
佐々木類個展「不在の記憶」Photo by Keizo Kioku
エイベックス・クリエイター・エージェンシー株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:加藤信介、以下:ACA)が運営するオルタナティヴ・スペース【WALL_alternative】では、2025年2月14日(金)から3月8日(土)まで、ガラスを用いた作品制作で国際的に注目を集める佐々木類の個展「不在の記憶」を開催中です。
本展では、佐々木の活動の拠点である金沢で採集した植物をモチーフにした《土地の記憶》、《忘れじの庭》、部屋の隅を型取りした《隅》に加え、新たな試みとして佐々木がエイベックススタッフと共に、WALL_alternativeが位置する西麻布を中心に、うつろいながら絶えず多様なカルチャーを醸成してきた象徴的なエリアでもある青山・六本木まで、その地の歴史やスタッフの記憶を辿りながら採集した植物を用い制作した新シリーズ《植物の記憶 / 都市観察》も展示しております。会場では、今回の植物採集マップも展示し、土地の記憶と実際に植物採集をした道のりを辿ることができます。

佐々木類個展「不在の記憶」Photo by Keizo Kioku

佐々木類個展「不在の記憶」Photo by Keizo Kioku
展覧会詳細はこちら
不在の存在
佐々木類は、ガラスを素材に記憶と存在の本質を探求している。或る時々に暮らした場所や、人々との繋がりや縁を結んだ場所で植物を採取し、ガラスに封入するという独自の手法を用いて、場所、空間、時間といった自らの記憶をその植物に託す。植物は灰になり、封印されて残り、見るたびに過去の出来事や感情との関係に向き合うことになる。現代美術における「不在」や「記憶」のテーマを扱う数多くの作家の中でも、佐々木のアプローチはひときわ繊細である。光を透過して静かに佇む作品群は、存在と非存在の境界を探りあて、個人と集団の経験を再考する手段ともなっている。人生におけるさまざまな経験と「記憶」という普遍的なテーマを融合させ、環境との密接な関わりと素材・技法の選択の連関が合致している点で秀逸である。植物以外にも、普段は気に留めることのない部屋の隅を象り、物質的な痕跡とするなど、「不在の記憶」というテーマを通じて、記憶と存在の本質に迫る多層的な解釈を可能にしている。展覧会の冒頭に象徴的に配置された《The Corner》は、建物の隅にアルジネートを詰めて建物の「隅」を型に取り、それにガラスを鋳込んで成形したもので、空き家の部屋の「隅」がガラスの塊に変じて静かに佇む。「隅」はその空間的特徴から、孤立や周縁といった多様な概念の比喩でもあるが、翻って、東京という特異な都市の全体は、こうした埋没しがちなささやかな存在の集積ともいえる。ガラスに封印されて永遠の命を与えられた植物も、都会の「隅」に生きる周縁化された存在だ。今回は佐々木が都心で植物採取を行ったというが、髪の毛やダウンの綿毛が付着しているなど、植物にも人間の痕跡が残っていると感じたという。制作過程でもコンクリートの割れ目から生えた植物は繊維が弱く、水泡が多いために焼成の過程で割れたガラスも多かったようだ。
空間にせよ、植物にせよ、見えない過去の記憶が作品として顕在化するのは、その存在が失われた後であり、永遠に「不在」となった存在を現在に繋ぎ留める行為が作品として残る。「不在の記憶」とは、或る時、或る場所に関わる人々の間で共有される記憶の本質とは何かという問いでもあるのだろう。
黒澤 浩美/金沢21世紀美術館チーフ・キュレーター
また、併設するバーでは佐々木類が推薦した北陸のドリンク&フードメニューも提供中です。
コラボレーションメニューについて
SAYSFARM
ドメーヌとして100 %自社原料のみのブドウでワイン造りを目指しています。一本瓶に、海から丘に吹く心地よい風、北陸のやさしい陽の光や深々と畑に積もる雪も詰め込んだ氷見の風土が醸すワイン。ごくシンプルな理念のもと「北陸が生む美しいワイン造り」を目指しています。
AWA ROSE 2023

AWA ROSE 2023
つりや
魚都・富山県氷見市で、江戸時代から一五〇年、商いを営んできた釣屋魚問屋。 「つりや」は、氷見沖や能登沖など近海で獲れる海の幸の中でも、選びすぐりの
旬の食材を使った、海の保存食のブランドです。伝えたいのは、食の大切さと、新鮮な魚介から広がる豊かな日本の食文化。より美しく、安心してお召し上がりください。
いただくために、調味料や製法の一つについても時間をかけて、ていねいに吟味。

つりや 海の保存食3品盛り合わせを提供中
QINO SODA 〈木のソーダ〉
一口でまるで森林浴。森の香りを閉じ込めた新感覚の無糖フレーバー炭酸水です。
クロモジは柑橘やハーブのような爽やかさ、杉は深い森を思わせるスモーキーなあじわいが特徴。
原料には水源地の森で間引いた木を使い、売上の一部は植林費用に充てられます。
QINOは「木を使い、森を育て、水を守る。」をビジョンに、森林環境へのエールになる活動を行っています。

QINO SODA&つりやのペアリングメニューも提供中
■佐々木類について

Hanmi Meyer / Bullseye Glass Co. “植物の記憶:Subtle Intimacy (2012-2022)” (photo by Yasushi Ichikawa)/2022年
1984年高知県生まれ。現在は、石川県にて制作。身近にある自然や生活環境にインスピレーションを得ながら、主に保存や記録が可能な素材であるガラスを用い、自分が存在する場所で知覚した「微かな懐かしさ」のありようを探求している。
北欧やアメリカを中心に滞在制作招聘を受け、国内外の美術館で展示活動を行う。主な賞歴は、第33回Rakow Commission(2019年、コーニングガラス美術館/アメリカ)、富山ガラス大賞展2021大賞(富山市ガラス美術館)。ラトビア国立美術館(ラトビア)、金沢21世紀美術館など作品収蔵多数。近年の主な個展に「Subtle Intimacy : Here and There」(2023年、ポートランド日本庭園/アメリカ)、「雪の中の青」(2024年、アートコートギャラリー)がある。ニューヨークタイムズ紙や日本経済新聞などで作家特集掲載。
【展示概要】
佐々木類個展「不在の記憶」

会期:2025年2月14日(金)-3月8日(土)※日曜定休
時間:18:00-24:00
会場:WALL_alternative(東京都港区西麻布4-2-4 1F)
入場:無料・予約不要
HP URL: https://avex.jp/wall/exhibition/484/
企画・主催:WALL_alternative
協力:山峰潤也、ArtTank、黒澤浩美
会場構成:山際悠輔
グラフィックデザイン:関川航平