株式会社帝国データバンクは「唐揚げ店」の倒産発生状況について調査・分析を行った。
<要旨>
唐揚げ専門店の倒産は2024年に急減。競争激化や原材料高騰で小規模店が淘汰されたが、過当競争は緩和。コンビニ唐揚げとの価格差縮小や差別化戦略が奏功し、生き残った店はリピーター獲得に成功。唐揚げはブームから定着へ移行しつつあるが、新たな持ち帰り・中食ビジネスや食品スーパーなどとの競争をどのように制するか、注目される。
株式会社帝国データバンクは「唐揚げ店」の倒産発生状況について調査・分析を行った。
集計期間:2024年12月31日まで
集計対象:負債1000万円以上・法的整理による倒産
「唐揚げ店」の倒産、2024年は16件 前年から4割減少
全国で急増した唐揚げ専門店の倒産が一転して落ち着きを見せている。持ち帰りを中心とした「唐揚げ店」経営業者の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は、2024年に16件発生した。前年の9倍に急増した23年(27件)に比べて4割減少となった。倒産した事業者の多くが小規模で、閉店などを含めるとより多くの唐揚げ専門店が市場から退出したとみられるものの、淘汰ペースは鈍化した。
これまで、持ち帰り唐揚げビジネスにとっては厳しい経営環境が続いてきた。コロナ禍の巣ごもりでテイクアウト需要が高まるなか、参入コストの低さやオペレーションの簡便さ、根強い人気を背景に、大手飲食チェーンから個人店まで様々な企業が唐揚げビジネスに参入し、短期間で競争が激化した。加えて、唐揚げの原材料として使用される輸入鶏肉をはじめ、調理に必要なキャノーラ油など食用油、小麦粉など各種原材料価格の高騰で製造コストが急上昇し、安価な原材料で利益を出す「唐揚げビジネス」の前提が崩れたこと、コロナ禍の収束に伴って持ち帰り需要の縮小といった経営環境の変化も重なり、価格転嫁や集客に課題を抱える小規模店の経営にとって打撃となった。実際に、2024年に倒産した唐揚げ専門店の9割以上は、資本金が1000万円に満たない小規模な唐揚げ店だった。
一方で、近時は加熱した持ち帰り唐揚げ人気も収束し、大手飲食チェーンが唐揚げビジネスを縮小・撤退するケースも出始め、利益面では厳しい環境が続きながらもコロナ禍直後の過当競争感は一転して緩和されつつある。また、専門店価格より安いコンビニ唐揚げや冷凍食品など、割安だった競合製品では値上げが相次いだ。この間、専門店でもセントラルキッチンの導入によるコスト削減や、注文を受けてから提供するまでの時間短縮、弁当総菜へのメニュー拡大など、近時の競争激化による苦境を教訓に付加価値を高める施策を進めてきた。結果的に、淘汰の波から生き残った専門店では、「美味しい唐揚げを食べたい」リピート客の獲得に成功したことで、持ち帰り唐揚げは急激なブーム拡大と縮小を経験しながらも定着したタピオカティーと同様、ブームから定着へと移行する様相を呈している。
足元ではおにぎり店など新たな持ち帰り・中食ビジネスも台頭してきたほか、食品スーパーなど競合する業態でも持ち帰り唐揚げの品揃えを強化するなど、競争環境は引き続き激しさを増している。人気メニューの唐揚げをめぐる競争をどのように専門店が制するのか、引き続き注目される。