株式会社帝国データバンクは、2024年9月以降における食品の値上げ動向と展望・見通しについて、分析を行った。
<調査結果(要旨)>
- 9月の食品値上げは1392品目 「人件費」由来の値上げが拡大、24年は27.2%
- 9月は「アイスクリーム製品」で一斉値上げ コーヒー・チョコで「ビーンショック」の影響長期化
- 今後の見通し:本体価格への転嫁に「限界感」強まる 年間の値上げは前年比半減
[注] 品目数および値上げは、各社発表に基づく。また、年内に複数回値上げを行った品目は、それぞれ別品目としてカウントした。値上げ率は発表時点における最大値を採用した。なお、価格据え置き・内容量減による「実質値上げ」も対象に含む
次回の調査発表日は、2024年9月30日(月)午前9時
9月の食品値上げは1392品目 「人件費」由来の値上げが拡大、24年は27.2%
主要な食品メーカー195社における、家庭用を中心とした9月の飲食料品値上げは1392品目を数え、5カ月ぶりに1千品目を超えた。前年9月に多かったみそ・しょうゆなどの調味料の値上げは小規模だったものの、アイス・氷菓類では1年ぶりに一斉値上げとなったほか、チョコレートや冷凍食品などまとまった量の値上げが相次ぎ、年内の値上げとしては4番目の多さとなった。
ただし、値上げの沈静化傾向が強まった前年同月(2148品目)に比べると756品目(35.2%)少なく、9カ月連続で前年同月を下回ったほか、減少率は9月までで年内最小となった。また、1回あたりの平均値上げ率は9月単月で16%だった。
2024年通年の値上げ品目数(予定含む)は11月までの累計で1万1872品目となり、年間の平均値上げ率は17%となった。また、10月は6カ月ぶりに2千品目を超える水準で推移しており、今年4月に次いで年内2番目に値上げ品目が多い「ラッシュ」となる。
2024年の値上げ要因では、最も多いのが「原材料高」(92.5%)となった。年前半では割合が小さかったものの、猛暑や干ばつ、流通ルートの制限により一部原料で価格上昇の影響を受けたことが要因となった。円安ドル高の影響が長期化していることを背景に、「円安」要因の値上げは29.6%を占めた。「人件費」由来の値上げは27.2%を占め、23年通年(9.1%)を大きく上回る水準が続いた。最低賃金の引き上げなどによる従業員の「賃上げ」を要因とした値上げが徐々に製品価格へ反映・浸透しはじめたことも要因の一つとみられる。
9月は「アイスクリーム製品」で一斉値上げ コーヒー・チョコで「ビーンショック」の影響長期化
食品分野別に2024年9月の値上げをみると、冷凍食品を中心とした「加工食品」が全食品分野で最も多い757品目となり、9月全体の約半数を占めた。みそ・しょうゆ製品やスパイス製品など「調味料」(193品目)は、前年同月(1257品目)に比べて1割強の水準にとどまった。「菓子」(169品目)ではラクトアイスなど「乳製品」(99品目)を含め冷菓製品で値上げラッシュとなった。また、菓子では「チョコレート製品」の値上げも多く、「酒類・飲料」(135品目)の中心となるコーヒー飲料同様に、豆不足「ビーンショック」の影響が長期化している。
今後の見通し:本体価格への転嫁に「限界感」強まる 年間の値上げは前年比半減
高い上昇率が続く食品の値上げに対し、購入点数の減少や安価なPB商品への変更、買い控えといった「値上げ疲れ」の消費行動が続き、食品スーパーなど小売現場から食品に対する値下げ圧力が強まりつつある。他方で、メーカー側では食品トレーやビンなど包装資材、物流費などのコスト増が引き続き発生しているほか、大雨や猛暑、干ばつをはじめとする世界的な異常気象による原材料高の負担が重くのしかかっている。加えて、最低賃金の引き上げによる人件費の増加などを背景とした「人件費」由来の値上げ割合が徐々に上昇するなど、複合的な値上げ圧力は高止まりしたままの状態が続いている。近時は、値上げによる消費者側のショックを和らげるため、本体価格の「引き上げ」から内容量の減量などによる「据え置き・維持」へのシフトが食料品で目立ってきた。様々なコストが上昇する中でも積極的な「値上げ」がしづらい状況が鮮明となっており、値上げの勢いは後退感がみられる。
先行きでは、10月の食品値上げ予定品目数は3千品目前後の着地が予想される。10月としては2022年以降で最少となるものの、24年4月以来半年ぶりの値上げラッシュとなる。値上げを含めた価格設定は難しい局面を迎えており、24年通年の食品値上げ品目数は23年通年から半減となる1万5千品目前後が想定される。