2026年9月16日、マリンメッセ福岡A館で開催した「2026秋冬フードフェア」において、第3回「岩田産業グループSDGsアイデアコンテスト」を開催しました。
高校生、大学生・専門学校生、外食・中食産業の皆様から、食や農業、地域が抱える社会課題をテーマとしたアイデアが発表され、9名の審査員による審査が行われました。
今回、その審査員のお一人として、コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社 コミュニケーション戦略統括部 サステナビリティリレーション部 部長の水野ウィザースプーン希様にご参加いただきました。

コンテスト終了後、水野様と岩田産業株式會社 代表取締役社長 岩田章正が対談。
「SDGsを本業にどうつなげるのか」「学生のアイデアをどう実現するのか」「企業は地域社会にどのような役割を果たせるのか」。さらに、両社が取り組む「アグリトリオ自販機」から、SDGsコンテストで生まれたアイデアを応援する新しい仕組みの可能性などについて意見を交わしました。
■「発表して終わらない」SDGsコンテストへ

コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社
コミュニケーション戦略統括部
サステナビリティリレーション部 部長
水野 ウィザースプーン 希 様

岩田産業株式會社
代表取締役社長
岩田章正
【岩田】
本日は9名の審査員のお一人としてご参加いただき、本当にありがとうございます。
今回で3回目となる「岩田産業グループSDGsアイデアコンテスト」ですが、高校生、大学生・専門学校生、そして外食・中食産業の皆様から、食や農業、地域が抱える課題について、さまざまなアイデアを発表していただきました。
私たちがこのコンテストで一番大切にしているのは、「表彰して終わらないこと」です。
高校や大学だけでは実現することが難しいアイデアでも、企業や生産者、地域が加わることで形にできる可能性があります。今日、実際に若い皆さんの発表を聞かれて、水野さんはどのように感じられましたか?
【水野様】
まず、このような場が継続的に設けられていること自体に、大きな意義があると感じています。
今日発表された高校生や大学生の皆さんも、ここまで準備を重ねるのは本当に大変だったと思います。それでも、自ら社会課題を捉え、その解決策を大人や企業の前で発表する経験は、将来につながる非常に貴重な学びになるはずです。
また、この場の価値は学生だけにあるのではなく、企業側にとっても大きいと思っています。次世代が社会課題をどう見ているのか、どのような発想で解決を考えているのかに触れることで、私たち自身も多くの気づきや示唆を得ることができます。
【岩田】
学生だけではなく、企業側にとっても、ですか。
【水野様】
はい。企業がなぜサステナビリティや地域貢献、社会貢献に取り組むのかを考えたときに、単に「何かいいことをしなければいけない」というだけの時代ではなくなっているのだと思います。
確か昨年、岩田社長も「SDGsというロゴを付ければいいという時代は終わっている」とおっしゃっていましたよね。
企業として実際に何をしているのかだと思います。サステナビリティやSDGsを事業や経営戦略と結び付け、社会課題の解決と事業成長の両立を目指すことが重要です。その取り組みが事業競争力の向上や発展にもつながるからこそ、持続的に推進していくことができるのではないでしょうか。
■SDGsは「余力があるからやるもの」ではない
【岩田】私も非常に共感します。SDGsのバッジを付けたり、ロゴを掲載したりすることが目的ではない。私たちも食品卸ですから、社会貢献だけを本業とは別に行うのではなく、食や農業という本業の中で、どう社会課題を解決していくのかが大切だと思っています。
【水野様】
もっと本質的なところに立ち返ると、企業は社会や自然環境の上に成り立つ存在だと思います。まず水や土壌、農業、海といった健全な自然環境があり、その上に人々の暮らしや地域社会があり、さらにその先に企業や事業活動があります。
だからこそ、人や社会、環境に関する課題を後回しにすれば、20年後、30年後には企業そのものの持続可能性が損なわれる可能性があります。サステナビリティは、余力があるから取り組むものではなく、企業が将来にわたり価値を創出し続けるための基盤であり、経営そのものに関わる重要なテーマだと考えています。
【岩田】
なるほど。私はガンダム世代なんです(笑)。ファーストガンダムでは、地球に住み続けることが難しくなって、人類が宇宙で生活する世界が描かれています。昔はアニメの世界だったことを、今ではスペースXなど、人類が本当に追いかけている。そう考えると、やはり地球の環境を持続可能にして、自然と人が共生していくことは、とても大きなテーマですよね。
【水野様】
そうですね。企業の中だけで考えていると、どうしても普段の事業や予算の延長線上で物事を捉えがちです。だからこそ、今回のようなコンテストを通じて、高校生や大学生の皆さんの自由な発想や純粋な社会課題への視点に触れることには大きな意味があると思います。
私自身も、今日の発表から多くの示唆をいただきました。こうした場は、学生が学ぶだけでなく、企業側も学び、視野を広げることができる貴重な機会です。岩田産業さんの取り組みがさらに広く知られ、多くの共感の輪につながっていくことを期待しています。
■「ジュースを買う」が農業支援になる
【岩田】実は私たちは、コカ・コーラ ボトラーズジャパンさんと一緒に、すでに農業を応援する取り組みを行っています。当社では「アグリトリオ」という農業人材支援サービスに取り組んでいます。その「アグリトリオ」の支援自動販売機を共同で展開し、現在18台を設置しています。
飲料を購入していただくと、その売上の一部が農業関連の支援につながる仕組みです。
昨年は、その取り組みから4校の農業高校へ各20万円、合計80万円を寄付することができました。
水野さんは、このような日常の消費行動と地域農業への支援を結びつける取り組みについて、どのように感じられていますか?
【水野様】
私は、まさに今日のコンテストのコメントでお伝えさせていただいた「Win-Win-Win」のモデルだと思っています。農業には、人手不足や担い手不足という社会課題があります。一方で、空き時間を活用して農業を支援したいと考える方々がいる。私たちは、そうした取り組みを通じてコカ・コーラ社自販機を設置させていただくことができる。そして消費者の皆さまには、その場で飲料を購入いただく機会を提供できます。
さらに、自販機を設置いただいている企業や施設にとっても、農業支援という社会的な取り組みに触れ、共感していただくきっかけになります。それぞれの立場に価値が生まれ、社会課題の解決と事業活動が好循環を生み出していく。社会課題の解決と事業成長を両立させながら、関わるすべてのステークホルダーに価値を生み出していく。このポジティブな[Win-Win-Win]の仕組みが持続のための肝だと思います。
つまり、関わっているステークホルダーそれぞれにプラスがあると思います。
【岩田】
確かにそうですね。飲料を買うという普段の行動が、知らないうちに農業を応援することにつながっている。それなら無理なく続けられますね。
【水野様】
そうです。「農業を応援したいから、この自販機で買おう」と考える方もいれば、特に意識せずに飲料を購入した結果、その行動が社会貢献につながっている方もいると思います。私は、そのどちらも大切だと思っています。
重要なのは、一つひとつの購買行動の背景にどのような価値や社会的な意義があるのか、そのストーリーをきちんと伝えることです。そうすることで、普段の何気ない行動も社会課題の解決につながり、より多くの人が無理なく社会との接点を持つことができるのではないでしょうか。
■対談の中から生まれた「新しい自販機」のアイデア

【水野様】
実は今日、コンテストを聞きながら思ったことが一つあります。岩田産業さんは、このSDGsコンテストの取り組みを「表彰して終わらせず、実装させたい」という強い思いを持っていらっしゃいますよね。
例えば、あくまで個人的なアイデアではありますが、このコンテストで受賞したアイデアや社会課題の解決に挑戦するプロジェクトを応援する自販機があっても面白いと思いました。
【岩田】
それは面白いですね。
【水野様】
社会課題を解決する素晴らしいビジネスプランがあったとしても、実際に事業化しようとすると、人や資金、様々なリソースが必要になります。その最初の一歩を後押しする仕組みがあると面白いですよね。自販機というプラットフォームを活用して、そのアイデアの実証を応援するような形も考えられるかもしれません。1年に1件、2件だったとしても、自販機の売り上げの一部が新しい挑戦を支えるきっかけになれば、とても意義のあるものとなるのではないでしょうか。
【岩田】
非常に面白いですね。コンテストで「こんなことをやりたい」と発表しても、そこからビジネスにつなげようとすると、どうしても費用が必要になります。誰がその最初の費用を出すのか。
そこで、若い人たちの挑戦を応援する基金のようなものがあれば、学生さんたちも「考えました」で終わらず、「実際にやってみよう」と行動を起こせるかもしれません。私たちもサポートするだけではなく、一緒に実現に向けて動いていきたいと思います。
【水野様】
きっと学生にとって自分たちのアイデアが実際に実装できれば、大きな成功体験になりますし、次の挑戦者を生みだす原動力にもなりますね。
企業にとっても、社会課題の解決と事業機会の両立を考える良いきっかけになると素晴らしいと思います。
【岩田】
私は、個人の夢でも、学生の夢でも、社員の夢でも、会社が本気で関わると、実現する可能性が一気に高くなると思っているんです。一人だけで実現しようとしても、なかなか前へ進めない。そこに企業や大人が加わって、一緒に汗をかく。そういう環境をつくりたいですね。
【水野様】
本気の挑戦には、本気の企業が応える。資金だけでなく、技術やネットワーク、人とのつながりも含めて支援する。そんな共創の事例が、日本中で増えていくと素晴らしいですよね。
■学生のアイデアと企業をつなげれば、実装できる

【岩田】
今回のコンテストでも、私は「これは企業とつなげれば実現できるのではないか」と感じたものがありました。例えば、九州情報大学から竹を活用した「竹チップス」の提案がありました。放置竹林という地域課題を、食によって解決しようというアイデアです。私は聞きながら、「八仙閣さんとつながったら面白いな」と思っていたんです。
【水野様】
詳しく聞かせてください。なぜ八仙閣なのですか?
【岩田】
中華料理とタケノコは非常に親和性がありますよね。学生がアイデアを出しても、「では、どこで商品にするのか」という次の壁があります。でも、すでに飲食店には厨房も料理人さんもいます。小ロットなら、まず飲食店で試作して、お客様に食べてもらうこともできる。岩田産業には、そういうお客様とのネットワークがあります。
【水野様】
それなら実装までの距離が一気に縮まりますね。今日の発表を聞いていても、参加されている企業とアイデアの間で、具体的なパートナーシップにつながりそうなものがたくさんあると感じました。
【岩田】
そうなんです。だから私は、コンテストの役割は「一番を決めること」だけではないと思っています。アイデアを持っている学生と、それを実現できる企業をつなぐ。食品卸である私たちだからこそ、その橋渡しができるのではないかと思っています。
■商品を売るだけではなく、「物語」を伝える
【水野様】今日の発表を聞いてあらためて感じたのは、ストーリーの伝え方の重要性です。例えば竹チップスも、何も知らずに食べれば「おいしいチップス」で終わるかもしれません。しかし、その背景に、放置竹林という地域課題があり、それを何とかしたいという学生たちの思いから生まれた商品だと知ると、商品の見え方は大きく変わります。
社会課題を自然な形で事業や商品に落とし込み、その価値や意味をきちんと伝えていくこと、人の行動変容を促すにはこのストーリーの作り方がとても重要だと思います。
【岩田】
私も全く同じことを考えています。食品業界には「トレーサビリティ」という言葉があります。でも私は、それをもっと分かりやすく、水野さんが言われるように「食のストーリー」として伝えたいと思っているんです。
どこで作られたのか。誰が作ったのか。なぜ、この商品が生まれたのか。生産者はどんな苦労をしているのか。
何も知らずに食べるのと、その背景を知って食べるのでは、味や香りまで違って感じられることがあります。生産者の顔まで浮かんでくる。
だから私たちは「食品のストーリーテラー」、語り部にならなければいけないと思っています。
【水野様】
素敵な表現ですね。
【岩田】
それが、私たちがルートセールスにこだわっている理由の一つでもあります。営業と配送を完全に分離してしまえば、効率は上がるかもしれません。でも、お客様と毎日会って、会話をして、「実はこの商品には、こんな生産者の思いがあるんですよ」と伝えられる。
私たちは、商品だけを運ぶのではなく、その商品の背景にあるストーリーまでお客様へ届けられる会社でありたいと思っています。
■「サステナビリティ×ストーリー」

【水野様】
私たちも同じ課題を感じています。例えば工場では、水やエネルギーの削減など、さまざまな取り組みをしていますが、実践するだけでは伝わりません。だからこそ、「サステナビリティ×ストーリー」が重要だと思っています。
今回も規格外野菜をテーマにした提案がいくつもありました。「規格外野菜を活用しています」だけではなく、なぜ取り組むのか、誰のために取り組むのかを伝えることで価値の見え方は大きく変わります。
今日のお話を伺いながら、岩田産業さんは九州の食と人をつなぐ一貫した多くのストーリーをお持ちなのだとあらためて感じました。
【岩田】
ありがとうございます。私たちは食品卸ですが、単にメーカーさんから仕入れて、お客様へ配送するだけの会社ではなくなりたいと思っています。
生産者とつながる。学校とつながる。メーカーとつながる。飲食店とつながる。そして、それぞれが持っている課題やアイデアをつなぐ。そこから新しい商品やサービスを生み出して、お客様の繁盛につなげていく。
それが、私たちが目指している「単なる食品卸から、お客様の繁盛支援企業へ」ということなのだと思います。
■「あのコンテストから、これが生まれました」と言える未来へ
【岩田】最後に水野さん、今日一日参加していただいて、皆さんに伝えたいことをお願いします。
【水野様】
まず、今回のような機会をいただいたことに心から感謝しています。サステナビリティについて、お取引様とここまでじっくり意見交換できる機会は決して多くありません。岩田社長の思いや取り組みに直接触れ、私自身も多くの学びをいただきました。
そして何より、今日生まれたアイデアの中から、実際に社会で形になるものが出てくることを期待しています。「あのSDGsアイデアコンテストから生まれた」と語られる事例が増えていくと素晴らしいですね。今回のご縁をきっかけに、岩田産業さんとともに新たな共創の可能性を探りながら、来年また皆さんの挑戦のお話を聞かせていただくことを楽しみにしています。
【岩田】
ありがとうございます。私も、まさにそこを目指したいと思っています。来年また水野さんに来ていただいたときに、
「去年、水野さんと話したことが、こんな形になりましたよ」と報告したいですね。
次回のフードフェアで、今回のコンテストから生まれた商品や取り組みを発表する。
そして、それを見た次の高校生や大学生が、「自分たちもやってみよう」と挑戦してくれる。そんな循環ができたら、本当に素晴らしいと思います。
コカ・コーラ ボトラーズジャパンさんとも、アグリトリオ自販機だけでなく、今回出た「学生の挑戦を応援する自販機」のような新しいアイデアについて、これから一緒に可能性を考えていけたらと思います。
【水野様】
ぜひ、よろしくお願いします。
【岩田】
今日はお忙しい中、本当にありがとうございました。私たちも今日の対談を「話して終わり」にしないようにします。SDGsコンテストも同じです。学生が考える。企業が受け止める。一緒に行動する。そして、形にする。一人の力だけでは難しいことも、学校、企業、生産者、地域が一緒になれば実現できることがあります。
これからも、食を通じて人と人をつなぎ、若い人たちの挑戦を応援しながら、地域の課題を一つでも解決していきたい。そして、「食を通じて九州を元気に!」を、言葉だけではなく、一つひとつの行動で実践していきたいと思います。
水野さん、ありがとうございました。
【水野様】
こちらこそ、ありがとうございました。
【会社概要】
会社名 :株式会社岩田産業グループホールディングス
所在地 :福岡県福岡市博多区諸岡3-26-39
事業内容:業務用食品卸売事業、酒類卸事業、青果卸事業、外食事業ほか
URL :https://www.iwatasangyo.co.jp/









