ビフィズス菌研究50年以上の森永乳業が主導した、新たなビフィズス菌数測定法改定案が国際規格に採択・発行

更新日: 2025年01月21日 /提供:森永乳業

~乳製品中のビフィズス菌数をより安定的に測定することが可能に~

 森永乳業は50年以上にわたり、ヒトの腸内にすみ、様々な健康効果をもたらしていると考えられているビフィズス菌の基礎研究を行い、製品へ応用しています。製品に含まれるビフィズス菌の生菌数値は、生理効果の指標に用いられ、また製品規格に使用されることから、その分析法は重要です。国際標準化機構 (ISO) および国際酪農連盟 (IDF)では、乳製品中のビフィズス菌数測定法として、ISO 29981 | IDF 220(乳製品-推定ビフィズス菌の菌数法-37℃におけるコロニー計数法) を2010年に初版発行しています。今回、より安定的に生菌数値を測定することを目的とし、当社が主導して上記国際標準法の改定に取り組みました。
 まず、当社が発案した改定案はIDF日本国内委員会から正式にIDF本部へ提案され、改定のためのアクションチームが結成されました。本アクションチームのリーダーを当社の社員が担当し、ISOおよびIDFの改定に向けて取り組んだ結果、この度、改定案が国際規格として採択・発行されました。

1.改定の背景と取り組み
 ビフィズス菌の生菌数を測定する方法として、現在では培養法と呼ばれる方法が広く用いられています。培養法は、図1に示す通り、(1) サンプルを希釈液で溶解し、段階希釈した溶液をシャーレに入れる、(2) 温めた培地をシャーレに入れて固化したものを培養する、(3) 生育したコロニー数を計測することで測定します。今回のアクションチームでは、国際標準法として広く使用されているISO 29981 | IDF 220について、より安定的に測定することが可能な培養法の開発を目的として、1.粉末製品における溶解温度の適温化と、2.使用可能な希釈液の追加を目指しました。

              図1 ビフィズス菌の培養法の概略と改定の主な変更点


2.改定への主なプロセス
・当社が発案した規格の改定案はIDF日本国内委員会から本部へ提案され、本規格の変更を目的としたアクションチームがIDFとしては2016年に結成され、本チームのリーダーを当社の社員が担当しました。尚、当アクションチームはISO/TC 34 (食品専門分科会)/SC 5 (乳及び乳製品分科委員会) およびIDF常設委員会のもと運営されております。
・ISO法発行のプロセスには各段階で案を提出し、コメント・投票等を行う必要があり、作業原案、委員会原案、国際規格案、最終国際規格案の各ステップをアクションチーム内で議論して案を作成してまいりました。
・2023年には日本とヨーロッパにおいて、研究所間比較テスト (ILS) を実施しました。調製粉乳、ビフィズス菌末、ヨーグルトのそれぞれを冷蔵もしくは冷凍条件下にて送付し、本方法を用いてそれぞれ同一日に測定しました。統計解析した結果、別のISO文書にて規定される分析基準値内に収まることが確認されました。研究所間比較テスト等の詳細は、IDF広報第530号 (2024年) として出版されています※1。
・10月にはフランス、パリ市で開催されたIDFワールドデイリーサミット (WDS) において、本アクションチームの取り組み関する口頭発表を1件※2、ポスター発表を1件それぞれ実施しております※3。

<主なマイルストーン>
2010年 ISO/IDF法の初版発行
2016年 IDFにおけるアクションチームの結成
2019年 改定案の作業原案(WD)の登録
2020年 委員会原案(CD)の登録およびコメント募集
2022年 複数研究室における比較試験
2023年 研究所間比較テスト(ILS)
2023年 国際規格案(DIS)のISO各国投票およびIDF国内委員会投票
2024年 最終国際規格案(FDIS)のISO各国投票
2024年 11月26日ISO/IDF改定法(第2版)の発行

3.改定版の発行
 国際規格ISO 29981 | IDF 220の改定版は、2024年11月26日に第2版として発行されました※4。本方法が発行されることにより、乳および乳製品中のビフィズス菌数をより安定的に測定することが可能となるため、ビフィズス菌含有製品の普及拡大に寄与すると考えられます。
 乳及び乳製品の分野において、IDF/ISO法の研究所間比較テストが必要な改定を日本の企業が主導して実施することは、近年ではほとんど例がありませんでした。今回の取り組みを通じて、国際的なルールの策定に参加することの重要性を認識し、また、そのような案件に関与することができる体制を構築することで業界の発展に貢献できる企業であり続けることを目指してまいります。

     改定版ISO 29981 | IDF 220の表紙

※1 Multi-laboratory study and interlaboratory study on the enumeration of bifidobacteria for in milk products. IDF. 2024. IDF bulletin No. 530. URL: https://shop.fil-idf.org/products/bulletin-of-the-idf-n-530-2024-multi-laboratory-study-and-interlaboratory-study-on-the-enumeration-of-bifidobacteria-for-in-milk-products
※2 Recent development of IDF/ISO standard in microbiology: revision for enumeration of bifidobacteria in milk products、武藤 正達、IDF WDS 口頭発表 (2024年10月17日、フランス、パリ市)
※3 Multi‐laboratory study and interlaboratory study on the enumeration of bifidobacteria for milk products、坂井 千紗, 武藤 正達、野村 直子、宮内 浩文、越智 浩、IDF WDS ポスター発表 (2024年10月15 - 18日)
※4 ISO 29981:2024 | IDF 220:2024 Milk products - Enumeration of bifidobacteria - Colony-count technique. ISO and IDF. 2024. URL: https://www.iso.org/standard/79391.html

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