
株式会社帝国データバンクは「宿泊業」の倒産発生状況について調査・分析を行った。
SUMMARY
2025年に発生した宿泊業の倒産件数は89件と、2年連続で前年から増加した。また、休廃業・解散は178件発生し、年間で計267件の宿泊事業者が市場から退出した。「高単価・高付加価値」を求める訪日客需要が増加するなか、それに応える設備投資ができない施設を中心に淘汰が進む「経営の二極化」が鮮明となっている。
集計期間:2000年1月1日~2025年12月31日まで
集計対象:負債1000万円以上・法的整理による倒産
2026年2月6日10:09 タイトルおよび内容を一部修正しました
宿泊業の倒産、2年連続で増加 目立つ「老朽化」倒産
2025年に発生した「宿泊業」の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は89件にのぼった。前年の78件を9件(14.1%)上回り、2年連続で増加した。また、休廃業・解散は178件発生、年間で計267件の宿泊業が市場から退出した。「高単価・高付加価値」を求める訪日客需要が増加するなか、それに応える設備投資ができない施設を中心に淘汰が進む「経営の二極化」が鮮明となっている。

宿泊業の倒産・廃業を地域別にみると、首都圏や京阪神、中京の三大都市圏を除く「地方」での発生が75.3%を占めた。2022年以来、3年ぶりに7割台を記録したほか、コロナ禍前の2019年(77.2%)に迫る高水準となった。大都市圏に比べてインバウンド需要が限定的で、稼働率や客単価が十分に回復しなかった地方の小規模な旅館やホテルで倒産や廃業が目立った。
宿泊業の倒産要因は近年、大きな変化を迎えている。政府による「実質無利子・無担保(ゼロゼロ)融資」の返済ができないケースや、2024年以降に顕著となった人手不足、食材などの原材料高、光熱費の増加など各種コスト高に直面し、利益確保ができず事業継続を断念する事例が多い。さらに、近時は訪日客の需要増に加え、富裕層を中心に高付加価値な体験サービスへとニーズの変化もみられるなか、最新の設備が整った高単価の施設に資本と人が集中する一方で、コロナ禍での債務増加で投資体力を失い、トレンドに乗り切れない老舗旅館や中小ビジネスホテルが退場する事例も出始めている。

具体的な倒産要因等が判明した宿泊業を分析すると、要因に「老朽化」や「修繕」、「故障」などが含まれるケースは直近5年間で58件・14.6%判明した。コロナ前後の2016-20年(13.0%)、震災直後の2011-15年(8.9%)と比べても割合は増加傾向が続いている。創業100年近くに及ぶ老舗旅館として知られ、地酒を楽しめる宿として人気だった「喜泉閣」(富山県、2025年3月、破産)のように、老朽化が進んだ設備の修繕費を調達できず事業継続が困難となった企業もみられるなど、経営体力による格差が拡大している。他方、施設の老朽化や人手不足で厳しい業況が続きながらも、名物料理などによる根強い宿泊客の支持を背景に、スポンサーの元で事業再生に成功したケースも少なくない。
近時の宿泊業では、人件費・光熱費の高騰に加え、インバウンド客が求める高いサービス水準に応える高単価市場へのシフトも進んでいる。装置産業の宿泊業では5~10年間隔でのリノベーションが不可欠である一方、現状以上に設備への投資余力が乏しい中小宿泊業も多く、デジタル対応や老朽化対策の成否による宿泊業の「選別」が、2026年により進行する可能性もある。








