今年は例年以上に、日本各地で記録的猛暑が続き、気象庁によると、7月は観測による統計開始以来「最も暑い夏」となりました。気候変動もこの猛暑の原因の一つとされており、その影響は、観光地にも大きく及んでいます。例えば、佐賀県では、海水温上昇により名物の呼子イカが不漁になり、観光客の誘致に打撃を与える懸念がありました。そこで佐賀県では、好漁な青魚等を使用したグルメ開発やプロモーションに注力し、活路を見出しています。いわば水揚げ魚種の変化を逆手にとった試みで、気候変動に対応した新たな集客の柱の有力候補です。本資料では、佐賀県の取り組みの詳細についてご紹介します。
事例(佐賀県)
猛暑で名物イカが不漁に 代わって好漁な青魚でご当地グルメ開発 新たな観光の呼び水に
【課題】
・猛暑による海水温の上昇※1により、これまで獲れていた名物の呼子イカの漁獲量が減少し、代わりに青魚をはじめとした別の魚種が獲れる量が増える等の変化があった。これにより呼子イカを求めて来訪していた観光客の減少を懸念。さらに、全国的な水産物の消費低迷に伴う魚価の下落などで地元漁師の待遇や労働環境の改善が大きな課題となっており、県内外の消費ニーズの向上が不可欠だった。
※1気象庁によると、1991年~2020年の30年間の海面水温平均値と比較すると昨年1年間の数値は平均差+0.81と過去最高だった。
https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/data/shindan/a_1/japan_warm/cfig/warm_area.html?area=C#title
【打ち手】
・ご当地グルメとして、青魚と白身魚を味わえる「青と白の唐津ん魚めし」と、高級魚のアラ(クエ)を使った「幻の唐津んあら鍋」の2種類を開発した。地元水産業と行政、観光団体、地元飲食店等と、事業会社であるリクルートが協働して実施。
・具体的には、他地域の成功事例を参考にして、地元店舗が集まって売れるグルメの勉強会や食材の魅力発掘ワークを実施して、メニューや提供スタイルを決定した。開発要件や、アイデアの集約をし、メニューを各店舗試作。試作案を全体で集まる場に持ちより、磨き上げ、完成品を各店舗で販売している。
・唐津ん魚のおいしさの理由等を紹介しているホームページの制作や具体的なメニューを紹介しているパンフレット「ご当地じゃらん」を作成、メディア向けの試食会などのプロモーションも実施した。
【成果・兆し】
・地元新聞やテレビなどのメディアにも取り上げられ、パンフレット「ご当地じゃらん」も用意していた1万部がすぐに無くなり、増刷が決定した。
・2024年3月から開始した施策のため、まだ定量的な分析は十分ではないが、地元飲食店からは「ご当地メニュー目当てで来てくれるお客さんも増えた」との声も多い。
・未利用魚(加工の手間や漁獲量、形の悪さ等、さまざまな理由で市場に出回らない魚)や、害魚(藻場を食べて荒らす魚など)などの商品化も検討している(詳細は未定)
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