焼肉店の倒産が急増、前年度から倍増し過去最多 「消耗戦」で淘汰相次ぐ 焼肉店の業績、大手と中小で二極化鮮明 値上げの成否で明暗分かれる…

更新日: 2025年04月01日 /提供:帝国データバンク

「焼肉店」の倒産動向(2024年度、速報)




株式会社帝国データバンクは、「焼肉店」の倒産発生状況について調査・分析を行った。

SUMMARY
2024年度の焼肉店の倒産件数は55件(速報値)発生した。前年度(27件)から倍増し、過去最多を記録した。輸入牛肉や野菜などの原材料、人件費の高騰など経営環境が厳しいなかで、小規模店や異業種からの参入店では値上げが難しく、損益面で苦戦したことが主な要因となった。今後も原材料価格や運営コストの高止まりが予想され、2025年度も倒産件数が高水準で推移する可能性がある。

集計期間:2000年4月1日~2025年3月31日まで
集計対象:負債1000万円以上・法的整理による倒産
「焼肉店」の倒産、2024年度は過去最多 前年度から倍増
焼肉店の倒産ペースが加速している。2024年度(2024年4月~25年3月)に発生した「焼肉店」経営業者の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は55件(速報値)判明した。前年度(27件)から倍増となり、これまで最も多かった2019年度(28件)を上回って過去最多を更新した。ただ、個人営業など小規模店の閉店や廃業を含めれば、実際はより多くの焼肉店が市場から退出したとみられる。

2024年度における焼肉店の経営は、コロナ禍の出店ラッシュで様々なプレイヤーが参入するなか、輸入牛肉や野菜などの原材料、人件費といった店舗運営コストの高騰をメニュー価格に反映できたかが、各社の明暗を大きく分けた。



原材料価格では、人気の高いロイン・かた・ばらの部位各1kgにおける輸入牛肉をみると、2024年度の月平均価格は20年度比1.8倍に上昇し、リーズナブルな価格が人気だった米国産のコスト増が強まった。加えて、近時は焼き野菜やサラダなどで提供する野菜類の値上がりも目立ち、キャベツなど焼肉店で採用の多い主要な野菜価格は同1.2倍に上昇するなど、厳しい収益環境が続いた。

他方で、2024年度の焼肉店における損益動向をみると「赤字」は約2割にとどまり、「減益」を含めた「業績悪化」の割合は、コロナ禍で焼肉需要がピークを迎えた21年度以来3年ぶりに5割を下回った。既存の焼肉チェーンでは、大量仕入れなどの低コスト運営を強みとした割安な食べ放題メニューを充実させたことで「安く焼肉を食べたい」ファミリー層などの需要を取り込み、コスト増を売り上げの増加でカバーする動きが目立った。半面、コロナ禍の焼肉ブームを背景に異業種から出店した企業や小規模な焼肉店では、客離れを警戒して十分な値上げに至らず、損益面で苦戦するケースもみられるなど二極化が進んだ。結果的に、消耗戦に耐え切れない中小焼肉店が淘汰され、倒産件数を大幅に押し上げた。

足元では、大手チェーン各社はメニュー価格を引き上げるほか、SNSの活用や季節限定メニューをはじめとした新商品の投入でファミリー層以外の新たな顧客開拓といった施策を進めている。近時はロードサイド以外にも、集客力の高いショッピングセンターに出店し、固定客の獲得を狙うケースもみられる。ただ、輸入牛肉など原材料価格の高止まりや、電気・ガス代や人件費など店舗運営コストの負担増も加わり、厳しい環境は今後も続くとみられ、焼肉店の倒産は2025年度も高水準での推移が続く可能性がある。





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