出社から配送時間までに、毎日2時間半の注文処理
【Q】酒類の元卸業者として事業展開されていますね。
当社は、飲食店にお酒を卸す酒屋さんなどの業者に対して商品を配送しています。この業界では、消費者にお酒を提供する飲食店を業務店と呼んでいて、その飲食店にお酒を卸す酒屋さんのことを業務用酒販店といっています。我々は業務用酒販店に商品を供給しているので、業態としては元卸という位置づけになります。
もちろん業務用だけではなく、スーパーなどの量販店様やホテル様などとも取引していて、およそ6割が業務用、4割弱が量販店向けです。お届け先は沖縄本島だけでなく、伊江島や宮古島、石垣島といった離島にもありますし、鹿児島をはじめ九州各地からも注文をいただいています。また、お酒のネット通販を展開していて、直接消費者とのつながりももっています。
創業以来、“お酒は文化である”という理念を持っていて、地域に根ざした事業を意識してきました。沖縄の地酒といえば泡盛で、いまも沖縄では冠婚葬祭には決まって泡盛が出されますし、すでに習慣や風習をこえて文化とさえなっています。ただ近年から出荷実績は落ちていて、特にいまの30代半ばより下の世代は泡盛よりウイスキーが流行していて、その傾向は本土と同じであると思います。
当社は古くから続く泡盛を若い人にも飲んでいただく努力を続けていますし、一方でまだ扱っていないお酒があれば、国内外を問わず積極的に仕入れて、取引先に提案するかたちで情報発信しています。
【Q】取扱商品が豊富となると、受注処理が大変ですね。
アイテム数が増えるのは、もちろんそれを承知で営業しているのですが、取引先に合わせた方法で受注を処理しているのが永年の課題でした。
現状、注文は販売管理システムで一元管理しています。ただ、電話やFAXで受けるものと、専用のメールアドレスから受けた注文など様々あります。その他にも、営業担当が取引先とLINEやショートメールで行っている場合もあります。結局は販売管理システムに手入力するわけで、アナログなやり方で処理せざるを得ません。せっかくのITツールを活かせていない状況にありました。
そのほかインフォマートの『BtoBプラットフォーム 受発注』を経由する注文もあります。これに関しては商品確認から発送までスムーズにできるのですが、問題は全体の6割を占めるFAXや電話で入ってきた注文です。
【Q】FAXや電話の注文では、どのような課題があるのでしょうか?
毎朝、受注部署の担当者が出社して、FAXや電話で来た内容をもとにシステムに手作業で入力して伝票を作成する必要があります。FAXの発注書は印刷し、一方は伝票作成に、もう一方は商品のピッキングに使います。そして伝票と商品とが間違いのないよう読み上げをして1つ1つ検品していきます。それが済んでようやく配送員の手に渡ります。出社してから配送員の手に渡るまでに、毎日2時間ほどかかっているのです。ここをなんとか省力化できないかという悩みを常に抱えています。
また、FAXや電話だとどうしても間違いの可能性が出てきます。例えば「レモンサワーください」という注文があったとします。缶や1.8リットルのペットボトル、ビンの形状があるほか、メーカーも多数あります。どのメーカーのどの商品のどのタイプか分からず、取引先への確認はほぼ毎日発生しています。
注文内容の確認も発注した担当の方が休みだったり、居酒屋さんがオープンする時間まで確認が取れなかったりと様々な状況があります。場合によっては再配達という最も避けたい事態が生じてしまう事もあります。
取引先の協力を得て受発注システムを導入
【Q】LINEで使える受発注システムを導入されました。
同業者から『TANOMU』という携帯端末から受注ができる便利なツールがあるという話は聞いていました。ただ、数年前に別の業者が取引先にタブレットを配るなどでIT改革を促した際に強い反感があり、同意を得るのに苦労したという話も聞いていました。
そのため自社の業務改善のために、取引先にも発注方法の変更をお願いすることに躊躇してしまいました。これまでやっていた作業で済むのに、わざわざ新しいことを覚えなくてはならないというのは誰でも抵抗があります。しばらくは話を聞くにとどめて、実際には動きませんでした。
『TANOMU』導入のきっかけは、ある主力の取引先が協力的だったことでした。業務用酒販店様ですが、取引量が多く配送先も広域にわたっており毎日70品ほどをFAX用紙に手書きされていました。実際に扱う伝票も半月ほどで2000件、FAX注文書のコピー用紙で厚さ5cmに達するほどです。「毎日手書きをしているから腱鞘炎になりそうだ」などともおっしゃっていていました。
日ごろからお世話になっている大事な取引先で抵抗を示されないか心配もありましたが、受発注システムの利用について相談をすると有難いことにとても協力的に応じていただいたのです。まずは実験的にということで、さっそくモバイルで受発注できる『TANOMU』を導入していただきました。
その取引先はスタッフがそれぞれスマートフォンを使って仕事をしていたので、説明もしやすかったですし大きな支障もなくスムーズに開始できました。『TANOMU』の注文では取引先に商品確認をすることがなくなり、JANコードが入っているので新人でもピッキング対応できるので助かっています。社内的にも伝票発行の煩雑さから解放されると好評です。
販促ツールの活用で、飲食店のニーズを拾いたい
【Q】今後の展望をお聞かせください。
『TANOMU』には販促のためのツールもあります。取扱商品を一覧で表示できますし、それぞれに説明を添えることができます。こちらが用意した商品カタログから発注できますから、入り数や商品名など細かい違いなどにも対応していただけます。ひいては、省力化によって空いた時間を営業に回すことができます。
当面の目標は毎日ご注文される取引先に受発注システムをご利用いただき、当社の取引件数の8割をデジタル化することです。新たなツールの導入が、業務展開のきっかけになればうれしいですね。そのためにも『TANOMU』をうまく運用していこうと考えています。
那覇酒類販売株式会社
本社所在地:沖縄県浦添市勢理客三丁目3番12号
代表者:代表取締役 根路銘 修
事業内容:酒類・飲料の卸売ならびに小売販売
公式HP:https://www.nahasyuhan.com/