私たち食品スーパーマーケットは、お客様の豊かで楽しい食生活の実現とライフラインとしての役割を果たすべく、適時・適品・適量の食料品供給を実現するための流通網を構築してまいりました。しかし、流通を取り巻く環境や世の中の価値観は変化し、SDGs などの社会・環境分野の課題や物流分野の課題などから、食品物流では近い将来、商品が運べなくなる危機が迫っています。
一方、令和 3 年に閣議決定された「総合物流施策大綱」では、加工食品分野の物流標準化・商慣習改革を推進するとされています。また、国土交通省、経済産業省、農林水産省、厚生労働省が令和 2 年に策定した「荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン(加工食品、飲料・酒物流編)」や、製・配・販の各階層が参画する「フードサプライチェーン・サスティナビリティプロジェクト(FSP)」の提案において、リードタイムの延長や 3 分の 1 ルールの見直しの徹底などが課題に対する具体的解決策として示されているところです。
これらを踏まえ、私たち 4 社は、現在、そして将来に向けた食料品の安定供給維持に向けて、今までの取り組みを見直し、食料品流通網のあり方を再構築するための取り組みを進めてまいります。
上記を実現するために、以下の取り組みを実行いたします。
1.加工食品における定番商品の発注時間の見直し
加工食品における定番商品の店舗発注時間を前倒しすることで、お取引先様の夜間作業の削減および調整作業時間の確保を実現いたします。
2.特売品・新商品における発注・納品リードタイムの確保
特売品・新商品の計画発注化を進め、確定した発注データをもとに商品や車両の手配ができる環境を整えることで、緊急手配等の作業負担を軽減するとともに、積載効率および実車率を向上させます。
3.納品期限の緩和(1/2 ルールの採用)
加工食品における 180 日以上の賞味期間の商品に対し、「1/2 ルール」を採用することで、商品管理業務の負担を軽減し、食品物流の効率化をはかります。
4.流通 BMS による業務効率化
卸売業と小売業間の受発注方式に、標準化された流通 BMS を導入することで、高速通信による作業時間確保、伝票レス・検品レスによる業務効率化を進めます。
2023 年 3 月 16 日
サミット株式会社
株式会社マルエツ
株式会社ヤオコー
株式会社ライフコーポレーション
1.背景
私たちは、お客様の豊かで楽しい食生活の実現とライフラインとしての役割を果たすため、食料品の安定供給に努めてまいりました。しかしながら、物流分野においては、労働環境や全産業平均を下回る収入状況などの課題もあり、トラックドライバーが不足するという事態になっております。一方で、EC市場の拡大やニーズの多様化による多品種・小ロット輸送が増加するなどもあり、物流需給はひっ迫しております。さらに、2024 年度の働き方改革関連法施行により、物流はさらに厳しい状況になることが予想されます。特に、食品物流においては、将来的に運べなくなる可能性があるとまで言われております。
物流分野の厳しい状況を改善するため、「フードサプライチェーン・サスティナビリティプロジェクト(FSP)」では、製・配・販の団体が連携して課題に対する認識を共有するとともに、持続可能な加工食品物流の構築に向けて議論がなされております。そのなかで、加工食品物流の課題解決のため、「定番発注締め時間の変更」、「特売・新商品のリードタイム確保」、「納品期限の 1/2 ルールへの統一」といった 3 つの取り組みが提案されております。このような動きを踏まえて、3 つの取り組みに「流通 BMS による業務効率化」を含めた 4 つの取り組みについて検討してまいりました。
<フードサプライチェーン・サスティナビリティプロジェクト(FSP)について>
フードサプライチェーン・サスティナビリティプロジェクト(以下、FSP)は、小売業団体(一般社団法人日本スーパーマーケット協会、一般社団法人全国スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会)、卸売業団体(一般社団法人日本加工食品卸売協会)、製造業団体(食品物流未来推進会議)が参画し、2022 年 4 月に発足されました。
製・配・販の三層がそれぞれの物流課題や実態を情報共有して理解を図るとともに、サプライチェーンの全体最適を妨げる課題の解決策を検討し新たなルールを社会実装することで、「生活者への途切れることのない食品供給」の維持と持続可能な加工食品物流の構築することを目的としております。
2.課題と対応策について
物流を取り巻く環境が変化していく中で、これまで行われてきました配送方法が維持できなくなってきております。食料品の安定供給を維持するためには、製・配・販が連携して、リードタイムの見直しをはじめとするこれまでと違った物流のあり方を追求し、トラックドライバーの労働負荷軽減等、現状の物流環境を改善する必要があります。
(1)加工食品における定番商品発注時間の見直し
①課題
これまで、適時・適品・適量の食料品供給を実現するための流通網を構築してまいりました。しかし、今後トラックドライバー不足が懸念されるなかで、車両手配が困難になることが予想されることから、従来通りの発注から納品までの工程を維持することが難しくなってきています。
食料品の安定供給を維持するため、メーカー・卸売業間のリードタイムを 1 日延長し、小売業の定番発注時間を午前中に前倒しすることで、準備に必要な時間を確保し、夜間配送の削減や積載効率の高い配送を実現することが求められております。
図 1 定番商品における発注時間変更について
現状
AM PM AM PM AM PM
小売 発注 発注
受注 受注
発注 入荷【予測2回分】
メーカー 受注
リードタイム延長
時間調整なし AM PM AM PM AM PM
小売 発注 発注 発注
受注 受注 受注
発注 入荷【予測3回分】
メーカー 受注
アクション
発注締め時間調整 AM PM AM PM AM PM
小売 発注 発注 発注
受注 受注 受注
発注 入荷【予測2回分】
メーカー 受注
卸売
1日目 2日目 3日目
卸売
1日目 2日目 3日目
卸売
1日目 2日目 3日目
前倒し
後倒し
出典:FSP 提供資料より
②対応策
定番商品における発注時間について調査したところ、4 社すべてが前日に発注を締めて、翌日朝(午前 5~午前 8 時)までには、卸売側が発注データを受注していることが確認できました。FSP が提案する「加工食品の定番発注時間前倒し」に則した運用となっており、今後も継続して取り組んでまいります。
(2)特売品・新商品の発注・納品リードタイムの確保
①課題
特売品や新商品を通じて、多様化するお客様のニーズや季節に応じた食の提案など、地域のお客様の豊かな食生活に向けた取り組みを実施してまいりました。しかし、食品物流を取り巻く環境が変化する中で、定番商品同様、特売品・新商品においても発注から納品までの従来の工程を見直しすることが求められております。
このため、リードタイムを十分確保したうえで特売品や新商品の発注を行うことで、商品や車両を効率的に準備できる環境を整え、積載効率の高い配送を実現する必要があります。
②対応策
上記課題に対して、FSP では「特売・新商品(追加を含む)の 6 営業日前計画発注化」が提案されております。
私たちは、FSP に参画している一般社団法人日本加工食品卸協会の各企業様と意見交換を行いました。このなかで、「6 営業日前」に計画的に発注する必要があることを確認いたしました。また、食品の安定供給に向けて、各社それぞれが抱える課題を解決していかなければならないと認識しました。このようなことから、各社の専用センターにおいて、6 営業日以上の発注・納品リードタイムを確保することに 4 社は合意いたしました。
図 2 「特売品・新商品における 6 営業日前計画発注」の一例(メーカー・卸売間リードタイム 1 日の場合)
出典:一般社団法人日本加工食品卸協会 ご提供資料をもとに作成
特売品および新商品における精度の高い計画発注を実施していくとともに、特売品の追加発注を抑制し、定番商品を除く新商品においては、追加発注をしない取り組みを進めてまいります。
(3)納品期限の緩和(1/2 ルールの採用)
①課題
製造日から賞味期限までの間に小売業への納品期限、販売期限が設定されております。しかし、企業ごとにルールが異なるため、メーカーや卸売業における出荷日調整作業をはじめとする商品管理業務の負担増加が発生しております。このため、納品期限「1/2 ルール」(図 3)への統一が提案されております。
②対応策
ヤオコーとライフコーポレーションは先行して、1/2 ルールを採用しております。それに加えてマルエツは、2023 年3 月、サミットは、2023 年 4 月より 1/2 ルールを順次採用いたします。
図 3 1/2 ルールへの変更例(賞味期限 12 カ月の場合)
(4)流通 BMS による業務効率化
流通 BMS は、流通業界における EDI 標準仕様です。インターネット回線による高速通信によって、データの送信時間が大幅に削減されるため、メーカー・卸売側の作業時間が確保され、物流コストの削減や発注から納品までのリードタイム短縮につながるとされております。
私たちは、流通 BMS を導入しております。これによって検品レス、伝票レスなどの業務効率化を進めてまいります。
3.今後について
物流課題を解決するには、私たちだけではなく、製・配・販三層による連携が必要となります。私たちの取り組みを知っていただき、スーパーマーケットをはじめとする他の小売企業、卸売業、製造業におかれましても、持続可能な加工食品物流構築に向けた取り組みが進むきっかけとなることを願っております。製・配・販が連携し、持続可能な加工食品物流が構築されるよう、私たちは引き続き食品物流の課題解決について検討を続けてまいります。
4.参考文献
・荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン(加工食品、飲料・酒物流編)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/_210416_guideline.pdf
以上