今月東京都内で始まったグルメイベント「日本における遼寧の味 -- 遼寧料理を日本の中華レストランへ」。遼寧省人民政府新聞弁公室が主催し、美食を通して文化交流を図るこの企画は23日、伝統の味を継承するシェフが本格的な遼寧料理を披露して幕を閉じた。
イベント最終日の舞台は港区の中華料理店「龍祥軒」。「遼寧料理特別セッション試食会」に約20人のゲストが集った。
遼寧出身の参加者はふるさとの味を懐かしみ、遼寧料理初体験のゲストは新しい味覚を楽しんだ。色鮮やかな前菜から本場ならではのデザートまで続くフルコースを堪能。文化の相互理解を深めながら会話を弾ませていた。
メニュー:
鍋包肉(揚げ豚肉の甘酢ソースかけ)
地三鮮(三?野菜炒め)
亂燉(乱シチュー)
小?燉?菇(キノコと鶏肉の煮込み)
豬肉燉粉條(豚肉と春雨の煮込み)
?肝尖(レバーの炒め物)
酸菜排骨鍋(豚リブの煮込みと野菜のピクルス鍋)
拔絲地瓜(サツマイモの砂糖炒め)
■伝統の味の継承者
遼寧出身で「龍祥軒」オーナーの苗偉氏は、瀋陽の老舗「鹿鳴春」で働き、著名料理家の劉敬賢氏に師事した。劉氏は中国飯店協会栄誉主席、世界中餐料理連合会名誉主席を務める。
苗氏は1995年に来日。2007年にこの店を立ち上げた。現在は3店舗を営む。店内では日本人好みの味に調整を加えた料理もあるが、看板メニューは正統派の遼寧料理。知る人ぞ知る中華のグルメスポットだ。
イベント開始前、調味料が整然と並んだ厨房(ちゅうぼう)には、コンロの強火に包まれた中華鍋をリズムよく振る苗氏の姿があった。ころもをまとった豚肉をたっぷりの油で手際よく炒める。火の通りを何度もみはからった後、しあげに甘酢のたれを加えると厨房には甘酸っぱい香りが広がった。
■日本人シェフとのコラボ
この日、「天厨菜館」天王洲店の吉田一弘料理長が日本人シェフを代表して厨房に立った。つややかなレバーと新鮮な野菜を強火で炒め、メニューの一品を仕上げた。
吉田氏は、苗氏の流れるような作業を真剣に見つめ、言葉を交わしながら伝統の技を学んでいた。
「ここで教わったことや見たことを少しでも自分の知識にして、それを職場や周りの仲間に還元し、この料理を少しでも周りに伝えていけるよう自分なりにやってみたい」と語った。
■ふるさとの味
ゲストとして参加した黄迅さんは、「日本に来て30年だが、故郷の正統な料理を食べたのは初めて」と話す。「拔絲地瓜」(サツマイモの砂糖炒め)は東京ではほぼ食べられないと言う。
遼寧料理初体験の大竹伸子さんは、日本料理とはちがった上品さを感じたと言う。
「普段食べないものがいっぱいでてきた。味付けは全然違うけど、どれもおいしかった」と話し、いつの日か遼寧を訪れたいと期待を膨らませた。
■食は文化の懸け橋
苗氏は、歓談するゲストを眺めながら、食が文化の懸け橋になれると語った。日本における遼寧料理について、「本格的に入って来て30年だが、発展途上という感じ。どんどん広めていけたら」と話す。
イベントについては、「日中のシェフがお互いに交流していくのは、お互いの技術を上げていけるので、またぜひやりたい」と語った。
日本側の主催を務めた世界中餐業連合会副会長でNPO全日本中華料理・ホテル支援協会理事長の程顕斉氏は、今回のイベントで遼寧料理が広く知られるきっかけになればと期待を寄せた。
「本場の遼寧料理を作り食べてもらう。これは第一歩」と程氏。日中の文化交流に料理は欠かせないとして、来年以降も活発な交流を見据えた。