同店を含む系列店の3店舗では、年に1回必ずイタリアへの研修旅行を実施している。
「研修中は、とにかく地元の飲食店に通いつめ、朝・昼・晩ひたすら食べ続けます。そのなかで新しい料理を発見したり、自分の店で出している味を確認したりするのです。これは意外と重要なことで、現地で仕入れた味を日本で再現しても、徐々に味にブレが出るためです。それを修正するために、もう一度自分の舌で、味を覚え直す行為が必要なのです」
素材の良さを求めたら、直接仕入れになった
イタリア郷土料理の味を再現するのに、「素材」の良さは妥協できないという。そのための仕入れには、やはり相当なこだわりがある。
「シンプルに美味しいと思えるには、素材の味が一番大切です。豚肉なら瀬戸内海の『岩城島の国産レモン豚』を、半頭買いで仕入れていますし、牛肉なら北海道の『豊西牛』を、直接仕入れています」
魚の仕入れにもこだわりがある。瀬戸内海の宇和島の漁師さんから、仲買を介さず直接仕入れているそうだ。その際、店側から特に魚種を指定することなく、旬のものや水揚げされる魚を聞いて、扱えない魚(例えばフグなど)以外は“お任せ”にしているという。
水揚げされた魚を、10kgほど宅急便で送ってもらう。それが週に2、3回。姉妹店3店舗で分けるため、送料を考慮しても、築地で仕入れる価格より2~3割は安く抑えられるという。
「旬野菜も、横浜近郊の農家さんから仕入れています。農家さんのなかには、趣味的にとても美味しい野菜を作っている方もいて、それも使わせていただいています。ただこういう仕入れ方は、人と人とのつながりや関係がないとできませんね」
仕入れによってメニューは日々変わる
オステリア イル フオッコの特長のひとつに、日々、更新されるメニュー作りがある。薪窯料理は黒板メニューのみで、よくある厚いメニューブックはない。
前菜とパスタのメニューは、印刷されたメニューもあるが、こちらも日々、新陳代謝が繰り返され、1~2ヶ月後でほとんどのメニューが入れ替るという。メニュー数はすべて合わせると、日に70種類前後にもなる。