ホテル求人ドットコム ホテル業界の採用市場レポートを発表

掲載日: 2025年02月27日 /提供:アイ・エヌ・ジー・エンタープライズ

~過去10年間の採用時の給与金額を職種別男女別で集計分析~

株式会社アイ・エヌ・ジー・エンタープライズ(本社:東京都新宿区、代表取締役:橋本 伸)は、運営するホテル・旅館などホスピタリティ業界に特化した求人情報サイト「ホテル求人ドットコム」(https://www.hotelkyujin.com)で集まったデータを活用し、2015年1月~2024年12月の10年間に採用された約9,000件の採用時給与データに基づく最新の採用市場レポートを発表します。

「ホテル求人ドットコム」URL: https://www.hotelkyujin.com/



■採用市場レポートの目的
過去10年でホテル業界はグローバル経済の変動や観光トレンドの変化、テクノロジーの進化、そして新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる未曾有の影響など数多くの課題に直面しました。こうした外部要因はホテル業界の雇用市場に大きな影響を及ぼし、特に2020~2022年のコロナ禍では観光客激減と営業自粛で求人も停滞しました。そして2023年以降は水際措置の撤廃により訪日客数が急回復し、2024年の訪日外国人旅行者数は約3,687万人(2019年比+15.6%)に達するV字回復となりました。このインバウンド需要の回復やコロナ後の反動によって宿泊需要が増加し、ホテル業界では深刻な人手不足が顕在化しています。帝国データバンクの調査によれば旅館・ホテル60%以上の企業が人手不足と回答しており(2024年10月時点、正社員で62.9%、非正社員で60.9%が不足)、人材確保が業界全体の課題となっています。
本レポートは、こうした背景の下で採用時給与のトレンドを把握し、業界関係者が今後の人材戦略を立てる上での指針となることを目的としています。データに基づく洞察により、ホテル業界が直面する現状と将来展望を明らかにし、持続的な発展に向けた方向性を示します。
■雇用形態別の採用時給与の推移
本調査では、採用時給与の形式を統一するため、アルバイト・パート採用の提示額はすべて時給に換算し、契約社員・正社員採用は年収に換算して分析しています。過去10年の雇用形態別の給与推移をみると、コロナ禍前とコロナ禍、そしてコロナ後の回復期で明確に傾向が分かれました。
アルバイト・パートの時給推移: 2015~2019年は緩やかな上昇傾向で、年平均成長率約2.0%と最低賃金の上昇率(平均約2.8%)をやや下回る水準でした。しかし2020~2022年はコロナ禍の影響で外出自粛や営業休止が相次ぎ、時給は成長率0%~マイナスと停滞・減少しました。その後、2023年5月の感染症法上の分類見直しやインバウンド再開による宿泊需要急増に伴い、2023年には採用時給が急上昇します。特に需要回復期の人手不足を補うため採用活動が活発化し、一時は前年比+13.8%超という大幅な時給アップが記録されました。2024年もこの高水準を維持して推移しており、同年秋に実施された最低賃金制度の全国平均賃金推移は過去3年間(961円→1,004円→1,055円)の大幅引き上げが下支えとなって、ホテル業界の時給相場はコロナ前より明らかに底上げされています。
雇用形態別給与額推移:平均時給(アルバイト・パート採用)

出所:ホテル求人ドットコム実績データ

契約社員・正社員の年収推移: 正社員・契約社員の採用時提示年収についても、2019年までは年平均+1.6%程度の緩やかな上昇に留まっていました。ところが2020年以降のコロナ禍では、無期雇用の正社員と有期雇用の契約社員で雇用状況に差が生じたと考えられます。ホテル各社は経営維持のため正社員の配置転換や優秀人材の確保を進めた一方、契約社員についてはパート同様に一時的な人員整理の対象となった可能性があります。この結果、コロナ禍の間は正社員の採用年収は微増・維持傾向でしたが、契約社員の募集は抑制され全体の平均年収は伸び悩みました。しかし需要回復局面では正社員・契約社員の採用を双方で再拡大し、2023年には前年比+7%以上もの年収アップが見られています。人手不足を背景に企業が提示する待遇水準が大きく引き上がったためで、2024年も高い水準を継続しつつあります。総じて、コロナ後のホテル業界では優秀な人材確保のため無期・有期を問わず待遇改善が急速に進んだと言えるでしょう。
雇用形態別給与額推移:平均年収(正社員・契約社員)

出所:ホテル求人ドットコム実績データ

■施設カテゴリ別の採用時給与の推移
続いて求人施設を業態カテゴリごとに分類し、それぞれの採用時給与の推移を分析しました。集計対象となった求人企業を「シティホテル」「リゾートホテル」「旅館」「ビジネスホテル」「レストラン」「結婚式場」の6カテゴリに区分しています。各カテゴリの給与傾向には次のような特徴が見られました。

「シティホテル」
大都市圏のシティホテルは採用時の提示年収が全体的に高めで推移しています。コロナ前後で変動はありつつも、高級志向の都市ホテルらしく平均給与水準は他カテゴリより上位に位置しました。
「リゾートホテル」
リゾート地のホテルもシティホテルと同様に比較的高い給与レンジで推移しています。勤務地が地方でも専門スキルを持つ人材需要が高く、待遇面ではシティホテルに匹敵する条件が提示される傾向があります。
「旅館」
旅館はその規模や地域によってばらつきがあるものの、給与水準はホテル系と同程度かやや低めで推移しました。従来から人手不足が指摘される業態でもあり、コロナ後は人材確保のため給与条件を引き上げる動きが見られます。
「ビジネスホテル」
ビジネスホテルの年収水準はシティホテルやリゾートホテルに比べて一貫して低く、その差は平均で年間10~20万円程度と推定されます。有期契約労働者を大量採用する傾向にあるビジネスホテルでは、コロナ前は抑制的だった給与が、人手不足の深刻化した近年になってようやく底上げされつつあります。
「レストラン」
ホテル内外のレストラン部門の採用給与はボラティリティ(変動幅)の大きさが特徴です。企業によって提示条件の差が大きく、同じレストラン求人でも高待遇のものもあれば低水準のものも見られました。景気や観光客数の影響を受けやすい職種であり、コロナ禍では大きく落ち込んだ一方、需要回復期には高給オファーも散見されました。
「結婚式場」
ブライダル施設では、コロナ禍の結婚式延期・縮小の影響から一時求人が減りましたが、2022年以降は需要持ち直しに伴い採用も活発化しました。給与水準は中堅クラスのホテルと同程度で推移しており、専門職人材にはそれなりの好待遇が提示されるケースもあります。

以上のように、施設カテゴリ別に見るとビジネスホテルの低位傾向とレストランの振れ幅の大きさが際立っています。一方、シティホテルやリゾートホテルなどでは安定的に比較的高い給与水準が維持されており、業態による採用条件の差が明確に表れる結果となりました。
施設カテゴリ別給与額推移:平均年収(正社員・契約社員)

出所:ホテル求人ドットコム実績データ

■職種別の採用時給与の推移
ホテル求人ドットコムの採用時の職種を「管理職」「宿泊部門」「料飲部門」「宴会部門」「婚礼部門」「調理部門」「営業部門」でカテゴライズして分析しました。
GM・支配人・料理長などの管理職は、ほかの職種と比較して採用時給与が高めで、コロナ後は人材争奪が激化したことでさらに上昇傾向が顕著に見られます。
現場スタッフを中心とした宿泊部門/料飲部門/宴会部門の職種は、コロナ禍で営業時間短縮やイベント自粛の影響を受け、一時給与が伸び悩みました。しかし需要回復期には人材不足が顕在化し、緩やかながら上昇に転じています。
営業部門については、コロナ後の需要喚起や収益最大化への注力に伴い、従来以上に優秀な営業人材の確保が求められた結果、採用時給与が大幅に上昇。デジタル化やレベニューマネジメント力を備えた人材への需要が特に高まっています。
人事・総務・経理などの管理部門や事務職は、比較的安定した給与水準を保っていますが、営業部門ほどの伸びではありません。IT担当・設備管理などの専門職は、求人件数こそ限られるものの、デジタル人材に対し高報酬を提示する例も出始めています。

このように、管理職・営業部門での採用時給与上昇が目立つ一方、現場スタッフ職種は緩やかな増加にとどまっています。ホテル業界全体で人材確保の必要性が高まる中、特に専門性の高い分野での給与改善が進んでいることがうかがえます。
職種別給与額推移:平均年収(正社員・契約社員)

出所:ホテル求人ドットコム実績データ

■2024年男女別の採用時給与
最後に、男女別の採用時給与についての分析結果です。過去10年間の傾向を通じて、ホテル業界における男女間の待遇差が徐々に是正されつつあるものの、依然として差異が残ることが明らかになりました。本レポートでは特に2024年に採用された正社員・契約社員のデータを用いて年代別に男女の給与を比較しました。その結果、男性は年齢が上がるほど給与が顕著に上昇し、例えば20代から60代にかけて約20%近く平均給与が上昇するのに対し、女性は同期間で平均約9%の上昇にとどまることが分かりました。この差異は、ホテル業界において男性が高年齢層で管理職に就く割合が高い一方、女性の昇進機会が限定的である現状を反映している可能性があります。実際、支配人や部長職など高報酬のポジションには男性が就くケースが多く、女性は現場スタッフや一般職で昇給幅が小さいままキャリアを重ねる例が多いと考えられます。その結果、男女間で昇給スピードに差が生じ、平均給与にも開きが見られる状況です。
ただし近年は業界全体でダイバーシティ推進や女性管理職登用が進み始めており、若年層では男女差が縮小する兆しもあります。企業によっては女性支配人の登用やワークライフバランス重視の制度改革に取り組む動きも出てきており、今後この男女格差が是正されていくことが期待されます。引き続き、女性のキャリアパス拡大や均等な昇進機会の確保が業界の課題となるでしょう。
男女別採用時平均年収(2024年1月~12月)

出所:ホテル求人ドットコム実績データ

■最後に
本分析で用いた給与データは、あくまで入社時点で企業が提示した採用条件上の年収/時給であり、入社後の昇給や賞与実績は含まれていません。また、当サイト利用企業の求人に基づくデータのため、ホテル業界全体の平均をそのまま示すものではない点にご留意ください。特に都市部と地方では採用条件に大きな差があり、地域要因も考慮が必要です。本レポートの結果は、あくまで今後の採用活動の参考として活用いただければ幸いです。
コロナ禍を経てホテル業界の人材市場は大きな転換期を迎えています。人手不足の深刻化に対応するため、各企業が示す賃金水準は上昇傾向にありますが、それだけで課題が解決するわけではありません。優秀な人材を惹きつけ定着させるには賃金以外の魅力、例えば、働き方の柔軟性や職場環境の整備、自社のブランド力や強みの訴求が重要と考えます。
本レポートで得られた洞察を踏まえ、ホテル業界が今後も魅力ある雇用環境づくりと持続的成長に向けた人材戦略を推進していくことを期待しています。
■ホスピタリティ業界最大の求人情報サイト「ホテル求人ドットコム」
ホテル求人ドットコムは2002年3月にサービスを開始した、ホスピタリティ業界に特化した求人掲載料無料の求人情報サイトで、日本全国のホテル・旅館をはじめとした宿泊施設、レストラン等の飲食施設、専門結婚式場など3,200施設が掲載契約し、現在約5,600件の求人情報が掲載されているホスピタリティ業界最大の求人情報サイトです。サービス開始当初より一貫として求人企業の使いやすさと求職者の応募しやすさを追求し、ホスピタリティ業界特化の求人情報サイトとしてはNo.1の求人掲載数と掲載求人への応募者数、スカウト登録者数を誇る求人情報サイトです。
■サービス概要
サービス名  : ホテル求人ドットコム
事務局営業時間: 平日 9:30~18:30
URL     : https://www.hotelkyujin.com
■会社概要
商号   : 株式会社アイ・エヌ・ジー・エンタープライズ
代表者  : 代表取締役 橋本 伸
所在地  : 〒162-0042 東京都新宿区早稲田町12-5 ニュー早稲田ビル6階
設立   : 1997年2月24日
事業内容 : 有料職業紹介事業(13-ユ-080304)
ホテル総合アウトソーシング事業 エグゼクティブサーチ 経営コンサルタント
資本金  : 1,000万円
URL   : https://www.ing-ent.co.jp
【本件に関するお客様からのお問い合わせ先】
ホテル求人ドットコム事務局
TEL:03-6233-8818
お問い合せ:info@hotelkyujin.com

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