6年生のクラスのみんなと開発にかかる授業の様子
昆虫など、スポットライトの当たりにくい素材に新たな価値を見いだし、社会の課題を解決することを掲げる近畿大学発ベンチャー・株式会社POIは、このたび、「“み”らいをつくる “ほ”んきのまなび」をテーマに掲げ、ユネスコスクールキャンディデート校にも指定されている横浜市立三保小学校の6年生の子どもたちと共同で「フライドコオロギ・横浜中華味」を開発することとなりました。
弊社は、コオロギ事業を行うベンチャー企業が倒産する等、暗い話題が続く昆虫食事業において、持続可能な未来の食糧確保へ挑戦する子どもたちの発案で、安心・安全な未来へつながる食材として、子どもたちとともに、昆虫食を題材に学習を深めてきました。
班に分かれた特別講義の様子
昆虫食が注目される背景
国連の報告書(2013)
2013年 国連食糧農業機関(FAO) は、気候変動などによる、世界的な食糧危機問題の切り札として、昆虫を食用や家畜の飼料にすることに関する報告書を公表しました。
日本でも、信州を中心に古くからイナゴやカイコといった昆虫が食べられており、伝統的な郷土食として定着していますが、コスト面や心理的な抵抗感などがあり、未だに市民権を得る状況には至っていません。
昆虫の可能性
しかしながら、コオロギをはじめとする昆虫はタンパク質などの栄養分が豊富で、その他の食材と比べても遜色なく、食材や素材としての未知の可能性を秘めています。
また、排出される二酸化炭素の量が従来型の畜産に比較して圧倒的に少なく、気候変動の原因の一つでもある畜産に対する有力なアプローチとなる可能性を秘めています。
コオロギと畜産(牛)の比較
開発のきっかけ
特別講義の様子
「『昆虫食』に興味を持っている子どもたちがいるので、ぜひ、講義を行って欲しい」という依頼を担任の加藤佑理先生から受け、オンラインでの交流を通じて、子どもたちに昆虫食について先入観を持つことなく、メリットやデメリットも含めて、正しい知識をお伝えしてきました。
そうした中で「三保小学校オリジナル」の商品を開発してみたい、という子どもたちのSDGsにかける想いに共感し、「横浜らしさ」を表現しつつ、「コオロギ」の食材としてのポテンシャルを引き出すような商品を研究・開発するに至りました。
特別講座を経て
子どもたちのレポート
特別講義は、三保小学校で実際に調理を行い、子どもたち提案の中華風味の味付けにしたものを実食して確かめました。
国産のコオロギを素揚げにして、シンプルに素材の味を体験しました。
佃煮よりも、揚げたコオロギのほうが子どもたちには評判で、多くの子どもたちからは「美味しかった」という声を聞き、また、昆虫食の講座についても高評価でした。
子どもたちのレポート
横浜中華味について
横浜といえば、中華街。
コオロギは生物学的にもエビやカニに近く、コオロギは特にエビに近い味がします。エビは中華の食材としても多くの料理に使用されており、中華風味の味付けと非常に相性がよく、子どもたちの発想やアイディアにより、様々なスパイスを配合し、中華らしい味付けに仕上がりました。
販売について
この「フライドコオロギ・横浜中華味」は、1年間の子どもたちの総合的な学習の成果として、また、卒業を控えた子どもたちの発表の機会として、令和7年1月25日に開催される「横浜市ESD推進校交流報告会」にて紹介の上、令和7年2月の「感謝の会」での販売を目指しています。
商品のイメージ
パッケージシールシールは6案のデザインを作成し、その中から、子どもたちの意見を採用し、「横浜の中華街らしさ」が際立つような赤色と、中華っぽいゴールドの色を組み合わせた華やかなデザインのシールになりました。
さらに、三保小学校オリジナルのシールを張り付けて商品が完成する予定です。
左から加藤教諭、鈴木校長、弊社代表の清水
三保小学校 鈴木康史校長からメッセージ「食の未来」食料の持続可能な生産と消費を考えている本校6年生のひとグループが、 貴重なタンパク源として日本文化にあったものとは違う新たなフェーズの昆虫食に関心と価値を見いだしています。 グループの子たちには馴染みがあるものとなっていますが、その周知のために考えるべき課題を克服していくとともに、 清水さんとの連携からも学ぶ機会が増えることに感謝します。
担任の加藤佑理教諭からのメッセージ気候変動や環境問題の深刻化に伴い、食糧不足が取り沙汰される現代。「私たちが大人になるころには、何を食べて、どんな世界になっているのだろう。」という漠然とした課題意識から、子どもたちは新たな可能性として昆虫食に目を向けてきました。先駆者である清水さんや周囲の人々の思い、自らの昆虫食との関わりを通して、多様な視点から考えた上で、自分たちの未来を自分たちの手でよりよくしていこうと行動する姿に期待しています。
株式会社POI 代表取締役 昆Tuberかずきこと清水和輝
弊社代表 清水和輝からコメントこれまで特別講義や現地での調理体験を通じて子どもたちと交流してまいりました。
味付けについては当初は「チョコ」や「いちご」などのお菓子寄りになるかと考えておりましたが、思いのほか本格的な中華味になり、地元・横浜への子どもたちの想いや、将来の地球の食料問題に対する熱意が伝わってきました。昆虫食を取り巻く環境は厳しい状況ですが、予想以上に先入観のない子どもたちの純粋な思いが広がることで、少しずつ普及と啓発が進むことを願っております。
横浜市立三保小学校について
昭和45年4月創立。横浜市緑区三保町1867番地。児童数926名(令和5年6月23日現在)
互いに思いやり、人や地域とかかわり合いながら、進んで学び、高め合う子~「元気 勇気 根気」~を学校教育目標に掲げ、ユネスコスクールキャンディデート校にも指定されており、ESD(Education For Sustainable Devellopment)に力を入れている。
株式会社POIについて
捨てられるものに新しい価値を。昆虫をはじめ、新たな素材に価値を与え、持続可能な社会に貢献します。
昆虫食に目覚めて8年。「昆Tuberかずき」の名前で昆虫食の普及・啓発を行ってきた近畿大学の現役学生である代表の清水和輝が立ち上げだ近畿大学発ベンチャーです。
昆虫を活用した商品の企画・開発やOEM、企業向け、子ども向けの講演、イベント開催や地方創生にかかる事業などを手掛けています。