株式会社コーチェット(東京都港区、代表取締役:櫻本真理)と福山大学 キャリアデザインゼミ(顧問 前田 吉広)は、大学生を対象にしたピアコーチング*のプログラム(コーチェットが提供しているピアコーチングクラウドツール「PEER+(ピアプラス)」を活用したプログラム)を実施し、学生が中心となってポスター発表を行いました。
半年間にわたるピアコーチングプログラム実施の結果、学生間コミュニケーションの活性化および社会人基礎力(「傾聴力」「情況把握力」「発信力」「ストレスコントロール」「課題発見力」)の向上に関わる要素が抽出されました。
VUCAの時代に働いていく上で必要不可欠なコミュニケーション能力と主体性の向上に、ピアコーチングが活用できる可能性が示唆されています。
*ピアコーチングとは
「ピア(peer)」とは、仲間・同輩・横のつながりという意味の英語で、力関係の格差のない関係性を指します。
「ピアコーチング」は、その名のとおり「ピア」との「コーチング」、つまり仲間・同僚などの横のつながりの中での相互に育て合うコーチングの関わりを意味します。
<参考記事>ピアコーチングとは何か:その意味とメリット、実践方法や事例を解説
報告内容
以下、ポスター発表の内容を転載いたします。
【成果1】学生間コミュニケーションの活性化
ピアコーチングに取り組むペアは、自主ゼミの当時リーダーが、普段話すことの少ないメンバー同士(例:学年・学部が異なる)で、且つ価値観や個性を考慮して組み合わせたことが功を奏した。
1年生からは「将来に対する先輩の目標が明確で、就職や海外研修など、 自分を成長させてもらえる話が聞けた。」「先輩から自分では気づけない 強みを見つけてもらった。自分をもっと知る必要があると思った。」等の 意見があり、ゼミ内での新しい関係が生まれたきっかけになった。
【成果2】自主ゼミ運営のスムーズな引き継ぎ
約2年間リーダーを務めた4年生が2024年3月に卒業を迎えることもあり、2023年度内にその役割を引き継ぐことが、自主ゼミ活動の大きなテーマの一つだった。9月の合宿を皮切りに、新体制に向けた意見交換がおこなわれ、10月中旬には新しいリーダーへの引き継ぎ会が開催された。
2023年度は自主ゼミのメンバーが大幅に増え、これまでの1名リーダー体制では負担が大きいという意見が出たため、2,3年生からそれぞれ1名のリーダーが選出され、2名リーダー体制で運営することに決定した。
【成果3】社会人基礎力の肯定的な変化
PEER+活用にあたっては、事前事後に自己開示の受けやすさに関するオープナー・スケールと社会的スキルの度合いを見るKiSS-18の2つの尺度からなる質問紙による調査と、終了時に「気づき」「心地よさ」「難しさ」「その他」の4つの設問で自由記述式の振り返りを求めたアンケートに回答してもらった。
その結果、PEER+活用の1巡目時点においては、オープナー・スケールでは前後で差が見られなかったが、KiSS-18では事後が有意に高かった。その後2巡目を終えた段階では、オープナー・スケール、KiSS-18ともに有意に高い結果となった。
次に事後の自由記述を社会人基 礎力の12の能力要素を利用して分類を行った。結果、チームで働く力から「傾聴力」「情況把握力」「発信力」「ストレスコントロール」その他の2つから「課題発見力」に関わる振り返りが複数抽出された。
▲PEER+活用の2巡目を終えた段階での数値(オープナー・スケール、KiSS-18ともに有意に高い結果となった)
ポスターは以下よりダウンロードしてご覧いただけます。
d72001-21-cdc2b6b6ee5bde5248d7d0a347fe91f0.pdf
関係者コメント
【キャリアデザインゼミ 顧問 前田吉広より】
福山大学の自分未来創造室では、学生の主体性を育むキャリア支援の取り組みの一つとして、自主ゼミ「キャリアデザインゼミ」を運営しています。近年、自主ゼミのメンバーが増える一方で、学生達の間でコミュニケーションに課題を感じている様子が見られるようになりました。
そこで、2023年度よりコーチェット社の協力を頂き、前期と後期を合わせて約10ヶ月間、学年・学部の異なる学生同士でピアコーチングに取り組んだところ、以前と比べてゼミ内の雰囲気が改善されたように感じます。
学生達の「何を話していいかわからない」、「こんなこと聞いてもいいの?」といった不安を丁寧に取り除きながら、「話すこと」と「聞くこと」を実践的にトレーニングできるピアコーチングは、コミュニケーションに悩みを持つ若者にとって、とても有効な取り組みだと実感しています。
【研究協力 内垣戸 貴之より】
「大学は専門的な知を学ぶ場である」というのは皆さんの共通認識だと思います。ただそれは、教室で授業を受けて完結するものではなく、得た知識や技能を教室の外での実践的な場で活用したり、他者と関わり合いながら自分や社会の実態を感じていくことで、初めて深く学び得るものです。そしてその時、当然のことながらコミュニケーション能力が欠かせないのですが、多くの学生が苦手意識を持っているのが現状です。
そこで今回の取り組みに至ったというわけです。 学生たちにとってはPEER+はコミュニケーションのトレーニングという位置づけだったかもしれません。しかし、櫻本さんや我々教員側には、学生たちが他者を通して自分を知ること(逆もまた然り)というコミュニケーションならではの学びが、PEER+ならば実現できるという確信めいたものがありました。
実際、データからもそうした成果が見えてきています。今後はこれらの成果をどのように積み上げていくのか、学生たちと一緒に考えていきたいと思っています。
【株式会社コーチェット代表取締役 櫻本真理より】
コーチェットでは主に組織の相互育成力を高めるサポートをさせていただいていますが、そのためにはリーダーの「育てる力」だけでなくメンバーの「育てられる力」も重要になります。
これらの基礎は、聴く・伝える・問いかけるという関わりです。特にコロナ以降の学生においてこれらに苦手意識を持つ方は多く、組織の中で問題となっている例も散見されます。学生の間にピアコーチングを通じて、失敗も含めたコミュニケーション実践を重ねることで、他者と関わるということについての苦手意識を軽減し、人間関係の葛藤を扱う素地になるものと考えます。
今回のような取り組みがより多くの大学・高校に広がっていくことを願っております。
大学・会社概要
福山大学 キャリアデザインゼミ
キャリアデザインゼミは、学部や学年を超えた学生有志が集い、仲間と協力して新たな挑戦を通じて成長することを理念に掲げて活動する「自主ゼミ」です。ゼミ活動を通じて、学内外で多様な人々と出会い、「キャリア観」を学ぶと同時に、自分自身の「強み・弱み」や「やりたいこと」を発見し、将来の選択肢を広げることを目指しています。
顧問 :前田 吉広(大学教育センター)
学生リーダー:越智 時起人(経済学部3年)、長尾 実輝(経済学部2年)
研究協力 :内垣戸 貴之(人間文化学部 メディア・映像学科)
サイト :https://careerdesignlab.jimdofree.com/
本プロジェクトは、令和5年度福山大学教育振興助成事業「特色ある教育方法開発助成金」に採択されています。
URL:https://www.fukuyama-u.ac.jp/research/project/educational_promotion/
株式会社コーチェット
弊社では、「すべての人が、互いを生かし、育て合う社会をつくる」をビジョンに掲げ、メンバーの自律性を引き出し、浸透させる伴走型トレーニングプログラムを提供しています。これからもひとりひとりが自分らしく、個性を輝かせられるような社会を目指してまいります。
創業 : 2020年1月8日
代表者 : 代表取締役/CEO 櫻本真理
所在地 : 東京都港区赤坂7-5-27 赤坂パインクレスト 301号室
サイト : https://company.coached.jp/
サービスサイト : https://coached.jp/