実証試験の背景
つがる市産のメロンは、「令和元年 市町村別農業産出額(推計)データベース」で鉾田市・熊本市に次ぐ全国3位(約26億円)。国内有数のメロン生産地ですが、農業従事者の高齢化や後継者不足により生産量も減少傾向にあります。また、メロンの栽培期間が夏期に限られることから、収益性が課題になっています。
実証試験の概要
◆東京都町田市の町田商工会議所と協力10企業とが連携して取り組んでいる、最新の水耕栽培技術「町田式新農法」を導入。
◆ガラス温室に隣接する温泉施設の温泉熱を利用し、冬期間は温室内の室温を調節。
◆NTT東日本のスマート農業技術を活用。Iotセンサー装置とIotカメラを導入し、温室内の温度、湿度、日射量、水温、二酸化炭素濃度などのデータを常時測定しています。スマートフォンやパソコンで栽培環境や温室内のライブ映像を確認することができ、このデータを蓄積することで、経験や勘だけに頼らない生産や見回り業務などの負担軽減を図ることができます。
◆試験栽培は、年3回収穫を行う栽培サイクルで実施。一般的な土耕栽培メロンでは一株からの収穫量は4個程度ですが、これまでの実証試験では、1株当たりの収穫量は夏場が約20個、冬場が約15個です。将来的には、施設内の作付環境を改善しながら1株から30個の収穫量を目指しています。
実証試験の検証
日本海側に位置するつがる市において大きな課題となるのが、冬場の日照不足です。
日照不足を補うため、これまで蛍光灯、LED、メタルハライドランプの3種の照明を使って補光効果を検証しました。
その結果、メロンの生育状況やコスト面においてLEDが最も適していたことから、現在はLEDの照明数の違いによる試験を行なっています。
糖度については季節・条件に関係なく概ね平均15度を維持できていますが、玉の大きさのバラツキが散見されています。
メロンの品種ごとの生育状況や収穫量の違いについても試験を行っており、過去4回の試験栽培において蓄積したデータを基に今期(1月播種・4月収穫)は、「地元主力品種の冬期栽培試験」と「光合成促進剤による生育比較試験」を行い、大きなチャレンジとして位置付けています。
今後の展望
◆約30坪の温室内の栽培槽は4槽(1槽1株)ありますが、今年8月上旬には、栽培面積を約120坪増やして栽培槽を22槽にし、より多くの条件下でメロンを栽培し、詳細な試験データの蓄積と分析を重ねていきます。
◆継続的な出荷体制を確立するために2系統で栽培し、収穫量を2022年度は900玉程度、2023年度以降は1900玉程度を目指していきます。
◆実証試験の結果をもとに栽培方法のマニュアルを確立し、冬期間における農業者の所得向上と、新規就農の機会創出に繋げていきます。
◆市が東京都新宿区で運営しているアンテナショップ「果房 メロンとロマン」を含む首都圏への供給を通じて、青森県つがる市産メロンの知名度向上・消費者ニーズに対応した商品の開発を図ります。