査です。通常は腰椎穿刺(ようついせんし)によって脳脊髄液を採取し、アルツハイマー病に関連する生体指標(バイオマーカー)を評価します。検査へのアクセス、身体的負担・費用などの課題があります。

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