気候変動への適応とおいしさを両立する「Dual-S大麦」の新たな研究成果を第40回ヨーロッパ醸造学会で発表

掲載日: 2026年09月15日 /提供:サッポロビール

肥料の使用を抑えた栽培でもビール醸造に適した品質を維持できる可能性を確認

サッポロビール(株)は独自に開発した「Dual-S大麦」およびその親系統の「N68-411」(注1)が、化学肥料の使用量を抑えた低投入持続型農業(Low Input Sustainable Agriculture、以下LISA)においても、ビール醸造に適した麦芽品質を維持できる可能性を明らかにしました。本研究成果は、9月8日(火)に開催された「第40回European Brewery Convention(ヨーロッパ醸造学会)」にて発表しました。



当社は持続可能な社会の実現に向けて、気候変動対策として「緩和(温室効果ガスの排出削減)」と「適応(気候変動による影響への備え)」の両輪による戦略を推進しています(注2)。その中で「Dual-S大麦」はビールのおいしさにつながるLOXレス(注3)の品質特性(”S”table care)を共通基盤とし、さまざまな気候変動適応特性(”S”ustainable care)をもつ品種をかけ合わせることで開発を進めている、当社の気候変動適応策の中心を担う独自の次世代大麦の総称です(注4)。本研究では、その一例であるLOXレス大麦と「N68-411」を組み合わせたDual-S大麦を用いて評価を行いました。

近年、地球環境への負荷低減が世界的な課題となる中、化学肥料の過剰使用は、土壌や河川への窒素流出や温室効果ガスの排出など、環境問題につながるとされています。そのため、肥料の使用量を最小限に抑えたLISAや再生農業(注5)への転換が世界各地で進んでいます。

ビール大麦産地においてもこうした環境に配慮した取り組みが進められている一方で、施肥量を抑えた栽培では大麦の種子に含まれる全窒素含量(注6)が低下しやすく、それに伴いビールの発酵に欠かせない麦芽中の可溶性窒素含量(注7)も低下する懸念があります。可溶性窒素含量はビール醸造において酵母の栄養源となる重要な成分であり、不足すると発酵不良のリスクが高まります。当社はこの課題を大麦の品種開発という視点から解決すべく、「N68-411」およびLOXレス大麦に「N68-411」をかけ合わせた「Dual-S大麦」を活用した研究を進めてきました。

今回の研究により、「N68-411」の特性を受け継ぐ「Dual-S大麦」は麦芽の製造工程で効率的に可溶性窒素が生成されるため、LISA条件下においても麦芽中の可溶性窒素含量を維持できることが確認されました。この結果から、環境負荷低減に貢献する栽培方法であってもビール醸造に必要な成分を確保し、発酵不良のリスクを低減できる可能性が示唆されました。

さらにLISAによる栽培では、慣行栽培と比較して大麦1tあたりの温室効果ガス排出量を約100kg削減できると試算しています。化学肥料の使用は温室効果ガス排出の要因の1つであり、肥料に含まれる窒素由来の排出は世界全体の温室効果ガス排出量の2.1%を占めるとされています(注8)。本研究成果はビール原料の品質維持と環境負荷低減の両立を可能にするものであり、当社が掲げるFLAG(Forest, Land and Agriculture)Scope1・3温室効果ガス排出量削減目標の達成に向けた取り組みと位置付けています(注9)。また気候変動への「適応」を目指して開発された「Dual-S大麦」に、今回の研究結果によって環境負荷を低減する「緩和」にも貢献できる可能性が示されたことは、大きな前進です。

一方で今後の課題として、LISAや再生農業では収量が低下するリスクが挙げられます。当社は今後このような条件下においても収量が低下しない大麦の研究開発を進め、「Dual-S大麦」と交配することにより、ビール醸造に求められる品質や環境適応性、高収量性を兼ね備えた品種の育成を目指します。

国内でビール大麦の育種に取り組む公的機関が限られる中、当社はこれからも原料開発段階からの研究開発を通じて、高品質なビール原料の安定確保と環境課題の解決に取り組み、持続可能なビール産業の発展に貢献していきます。
(注1)当社が独自に開発した大麦変異系統。高い溶解性と穂発芽耐性を特長とする。
(注2)環境経営│環境との調和│重点課題│サステナビリティ│サッポロビール 企業サイト
(注3)「旨さ長持ち麦芽」~大麦育種からおいしさに挑戦~│サッポログループの研究開発トピックス│研究開発│イノベーション│サッポロビール 企業サイト
(注4)ビールのおいしさにつながる品質特性と気候変動耐性を兼ね備えた当社独自開発の次世代大麦の総称。
「Stable」と「Sustainable」の2つのSを名称の由来とし、2025年に商標登録。
(注5)農地の土壌に着目し、その生態系を再生させることで土壌の健全性を高め、農作物の生産を持続可能にするための農法と定義。
(注6)大麦の種子に含まれる窒素の総量。
(注7)麦芽を糖化したときに麦汁中へ溶け出すアミノ酸などの窒素成分の量。酵母の栄養源となり、ビール発酵に重要な役割を果たす。
(注8) Menegat et al.(2022) Nature portfolio, 12 
(注9)脱炭素社会の実現│環境との調和│重点課題│サステナビリティ│サッポロビール 企業サイト


■サッポロビール(株)担当者コメント
原料開発研究所 上級研究員 木原 誠


環境に優しい低投入持続型農業への適応は未来のビール業界の原料調達のための大切な取り組みでもあります。世界のビール産業のサステナビリティのためにも、これからも「Dual-S大麦」の可能性を追求していきます。





【消費者の方からのお問い合わせ先】
サッポロビール(株)お客様センター
TEL 0120-207-800

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