当日は、酪農家や関係団体、新規就農予定者、海外での放牧経験者など、多様な参加者が集結。ニュージーランドからは、専門家であるキース・ベタリッジ氏とブルース・ソロルド氏が参加し、放牧技術の普及教育を主眼とした、熱意あふれる議論が展開されました。

北海道の酪農家による実践事例
小区画管理による「集約放牧」への転換 興部町・リッチフィールド 松岡洋平氏

松岡氏はフリーストール牛舎を建設後、放牧が思うようにいかず、本プロジェクトへ参加。従来型の放牧から、放牧地を16~17の小区画(牧区)に分けて管理する「集約放牧」へ転換したことを紹介しました。
3年間の実践を通じて、牛が放牧草を効率よく採食できるようになり、配合飼料の給与量削減につながったと説明。現在は近隣の離農跡地を活用し、さらなる放牧地拡大を進めています。
「1頭当たり」から「1ヘクタール当たり」へ 天塩町・高原牧場 高原弘雄氏

高原氏は、従来の「1頭当たりの乳量」を重視する考え方から「1ヘクタール当たりの収益」を重視する土地利用型経営へと発想を転換。現在は最大43牧区を活用した集約放牧を行っていることを紹介しました。
これにより、飼料コストや労働時間の削減を実現。外部環境に左右されにくい収益構造を構築していると説明しました。
また、「放牧は感覚ではなく改善の積み重ね。観察とデータを基にした意思決定が重要」と述べ、継続的な改善サイクルの必要性を語りました。
ディスカッション
放牧技術の普及と経営マインド
セミナー後半では、NZの専門家であるキース・ベタリッジ氏、ブルース・ソロルド氏を交え、放牧技術の普及に必要な考え方や課題について議論が行われました。
「放牧成功のための三原則」 キース・ベタリッジ氏

キース氏は、放牧成功の鍵として「搾乳施設と放牧地の距離」を挙げ、従来の舎飼い中心の固定観念を見直す必要性を指摘しました。
また、「品種や牧草の種類を気にしすぎる前に、まずは草地管理を徹底することが重要」とし、放牧草の利用効率向上が経営改善につながると説明。
さらに、酪農家同士が互いに学び合うようなコミュニティワークの重要性にも触れ、「農場の外に出て学ぶ文化」が持続可能な酪農経営に不可欠であると語りました。
「経営戦略と現場観察の両立」 ブルース・ソロルド氏

ブルース氏は「どのような酪農を実現したいのか」という経営戦略を明確にした上で、観察を積み重ねる必要があると強調しました。「何頭の牛を飼うか、どれだけの土地を使うか、どんな飼料体系にするか」という戦略的な設計の上で、現場では牛の行動や残草量など細かな観察を続けることが求められるとのこと 。

またニュージーランドでは100%放牧型から購入飼料を活用するシステムまで多様な経営形態が存在する一方、利益差は“システムの違い”ではなく、“経営・放牧管理スキル”によって生まれるとも語りました。
そして「すべての意思決定はデータに基づくべき」と語り、数値による可視化の重要性を示しました。
放牧を「できる」に変えるために

最後に、司会を務めたファームエイジ株式会社 高田健次氏が、本セミナーのポイントとして以下の4点を挙げました。
情報を実践へ変えるモチベーションと学習意欲
草地利用効率を高めるためのデータ活用
ディスカッショングループを通じた仲間との学び
行政・産業による多角的な支援体制
本プロジェクトでは、2026年9月中旬に北海道興部町でのディスカッショングループ開催に加え、札幌および東京でのセミナー開催を予定しています。
今後も、現場実践を通じた放牧酪農の発展と、持続可能な酪農を担う人材育成を目指していきます。
次回の開催について
日程が確定次第、HP、SNS上などでご案内差し上げます。
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ファームエイジとは?
持続可能な農業「放牧」を普及するため、40年以上にわたって活動する「放牧の専門家集団」。放牧のためのフェンス、牧道などの全体設計、販売から「グラスファーミングスクール」及び放牧セミナーの企画に至るまで、コンサルティングも含めた放牧に関する総合ソリューションを展開。https://farmage.co.jp/









