従業員の不正に気付いたら。飲食店の事例で考える示談・賠償の対応方法と予防策

飲食・宿泊2020.03.12

従業員の不正に気付いたら。飲食店の事例で考える示談・賠償の対応方法と予防策

2020.03.12

不正を未然に防ぐ4つの方法

人材不足で複数チェックが難しい小規模な飲食店は、長年1人のスタッフが金銭管理を任っていることも多い。そもそも不正が起きやすい環境にあるともいえる。だがそのような場合も、次の4つを実行すれば、未然に防止する手立てになるという。

(1)伝票類の不正を防止する

大量の手書き伝票は書き換えや紛失リスクもあり、不正の温床になりやすい。改ざんができないPOSレジや、現金自体を扱わないキャッシュレス決済の導入を進めたい。

「仕入れもFAXや電話ではなく受発注のシステムを使えば、取引が透明化されます。データの履歴は基本的に改ざんできないため、高い信頼性を担保できるでしょう。金額集計も容易で、従業員の負担軽減にもなります。書類のチェックは効率化しておきたいですね」

(2)売上と現金、棚卸残高を日々確認する

レジの打ち出し金額と現金残高を毎日合わせることは必須だ。売上のおかしな動きといった異常を察知できれば、不正の早期発見につながる。棚卸で数量不足が明らかになれば、食材が横領されていることに気付けるだろう。

「定期的な棚卸や帳簿チェックが行き届いていれば、内部けん制にもなり、不正が起きにくい環境になります。数字を日々手入力して計算するのは大変な作業ですが、ここもPOSや発注のシステム化を進めて金額や在庫量を自動計算すれば、管理も容易になるでしょう」

(3)防犯カメラを導入する

各店舗に目が行き届かない場合は、防犯カメラの設置もありえる。映像を記録することで不正が防げるなら、ぜひ投資したいところだ。だがプライバシーの問題などデリケートな点もある。必要なのは、経営者の真摯な説明だという。

「新たにカメラを設置するとなれば、疑いを持たれ監視されているようで、従業員はいい気がしません。『記録しておけば、犯罪が起きた場合に身の潔白を証明できる。君たちを犯罪者にしないために必要なのだ』と気持ちを伝えれば、従業員も納得してくれるでしょう」

(4)スタッフの日頃の言動に気を配る

ここまで挙げてきたのは「不正のトライアングル」でいう機会への対策だ。動機のきっかけを発見するためにも、スタッフの言動には日ごろから気をつけておきたい。

「実際、賭博好きな従業員が横領したというケースは多いのです。長きにわたって料理長を務めていたり、経理担当者が1人しかいなかったりなど、不正を働きやすい環境があるなら、多少注意をした方がいいかもしれません。ギャンブル癖がないか、お金に困っているような言動がないか、耳を傾けましょう」

店舗と従業員を守るため、未然に防ぐ仕組みが必要

従業員が起こす多くの不正を見てきた白土氏によると、「売上がどんどん伸びていて、給与も上がっている状態であれば、不正をしようという考えは起きづらい」という。だが、すべての飲食店がいつも好調とは限らない。どんな状況でも、不正が発生しない仕組み作りが必要だ。

「不正行為は被害者である会社や他の従業員、加害者である本人とその家族まで、誰ひとりとして幸せにしません。重要なのは、経営者が従業員を大切に思い、守りたいという気持ちを積極的に伝えることです。その言葉に力があれば、従業員も『不正をしよう』とは考えづらいものです」

従業員に疑いの目を向けるのは辛い。しかし、不正が起きてからでは遅い。食材や売上のずさんな管理が不正を生むのであれば、その機会を与えた経営者にも責任がある。自店のスタッフを犯罪者にさせないよう、使命感をもって不正防止の仕組みづくりに取り組んでほしい。


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