
江戸時代から銘酒の産地として知られる高槻市西部の富田地区で、冬の風物詩の新酒造りが本格化。同地区にある安政3(1856)年創醸の清鶴酒造株式会社(同市富田町6)の酒蔵では、杜氏が伝統の酒造りに精を出しています。
同地区は、酒造りに適した良質の米と阿武山山系の地下水に恵まれ、池田、伊丹とならぶ「北摂三銘酒」として名を馳せた地域。17世紀中頃には20軒を超える造酒家があり、銘酒「富田酒」は江戸にまでその名が知られていました。現在は清鶴酒造株式会社と壽酒造株式会社(同市富田町3)の2軒が酒造りの伝統を守り続けています。
清鶴酒造では、11月頃から仕込み作業が始まり、12月に入ると新酒造りが本格化。蒸した新米に、井戸水、麹、酵母菌を加えた酒母を造り、タンクに移して約3週間発酵させます。この日は、発酵させている間に温度調節や発酵具合の調整のために行うタンク内のもろみをかき混ぜる作業の櫂入れ(かいいれ)を実施。3人の職人が長さ1メートル以上ある櫂棒をタンクにゆっくりと差し込み、円を描くように混ぜると、麹由来のほのかな甘い香りが酒蔵内に漂い 、冬の風物詩といえる光景が広がっていました。今年の新酒の出来について杜氏の喜多正諭さんは、「今年も香りのいい、おいしいお酒ができました。気温が下がってきたので、お鍋と一緒に飲んでいただきたい」と話していました。今後、発酵の終わったもろみを清酒と粕に分離する上槽、ろ過などの作業を経て出荷される予定で、今年も富田の酒蔵から季節ならではの味わいが市内外へ届けられます。









