~CX全国調査結果ダイジェスト~ 大きく変化する接客力、25年は顧客体験の転換点

更新日: 2025年03月27日 /提供:LMIグループ

商空間における人間によるコミュニケーションと空間によるコミュニケーションの最適化を実現する調査、コンサルティングサービス「CX Finder」を提供するLMIグループ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:永井俊輔、以下「LMIグループ」)は、全国の5大都市(東京、大阪、名古屋、札幌、福岡)において、商空間のCX(顧客体験価値)調査を、ファッションアイテムを取り扱う店舗を対象に2025年2月に実施しました。2023年にコロナ禍の5類移行を経て市場が新しい日常に変化しています。インバウンド売上の活況が叫ばれる一方で、店頭における慢性的な人手不足が課題となる今、CXの実態がどのようになっているのかを分析しました。


全国平均スコアは63点で前年比+2点。ラグジュアリーブランドがアフォーダブルラグジュアリーブランドと並び同率一位になる大波乱


(図1)全国調査におけるカテゴリー別の総合点

今回の調査では、全国の総合点は63点となりました。2024年4月に計測された61点を2ポイント上回り、全国的な顧客体験価値はやや改善する結果となっています。
調査対象となったブランドのカテゴリーを見ていくと、ラグジュアリーブランド(LUX)とアフォーダブルラグジュアリーブランド(AF LUX)が全国平均スコアをけん引する傾向は昨年同様です。一方、今回の調査では、全国調査を開始して以来、全カテゴリーにおいて圧倒的なリードを続けてきたラグジュアリーブランドが大きく前年よりもスコアを落とし、アフォーダブルラグジュアリーブランドと並んで同率1位になるという大きな変化が見られました(図1)。また、同じラグジュアリーブランドであってもインデックスとなっているブランドごとにスコア差があったことや、ブランドの売上の好調不調と一定の相関性を示す結果となっていることは、大変興味深い点です。高い付加価値をもつ商材を取り扱うブランドであるからこそ、接客力もブランディングの構成要素として大きな比重を占めていることを感じさせる結果となりました。

なぜラグジュアリーブランドグループのスコアが落ちたのか?インバウンドの影響は?


(図2)ラグジュアリーブランドで前回調査よりスコアを落とした設問の割合

今回の調査の中で、ラグジュアリーブランドにおける接客力が大きく低下した背景を探るため、調査結果を分析したところ、店頭におけるお客様との接点が減り、コミュニケーションが希薄になっている状況が見えてきました。前年同時期と比較して大きく落とした設問を見ていくと、「入店への気づき」「話しかけやすい雰囲気」「購入を検討するにあたってのアドバイス」など、店舗のスタッフとお客様のコミュニケーションが生まれる始点の部分から、購入を検討するにあたってのやりとりにおいてポジティブに検討してもらうためのアドバイスなど、今までラグジュアリーブランドで課題としてあがることがほぼなかった点についてスコアを落としています。今回の調査結果の背景に横たわる大きな要因を分析していくと、昨今売上の大きな伸長の背景になっているインバウンド顧客への対応であることが見えてきました。

実際の調査結果におけるコメントからも、「インバウンド客だと思われたのか、アプローチが遅く、入店してから見定めるために様子を見られているような状況があり居心地が悪かった」「海外からのお客様が接客スペースを塞いでしまっており、自分が接客を受けるような状態になっていなかった」などのように、国内顧客に対しての対応に手が回っていない状態が推察される結果となっています。実際の調査スコアも、すべての接客シーンで1年前からスコアを落としていました(図2)。
前回調査よりも総合点を3ポイント上げたアフォーダブルラグジュアリーブランドは、若年層を含めた幅広い客層に対して、アクセスしやすいラグジュアリーカテゴリーとして、商品力だけでなく、接客でもレベルが上がってきていることを感じさせます。インバウンド顧客について、接客環境におけるボトルネックとなっているシーンが想起されるコメントもほぼ上がっておらず、国内顧客目線で見た時に良い接客を受けやすい環境が整っていた点も今回の調査スコアから見えてきました。

CXスコアと売上の関係性
カテゴリー全体としてはスコアを落としたラグジュアリーブランドでしたが、インデックス対象のブランドごとに見ると、スコアの高低や前年からの変動に差がありました。特に興味深いのは、ラグジュアリーブランドにおける直近の売上前年対比の変化とCXスコアの変化に明確な相関関係が見られた点です。


(図3)CXスコア変化と売上変化の関係

代表的なラグジュアリーブランドであるブランドB、ブランドC、ブランドAのCXスコアと売上実績を比較したところ、顧客体験の質が売上に直接影響を与えていることが明らかになりました。最も高いCXスコア(78点)を誇るブランドBは前年比で微減(-3点)したものの、依然として高水準を維持し、売上も前年比+1%と堅調でした。一方、最も大きくCXスコアを落としたブランドC(69.0点、前年比-8点)は、売上も-25%と大幅に減少。対照的に、CXスコアを向上させたブランドA(72.5点、前年比+1点)は、売上が+17%と大きく伸長しています。

これらの結果から、顧客体験の「質」と「変化」の両方が売上パフォーマンスに影響することを示唆されます。特に、CXスコアの水準だけでなく、前年からの変化(改善度)も売上に大きく影響していることがわかります。


変化する環境下での顧客コミュニケーション再構築に必要なものとは?
今回の調査結果は、前回大きく低下した顧客体験価値の全国平均が2ポイント持ち直す結果となりました。その一方で、今まで好調な売上とともに接客力をけん引してきたラグジュアリーブランドがスコアを落とすという、これまでにない変化も含む内容となりました。私たちはこの状況を、取り扱う商材のカテゴリーの枠を超え、ファッション業界全体が直面している構造的問題と密接に関連している状態であると考えています。深刻な人材不足、教育機会の減少、ベテラン販売員の業界離脱によるノウハウ継承の断絶など、接客品質を支える基盤そのものが揺らいでいる現状がある中、インバウンド需要の増加がこれらの課題を顕在化させ、従来の接客モデルの限界を露呈させました。根本的なオペレーションやトレーニングの在り方についての見直しが必要であることを示しています。
CX Finderでは、この危機を変革の機会と捉え、CX調査による現状の把握を起点とした、限られた人材リソースを最大限に活かすための効率的なトレーニング支援やセミナー提供、デジタルツールを活用した接客ナレッジの共有システム、経験の浅いスタッフでも質の高い接客を提供できるプロトコルの標準化などに取り組んでいます。特に注目すべきは、接客プロセスの各段階を明確に分解し、必要なスキルと知識を体系化することで、短期間でも効果的なトレーニングを可能にする取り組みです。
業界全体が人材課題に直面するこの時期だからこそ、自分たちの現在の立ち位置を把握し、「何が課題なのか」を理解することが重要です。インバウンド需要の増加と人材環境の変化を一時的な現象と捉えるのではなく、持続可能な接客モデルを構築するための転換点として、売上を上げるためのCX改善と、店舗運営DXを軸とした接客と店舗オペレーションの抜本的な改革に今こそ取り組むべき時が来ています。


※CX Finderのサービスの詳細や、より詳細な調査結果などについてのお問合せは文末の問い合わせまでご連絡をお願い致します。

■CX Finderとは


「CXFinder」はツールの名称ではなく、LMIグループが提供する店舗CX改善と店舗運営DXを進めるコンサルティングサービスの総称です。経営者や店舗スタッフらとの対面によるヒアリングを重ね、最適なKPIの設定から、ミステリーショッパーの導入、AIカメラ設置などによるデータ取得など、感性データと定量データを掛け合わせた対策の提案、ゴールまで並走する体制が強みです。2024年からは、LLM(大規模言語モデル)をはじめとしたAIの活用もより戦略的に組み込み、商空間の最適化を目指しています。






■調査概要
対象エリア:東京、大阪、名古屋、札幌、博多
対象業種:ラグジュアリー、アフォーダブルラグジュアリーセレクトショップ、カジュアル、その他(スポーツ、アクセサリ等)
実施調査数:約250調査
調査時期:2025年2月
調査方法:CX Finder独自設問(全80問)


■著者



新井敬介arai.keisuke@lmig.co.jp
1982年生まれ。慶應大学卒業後、新卒から13年間、森ビルの商業施設運営に関わる。WMH社をへて現職。百貨店、ショッピングセンター、アパレル、セレクトを中心にファッション、ビューティから食品まで幅広い業界での支援をしてきた実績をもつ。店舗空間における「顧客体験価値=CX」の最適化を実現するために「CXファインダー」を開発。自他共に認める接客コミュニケーションオタク。AIをより積極的に組み入れた空間価値創造に力を注いでいる。





【本ニュースレターに関するお問い合わせ】
LMIグループ株式会社 IMS本部 
Mail:cxfinder@drame.tokyo
URL: https://www.lmig.co.jp/commercial-space#retailLd

bnr_500_tanomu.png 記事下バナー

注目のキーワード

すべてのキーワード

業界

トピックス

地域