味の素冷凍食品株式会社では、「生成AIが当たり前」の環境づくりを進めており、2025年3月に社内利用率80%を突破し、現在まで毎月80%以上の利用率を継続しています。自社IT部門の主導による協働と教育を軸に、全社・全部署への定着を実現しています。
2024年9月時点で、国内企業の71.3%が生成AIを導入している一方、「活用できている」と回答した企業は23%にとどまり、多くの企業が定着と成果創出に課題を抱えています※1。当社では、2024年5月より、社内のあらゆるシステムにAIが備わる次世代の働き方を見据え、「生成AIが当たり前」の環境づくりを、業務を熟知した社内人財で構成されたIT部門が主導することで推進。利用ルールの策定と浸透、生成AIサービス提供ベンダー(以下、ベンダー)との共創、全従業員一斉導入、実務直結の教育、トップダウンとボトムアップの両輪による全部署活用を核に、国内トップクラスの定着と業務効果を実現しました。
※1 ジャフコ グループ株式会社「JAFCO 投資仮説レポート第2号 AI×BPO~LLMが革新するアウトソーシングの未来」2024年9月
【推進施策】
1.利用ルールの策定・浸透
生成AIの業務利用を安全かつ責任ある形で推進するため、情報セキュリティや知的財産、倫理の観点を踏まえた「生成AI利用ガイドライン」を策定。また、社員が安心して生成AIを利用できるよう、特に重要なポイントをまとめた「生成AI利用4か条※2」を制定し、全社的な意識統一を図っています。さらに、生成物の公開範囲や利用用途に関するルールの周知を徹底し、ベンダーとも協議を重ねながら、環境変化や技術進化に対応した機能改修と安全性の向上に取り組んでいます。
※2 個人情報保護・情報漏えい防止・信頼性確保・著作権遵守の4つの観点から、社員が安全かつ適切に生成AIを活用するための基本ルールを示したもの
2.ベンダーと共創し、UIと機能を継続的に進化
生成AI分野の技術進化の速さとその市場の多様性が増す現状を踏まえ、当社は「導入して終わり」としないため、ベンダーと並走してサービス品質を磨き続ける共創型のアプローチを選択。国内大手企業が自社開発や大手サービス採用を進める中、当社は機能拡張性・進化速度・開発姿勢を評価し、ベンチャー企業ナレッジセンス株式会社の生成AIサービス「ChatSense」の利用を決定しました。導入後は各部署のアンケートや検証結果を取り込み、100件以上の機能改修を共同で実現。画像生成機能の開始時には、AI生成画像の利用リスクを軽減するための機能改修も先行実装するなど、ユーザーフレンドリーで、高機能かつ安全性の高いシステム環境へと継続的に磨き込んでいます。
3.実務に直結した全社・全部署への教育
全7回のハンズオンセミナーを実施。各部署のメンバーと議論しながら教材を都度手作りすることで実務に根差した研修内容へ最適化しました。実際に手を動かして学ぶ教育を通じて「使えること」を標準スキルとして定着。研修後アンケートでは受講者の90%以上が「利用できる」と回答し、その後の高い利用率の基盤となっています。
4.トップの判断による全従業員への一斉導入
生成AIで効率化できる業務は全社に存在すると捉え、PCを有する派遣社員やパートタイム従業員まで対象を広げて全社一斉導入を実施。同時に社長メッセージにより「一部の上級者のツールではなく、全員の強い味方」であることを明確化しました。社内SNSでは四半期ごとの取り組み報告や各部署の活用事例を共有し、現場からの実践知を循環させるボトムアップの文化を醸成しています。
5.社内人財ならではの主導方法
外部コンサルタントに依存せず、自社IT部門が現場理解と技術力を掛け合わせて推進することで、自社の実態に即したサステナブルな運用を確立しています。
【成果(2025年12月単月)】
利用率は80%を超え、国内でもトップクラスの定着度を達成。月間トークン利用は約240百万トークンに到達し、1人当たり平均して週7回以上の利用が定常化しています。業務削減時間は月間6,800時間※3以上を記録し、リサーチやアイデア創出、ドキュメント草案作成などで大きな効率化を実現しています。
※3 業務削減時間:ユーザーの問合わせ内容と利用文字数をもとにChatSense独自のアルゴリズムで算出
具体的な利用例(抜粋)
1.製品開発:ターゲット像の精緻化に向けたペルソナ作成を高速化
2.業務改善:ITの専門性がないメンバーによる、属人化していたExcelマクロのプログラム解析と改良に
よる保守性の向上
3.販促・コミュニケーション:POPの表現チェックとコピーの案出しの効率化
4.製造現場:多国籍社員向けの多言語翻訳によるコミュニケーションの円滑化
5.R&D部門:過去の膨大なレシピを学習した専用AIの構築によるナレッジ活用の即時化
6.制作物:広告チラシの校正一次チェックにより、品質とスピードを両立
【今後の展望(個人から組織へ)】
現在は個人の利用から、組織としての業務適用へとフェーズを移行中です。IT部門が全社・全部署に担当を持ち、各部署にも推進担当者を配置。70以上の業務テーマを組織横断で推進し、生成AIを利用した業務設計・ナレッジ蓄積・AIリテラシー強化を図っています。









