その結果、以下の点が示されました。
L.パラカゼイ・シロタ株を含む乳製品を過去5年間、週3日以上摂取していた男性高齢者では、摂取頻度が週3日未満の高齢者に比べて、全死亡リスクが有意に低いことが示されました。
本研究の成果は、特定の乳酸菌株の継続摂取と全死亡との関連を示した初めての疫学的知見であり、L.パラカゼイ・シロタ株を含む乳製品の継続摂取による健康価値を支持する結果です。一方、女性高齢者では全死亡との有意な関連は認められませんでした。これは、女性の死亡率が低く、追跡期間が十分でなかったことが影響している可能性が考えられます。
なお、本研究成果は、学術雑誌 The Journal of Nutrition, Health and Aging(2026年8月18日付)の電子版に公開されました。
※1 旧名称はラクトバチルス カゼイ シロタ株
※2 病気・事故など、特定の死因に限定せず、全ての死亡を対象とする指標
1.背景
世界的な高齢化の進展に伴い、高齢者の寿命および健康寿命の延伸は重要な社会課題となっていま
す。株式会社ヤクルト本社と東京都健康長寿医療センター研究所(中之条研究)の青柳幸利専門副部
長らは、2014年から中之条町在住の高齢者を対象に、乳酸菌摂取と健康に関する疫学研究を実施
しています。本疫学研究では、これまでにL.パラカゼイ・シロタ株を含む乳製品の継続摂取が高血
圧、便秘および貧血の発症リスク低減に寄与する可能性を見出しており、習慣的なL.パラカゼイ・
シロタ株を含む乳製品の摂取が高齢者の健康維持に有用であることが示唆されています。
高血圧、便秘、貧血はいずれも高齢者において罹患率の高い疾患であり、これらの発症は死亡リス
クとも関連することが報告されています。こうした背景から、これら疾患の発症リスクとの関連が示
唆されている、L.パラカゼイ・シロタ株を含む乳製品の摂取と全死亡との関連に着目しました。
これまでに、乳製品摂取と全死亡との関連を検討した研究はいくつか報告されているものの、乳酸
菌を含む乳製品と含まない乳製品が区別されていない場合が多く、さらに使用されている菌株も統一
されていません。そのため、特定の乳酸菌の習慣的摂取が全死亡に与える影響については十分に明ら
かになっていません。そこで本研究では、日本人高齢者を対象に、L.パラカゼイ・シロタ株を含む
乳製品の摂取が全死亡に与える影響を前向き疫学研究※1により検証しました。
※1 対象者を一定期間追跡し、生活習慣や食事などの要因と疾病や死亡などとの関連を検証する研究
2.研究概要
(1)研究方法
2014年から2018年にかけて研究に参加した中之条町に在住の高齢者1,280名(男性5
19名、女性761名、平均年齢73.5歳)を対象に、2025年12月31日まで追跡調査しま
した。研究参加時の健康診断、アンケートおよび追跡調査期間中に収集したデータから、背景情(喫
煙や飲酒習慣など)、L.パラカゼイ・シロタ株を含む乳製品の摂取頻度および死亡情報などを取得
しました。本解析では、研究参加時における過去5年間のL.パラカゼイ・シロタ株を含む乳製品の
摂取頻度に基づいて、週3日未満摂取群と週3日以上摂取群に分けたのち、男女別に、全死亡との関
連を前向き解析しました。
(2)研究結果
研究参加者1,280名の平均追跡期間は9.3年 (112.1か月)、死亡者数(率)は男性14
7名(28.3%)、女性114名(15.0%)でした。
全参加者を対象に、主要な交絡因子(年齢、BMI、飲酒習慣および喫煙習慣)を調整した多変量
解析を行った結果、男性(519名)では、L.パラカゼイ・シロタ株を含む乳製品の摂取頻度が週
3日未満摂取群(401名)に比べて、週3日以上摂取群(118名)の全死亡リスクが有意に低い
値(図1:相対危険度〔ハザード比※2〕0.648、P=0.030)を示し、生存曲線は高値を
推移しました(図2)。
背景因子を揃えた参加者を対象としたマッチング解析※3においても、同様の結果が得られまし
た。また、このマッチング解析では、週3日未満摂取群に比べて、週3日以上摂取群の生存期間が有
意に延長(9.8か月)していました。
一方、女性では、多変量解析およびマッチング解析のいずれにおいても、摂取頻度と全死亡リスク
および生存期間との間に関連は認められませんでした。
以上のことから、L.パラカゼイ・シロタ株を含む乳製品を習慣的に週3日以上摂取している男性
では、全死亡リスクが低く、生存期間が長い傾向を示すことが見いだされました。
※2 特定の事象が時間の経過とともに発生するリスクの群間比を示す指標。1より低い場合は、比較
対象の群に比べて事象が発生するリスクが低いことを意味する。
※3 比較する群間で年齢や生活習慣などの背景要因の偏りを調整する統計手法のひとつで、各群から
背景因子が類似した対象者を選抜して比較する。本研究では多変量解析で得られた結果の頑健性
を確認する目的で用いた。

図1 男性におけるL.パラカゼイ・シロタ株を含む乳製品摂取頻度と全死亡リスク
図1 男性におけるL.パラカゼイ・シロタ株を含む乳製品摂取頻度と全死亡リスク

図2 男性におけるL.パラカゼイ・シロタ株を含む乳製品の摂取と生存率に関する多変量調整済み生存曲線
3.L.パラカゼイ・シロタ株の摂取と全死亡との関係
これまでの中之条疫学研究において、L.パラカゼイ・シロタ株を含む乳製品を摂取している高齢
者では、高血圧や貧血の発症リスクが低いこと(図3)および便秘(排便頻度週3日以下)の発生率
が低いこと(図4)が報告されています。これらの関連は、男女において明確な違いは認められませ
んでした。高血圧や貧血の予防は、心血管疾患や臓器の虚血性障害のリスク低下を通じて、死亡リス
クの低下に関与する可能性が考えられます。また、便秘者では冠動脈疾患や脳卒中などによる死亡リ
スクが高いことが知られており、腸内環境の悪化に伴う慢性炎症や腎機能低下も考えられることか
ら、便秘の予防も全死亡リスク低下に関係する可能性があります。
一方で、今回の研究において、女性ではL.パラカゼイ・シロタ株を含む乳製品の摂取と全死亡と
の間に関連は認められませんでした。これは、女性の死亡率が低く、追跡期間が十分でなかった可能
性が考えられ、全死亡との関連についての解釈は、現時点では限定的であると考えられます。また、
一般的に女性は男性に比べて飲酒率や喫煙率が低いなど、比較的健康的な生活習慣を有していること
から、乳酸菌摂取による影響が現れにくかった可能性も考えられます。

図3 習慣的なL.パラカゼイ・シロタ株を含む乳製品の摂取頻度と疾病発症リスク(Aoyagi et al, Beneficial Microbes, 2017, Aoyagi et al, Beneficial Microbes, 2025)

図4 L.パラカゼイ・シロタ株を含む乳製品摂取頻度と便秘(*排便頻度週3日以下)(Aoyagi et al, Frontiers in Microbiology, 2019)
4.今後の期待
今回の高齢者を対象とした疫学研究により、L.パラカゼイ・シロタ株を含む乳製品を習慣的に摂
取している男性高齢者において、全死亡リスクが低いことが見出されました。また、生存期間が長い
傾向も示されました。
本研究成果は、特定の乳酸菌株の継続摂取と全死亡との関連を示した、初めての疫学的知見です。
また、これまでの中之条疫学研究においても、L.パラカゼイ・シロタ株を含む乳製品の継続摂取が
高血圧、貧血および便秘の発症リスク低減と関連することが報告されています。本研究では女性にお
いて全死亡との明確な関連は認められませんでしたが、これまでの研究では女性を含めた集団で上記
疾患との有益な関連が示されていることから、女性においても健康維持への寄与が期待されます。
以上のことから、L.パラカゼイ・シロタ株を含む乳製品の摂取は、さまざまな健康指標と関連す
ることが示されており、週3日以上の継続的な摂取によりその差が認められることから、継続的な摂
取習慣の重要性を示すものと考えられます。
さらに、これらの知見は、日常的な食品の摂取を通じた長寿実現の新たな可能性を示すものであ
り、「腸内環境と健康・長寿との関連」という観点を疫学的に支持する結果の一つと位置づけられま
す。
今後も、L.パラカゼイ・シロタ株をはじめとするプロバイオティクスの摂取による新たな可能性
を追究してまいります。
5.論文情報
雑 誌 名: The Journal of Nutrition, Health and Aging
(https://doi.org/10.1016/j.jnha.2026.100956)
論文表題: Association between habitual intake of fermented milk products containing
lactic acid bacteria and all-cause mortality: a community-based cohort
prospective study
著 者:Y. Aoyagi, R. Amamoto, S. Park, K. Shimamoto, T. Suwa, H. Makino, S. Matsubara
以 上









