令和4年度秋、鹿児島県では県の魅力あふれるブランド食材や特産品の認知向上の取組として、福岡の調理師専門学校生たちと共に産学官連携による新メニュー開発プロジェクトが行われた。3ヶ月にわたるメニュー開発・調理実習で考案されたレシピは、11月末、食品関連企業及びメディア向け発表会が行われ、優秀作品が選出された。選出されたレシピは今後、地元企業や観光施設での導入・普及に向けて継続的な取組が行われる。
〇食の魅力輝く鹿児島県
鹿児島県は、かごしまブランド産品の消費拡大や、県への誘客促進を図る目的として、農畜産品・特産品を活用した料理提案や食材紹介、食を介した観光PRを積極的に取り組んできた。
近年では、同県で生産される新鮮な畜産品・魚介類などを新幹線輸送システムを活用し都市部市場へ供給する価値向上の取組みや、博多駅(福岡市)に直結する商業施設での鹿児島PRイベントの定期開催、鹿児島黒牛(GI)の全国和牛共進会での日本一獲得など「かごしまブランド産品」の育成も熱心に行われ、鹿児島の食の魅力は輝きを増している。
【かごしまの食】かごしまブランドをはじめとする鹿児島県特産品情報サイト https://www.kagoshima-shoku.com/
この魅力あふれる食材たちを、さらに多くの人に知ってもらおうと、鹿児島県福岡事務所が発起し、料理の道を志す若き専門学校生たちと、鹿児島の未来をかけたプロジェクトがスタートした。
〇かごしまの食×調理師専門学校
令和4年9月、未来の飲食・食品業界を担う調理師専門学校との産学官連携プロジェクトとして、料理の道を志す福岡キャリナリー農業・食テクノロジー専門学校 調理師課調理コース2年生33名(第13期生)と共に、新メニュー開発プロジェクトがスタートした。
〇わっぜか!かごんまをたもいやんせ!
プロジェクトは、鹿児島の食についての理解を深めるため、生産現場の職員やブランド産品を活用する実践企業らによる、県の農・水産業現状や、ブランド産品・メニュー開発事例の紹介から始まった。
鹿児島県では、生産者、関係機関・団体と一体となって、「かごしまブランド」確立運動を展開している。県を代表する農畜産物を「かごしまブランド産品」として指定し、当該産品を生産・出荷する一定の基準を満たした団体を「かごしまブランド団体」として認定している。
かごしまブランド産品指定基準
生産量が全国トップクラスであること
品質の評価が卸売市場関係者等から高いこと
品種が県の育成種などオリジナルであること
GI産品など、品質等の特性が、地域と結びついていること
※GI産品:農林水産物・食品のうち、品質等の特性が地域と結びついており、名称が特定でき、知的財産として国が保護している産品
(引用元:https://www.kagoshima-shoku.com/about)
かごしまブランドマップ https://prtimes.jp/a/?f=d113731-20230203-ff7ed524ec83c7bdac907861e6c3f7eb.pdf
メニュー開発の指導には、鹿児島県出身のベテラン料理研究家らも参加し、食のトレンドから見た商品開発事例として、withコロナ時代の食生活環境と課題を踏まえて、21世紀型の消費者に求められる商品開発・特産品を活用した地域づくり戦略の授業が行われた。
今年度は「かごしまのさかな」ブランドから、養殖カンパチも提供された。カンパチは、垂水市漁協、鹿屋漁協、ねじめ漁協を主要産地とし、鹿児島県が生産量日本一を誇っている。カンパチ養殖の現状と、時代のニーズにあった一次加工の取組みなどが同県の水産振興課より紹介され、生徒たちは熱心に耳を傾けた。
「かごしまのさかな」ブランド認定制度:https://www.pref.kagoshima.jp/af05/sangyo-rodo/rinsui/suisangyo/brand/kagoshimasakana.html
生徒たちは、これらの農産・畜産・水産「かごしまブランド」のあり方を学び、料理として活用し、新たな時代の料理メニューを考案するプロジェクトとなった。
〇メニュー開発・調理実習
同校はこれまでも積極的に食の生産地や企業との連携を図り、実践的な授業を行ってきた。
食を生業として、厳しい高級寿司店の調理現場を生き抜いてこられた副校長 石川 康二 先生は、「生徒たちに食の業界での夢を叶えてほしい」と願いを込め、長年の和食調理経験とネットワークを活かし、人を幸せにするおもてなしの精神を基本として、実践的なマーケティング思考、メニューに対する徹底した原価意識、オリジナリティあふれる調理技術を熱心に指導している。
専門学校生たちは垂水市漁協から提供されたブランド認定カンパチ「海の桜勘(うみのおうかん)」を使い、県から提供されたブランド産品とも組み合わせながら、アピールするターゲット、販売価格、原価(原価率)、商品コンセプトを踏まえてレシピの開発に挑戦した。
〇予選会
11月4日に行われた予選会では、鹿児島食材をふんだんに活用した33名の若者らしい多彩なメニューが発表された。
活用されたかごしまブランド産品・おさかなブランド・特産品等
野菜:桜島だいこん、安納芋、ミニトマト、小松菜、カラーピーマン、スナップえんどう、ごぼう、さやいんげん、紫いも、そらまめ、かぼちゃ、じゃがいも
果樹:大将季、たんかん、ぽんかん
畜産物:黒豚
水産物:カンパチ
特産品等:かごしま茶、黒酢、黒酒、黒糖、かつお節、ごま
審査は鹿児島県福岡事務所のメンバーや専門家らによって「デザイン・味覚・企画力・プレゼン力」と「鹿児島県食材の活用度」を考慮して行われた。また各々のメニューに対し、実際のマーケットを見据えたブラッシュアップ・アドバイスも行われた。
予選通過メニュー
カンパチの黒豚巻き黒甘酢あんとバカまぶしつけ
カンパチの和風タルトレット
あんかけ野菜と彩りカンパチ団子
カンパチのトマトとチーズのブルスケッタ
カンパチのリゾット
カンパチの味噌床焼き
炙りカンパチと黄色いポレンタ~ナスのムース添え~
カンパチマリネとレモンオイルパスタ
3種のソースとカンパチのパイ乗せ焼き お茶のチュイルを添えて
カンパチの白胡麻担々しゃぶしゃぶ
審査の結果、予選を通過した10名の専門学校生たちは、再度メニューのブラッシュアップを試み、11月27日企業・メディア向け招待会と2次審査に臨んだ。
〇2次審査
企業・メディアを招いた招待会では、選抜された10名によるメニューが提案された。予選会よりブラッシュアップされたメニューには工夫や進化が確実にみられ、商品のプロトタイプまで提案されるなど、さらに魅力が増された内容であった。
〇最終審査結果
★最優秀賞★
最優秀賞には、工藤麻椰さん(19)のデザートのような前菜で満足のいく一皿に鹿児島の魅力を詰め込んだ一品「3種のソースとカンパチのパイ乗せ焼き~お茶のチュイルを添えて~」が選ばれた。
かごしまの食材として、「カンパチ・ごぼう・カラーピーマン・黒酢・抹茶」を使用し、「けしの実で包んだカンパチを、黒酢ソースを敷いたパイに乗せて焼いた。パイの甘さとカンパチのしょっぱさがマッチして食べやすい。ごぼうのホワイトソースなどはパイに付けていただくことでいろいろな味を堪能できる。」と説明した。
受賞後、「鹿児島のカンパチはくさみがなく優しい口どけ。ゴボウや柑橘など、爽やかで食べやすい食材が多い。今後も注目していきたい」と語った。
一皿で鹿児島が語れる完成度の高い逸品であり、味、デザイン、技術とバランスのとれた作品。カンパチと黒酢のソース、ごぼうの組み合わせが美味しく、丁寧な仕上げや彩りが専門家らの高い評価を得た。
★優秀賞★
優秀賞には、鹿児島への想いが詰まった、視覚と味覚で楽しめる2品が選ばれた。
守 敬祐さん(20)「炙りカンパチと黄色いポレンタ~なすのムース添え~」
料理で生産者、澄んだ海、桜島、エネルギー、健康などをイメージ。竹炭パウダーで桜島の火山灰を表現した鹿児島を楽しめる一品。
★優秀賞★
上運天 麻鈴さん(19)「あんかけ野菜と色彩カンパチ団子」
食材本来の味を視覚と味覚で一緒に楽しめる一品。
★努力賞★
各分野のマーケットで活躍が期待できるメニューや、味変が楽しめるなど斬新なアイデアには努力賞が贈られた。
〇今後の取り組み
鹿児島県は、今後も専門家らと継続して連携を図り、同県をはじめ九州内の飲食・食品関連企業・観光施設等に向けて新メニュー活用・商品開発の提案など県産品普及拡大の取り組みを推進する。
参加した学生らには、今回のプロジェクトを糧に、社会進出した後にも、かごしまブランド産品・食材を活用した職場での実践・活躍が期待される。
〇プロジェクト参画企業・イベントコラボの募集
鹿児島県福岡事務所では、鹿児島ブランド・プロジェクトへの参画や、かごしまブランド食材・特産品を使ったレストランメニュー・加工食品の開発・食イベント等のコラボ企業を募集している。
【問い合わせ先】
鹿児島県 福岡事務所 県産品振興課
福岡市博多区博多駅中央街8-20第二博多相互ビル5階501号
TEL:092-441-2852
〇プロジェクト参画団体・企業
■主催
鹿児島県福岡事務所
■共催
学校法人 滋慶学園
福岡キャリナリー農業・食テクノロジー専門学校
福岡県福岡市博多区石城町20-9
https://www.f-culinary.ac.jp/
■食材提供
〇かごしまブランド産品提供
かごしまブランド推進本部(鹿児島県農政部農政課かごしまの食ブランド推進室内)
鹿児島市鴨池新町10番1号
https://www.kagoshima-shoku.com/
〇極上カンパチ 海の桜勘 提供
垂水市漁業協同組合
鹿児島県垂水市海潟643-6
https://www.tarumizugyokyou.com/
■企画・運営
食のコンサルティング・ファーム
有限会社フーディアムトクナガ
福岡県那珂川市五郎丸3-1-18
https://foodium.co.jp/