
「認知症になっても旅を楽しめる社会」を、旅館から。

株式会社小谷常(京都府京丹後市)は、京都府立医科大学大学院精神機能病態学教授・成本迅氏、西山病院院長・認知症疾患医療センター長・西村幸秀氏をはじめ、医療・介護・福祉・行政・研究者・企業など多職種と当事者が参加する「認知症にもやさしい宿」キックオフ合宿を開催しました。当日は23名が参加しました。
本合宿は、令和8年10月に京都府立医科大学で開催される日本老年行動科学会に向けた京都支部プレイベントとして実施。「旅も仕事もあきらめない」の実践を共有し、学術大会で予定している口頭発表やワークショップにつながる第一歩となりました。
本プロジェクトは、認知症の人を「支えられる存在」として捉えるのではなく、旅を楽しみ、働き、地域で役割を持ち続けられる社会の実現を目指す取り組みです。
また、株式会社小谷常が運営するレイクサイド琴引を実証フィールドとし、旅館で積み重ねてきた実践を多職種とともに検証・発展させながら、「認知症にもやさしい宿」のモデルを全国へ広げていくことを目的としています。
超高齢社会だからこそ、「認知症になった後の人生」を考える。

日本では2025年には高齢者の約5人に1人が認知症になると推計されています。
認知症と診断されたことをきっかけに「旅行をあきらめる」「仕事を辞める」「社会との接点が減る」人は少なくありません。しかし、認知症になっても、その人が培ってきた経験や思いやり、人との繋がりまで失われるわけではありません。大切なのは、「何ができなくなったか」ではなく、「どうすれば安心して旅を楽しみ、自分らしく暮らし続けられるか」小谷常は、旅館という地域に開かれた場所だからこそ、その可能性を広げられると考えています。旅館は「泊まる場所」であると同時に、人と人が出会い、働き、地域とつながる場所でもあります。だからこそ認知症になっても旅を楽しみ、働き、地域の中で役割を持ち続けられる社会を、旅館から実現していきたいと考えています。
実践から生まれた、「認知症にもやさしい宿」という挑戦。

この取り組みは、机上の構想から始まったものではありません。
小谷常では現在79歳の仲居が現役で働き接客などを行っています。お客様と会話を交わし、仲間と共に働き、地域との繋がりを持ち続けることが、その人らしさや笑顔、生きがいにもつながっています。
代表取締役社長兼女将の小谷奈穂は、この現場での実践を通して、「働くこと」は収入を得るためだけではなく、人とのつながりや健康、尊厳を支える大切な営みであることを実感してきました。
一方で、旅館側にも新たな気づきが生まれています。高齢者を含む認知症の人とともに働くことで、スタッフ一人ひとりが理解を深め、「どうすればできるか」を考える文化が育まれていきました。
その結果、認知症の旅行者に対しても、特別な対応ではなく、一人のお客様として自然に寄り添う環境が生まれています。私たちが目指しているのは、誰もが安心して過ごせる環境を整えることで、認知症を含む高齢者やそのご家族、地域の方も安心して利用できる宿。それが「認知症にもやさしい宿」の原点です。
さらに、このような宿づくりは、認知症のある方だけでなく、高齢スタッフが安心して長く働き続けられる職場づくりにもつながります。地域の働き手不足が課題となる中、旅館が地域共生の拠点として新たな役割を果たすことも目指しています。
女将の実践を、大学・医療・行政とともに社会モデルへ。

本プロジェクトを推進するのは、株式会社小谷常代表取締役社長兼女将の小谷奈穂です。
旅館経営を行う一方で、京都府立医科大学大学院に在籍し「認知症の方を含む高齢者の就労など地域共生について」研究を続けています。
また、一般社団法人KYOTANGO THREAD CARAVAN代表理事として、医療的ケア児を含めた病気や障がいなどが理由で家族だけでは旅行が難しい方の旅行支援など、「旅館×医療」をテーマに地域課題の解決にも取り組んできました。
また、旅館で積み重ねてきた実践を共有するとともに、それぞれの専門性を持ち寄ることで、「認知症にもやさしい宿」のあり方を共に考え、現場で生まれた実践を研究へ、研究で得られた知見を再び現場へ。この循環を生み出しながら今後、レイクサイド琴引を認知症当事者参加型の実証フィールドとしても育てていくことを目指します。
また、その成果は令和8年10月10日~11日に京都府立医科大学で開催される「日本老年行動科学会 第28回京都大会」において、口頭発表およびワークショップを通じて発信する予定です。


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成本 迅(なるもと・じん)氏
京都府立医科大学大学院 医学研究科 精神機能病態学 教授
精神科医・医学博士。認知症医療、意思決定支援、認知症の人の社会参加を専門とし、京都府立医科大学大学院で教育・研究に従事。認知症の人が本人らしく暮らし続けられる社会の実現に向け、医療・介護・法律・行政など多職種と連携した研究・実践を推進している。また、国の認知症政策や意思決定支援に関する委員・有識者としても活動し、認知症の人の権利擁護や社会参加の推進に取り組んでいる。
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西村 幸秀(にしむら・ゆきひで)氏
西山病院 院長・理事長・認知症疾患医療センター長
精神科医。認知症医療および地域包括ケアを専門とし、西山病院院長、認知症疾患医療センター長を務める。京都府医師会認知症対策担当理事として、「京都式オレンジプラン」の推進にも携わり、認知症になっても本人の意思が尊重され、住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けられる共生社会の実現に取り組んでいる。臨床・地域医療・行政をつなぐ立場から、多職種連携や認知症の人の社会参加を推進している。
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小谷 奈穂(おだに・なほ)
株式会社小谷常 代表取締役社長兼女将
1974年兵庫県生まれ。幼少期に稀な病で大手術と余命宣告を経験。公務員を経て結婚を機に退職。コロナ禍に夫の実家である旅館・小谷常の経営改革に着手し、代表取締役社長兼女将に就任。「旅館×医療×福祉」を軸に、誰もが旅を楽しみ、地域で役割を持ち続けられる旅館づくりに取り組むほか、一般社団法人KYOTANGO THREAD CARAVAN代表理事として、医療的ケア児を含む病気や障がいなどが理由で旅行が難しい子供達とご家族を支援する「京丹後こども・みらいプロジェクト」を推進。京都府立医科大学大学院医学研究科 精神機能病態学 精神医学教室では、認知症や高齢者の就労など地域共生をテーマに研究を進めている。
会社概要
会社名: 株式会社小谷常
所在地: 京都府京丹後市網野町小浜912
お問合せ先: odanitune@gmail.com
設立:1969年4月1日
事業内容: 宿泊施設の運営、飲食店の運営など
主な運営施設: 湖畔に佇む離れ小宿水屋敷、澄海、レイクサイド琴引、丹後ひもの屋、Dining琴引









