山椒の熟度によって、減塩補助効果が異なることを確認減塩に有効!「赤山椒」に特有の効果が明らかに

掲載日: 2021年07月02日 /提供:ハウス食品グループ本社

~龍谷大学との共同研究結果を日本栄養・食糧学会にて発表予定~

ハウス食品株式会社は、龍谷大学農学部との共同研究(実験名:熟度が異なる山椒エキスの減塩補助効果)において、赤山椒エキスには、味の持続性をもたらし、おいしさや満足度を高める効果があり、減塩に有効であることを明らかにしました。本共同研究の結果は、2021年7月3日、7月4日の日本栄養・食糧学会にて発表予定です。




■減塩の課題は「味全体が弱くなること」
減塩時の風味イメージ
食塩の摂り過ぎは、高血圧や胃がん等の疾病リスクを高めることが報告されています。しかし、食塩には塩味だけではなく、風味全体の強度を高める働きがあるため、減塩することで食事のおいしさが損なわれてしまいがちです。一方で、減塩における調理上の工夫として、香辛料の活用が経験的に知られています。中でも山椒は、塩味を強める効果があると報告されており、減塩に役立つ香辛料として期待されています。そこで、山椒の熟度に着目し、熟度が異なる青山椒(未熟山椒)と赤山椒(完熟山椒)がどのように減塩時の風味の強度を高めるかを検証し、減塩における有効性を調べました。

■共同研究について
この度、元龍谷大学農学部教授 伏木亨氏(現:甲子園大学副学長)との共同研究において、熟度が異なる山椒エキスの減塩補助効果の検証を行いました。
検証は、大学生(20代)9名を対象として官能評価を実施しました。青山椒・赤山椒のエキスを配合した烏龍茶を試飲後、塩分濃度が低いかつお出汁(塩分0.4%)を飲み、TI※1法 およびVAS※2法を用いて、かつお出汁について評価をしました。その後、青山椒・赤山椒のエキスについて、LCMS※3を用いた網羅的解析を行い、赤山椒に特徴的に多い成分をいくつか抽出し、効果を有する画分を絞り込みました。
※1 TI(Time Intensity):一つの感覚特性が時間経過に伴ってどのように変化するかを評価する手法
※2 VAS(Visual Analogue Scale):喫食者の主観的な感覚を評価する調査手法
※3 LCMS(Liquid Chromatography – Mass Spectrometry):液体中の成分を分離し、検出する機器

・結果1. 熟度によって効果が異なる!青山椒は先味を強くし、赤山椒は味の持続性を高める
図1より、青山椒は赤山椒に比べて、口に含んですぐの味を強く感じ、赤山椒は青山椒に比べて、味を感じている時間が長いことがわかりました。山椒の熟度によって、味を強める効果が異なることがわかりました。

・結果2. 赤山椒は、味の強さだけでなく、おいしさや満足度も向上させる
図2より、赤山椒は、山椒を摂取していないときに比べて、味を強く感じているだけでなく、水っぽさを改善し、おいしさや満足度を高めることがわかりました。

・結果3. 赤山椒に特有の効果には、新たな成分が寄与している可能性あり
LCMSを用いた網羅的解析や分画物の官能評価を行った結果、赤山椒に特有の、味の持続性を高める効果には、山椒の有効成分と報告されているサンショール類以外の成分が寄与している可能性が考えられました。
図1 青・赤山椒エキス摂取時のかつお出汁のTI平均曲線


図2 青・赤山椒エキス摂取時のかつお出汁のVAS評価値

■共同研究者からのコメント

伏木 亨(ふしき とおる)氏
農学博士
現 甲子園大学 副学長(2021.4~)
元 龍谷大学農学部教授(2015.4~2021.3)

本研究は人間が感じる塩味の強さをリアルタイムで評価できる新しい技術を用いて、未熟山椒は先味を強め、赤く完熟した山椒は味の持続性を支えているという興味深い結果を得ています。また、完熟した山椒の風味が出汁の味の濃さや満足度にまで影響を与えることを示したことは減塩による食の満足感の減弱を補完する効果につながる画期的な成果です。この作用にサンショール以外の成分も関与していることを明らかにしており、今後の研究の発展がさらに期待されます。

■研究の始まりは、山椒農家への訪問
ハウス食品では山椒の産地を定期的に訪問しています。農家の方と交流する中で、農家の人手不足や高齢化問題を目の当たりにしました。これらの問題解決に貢献するために、山椒の新たな価値を創りだすことはできないかと考え、山椒の減塩補助効果に着目したことが研究の始まりです。今後も、ハウス食品では、お客様の食卓だけではなく、生産者の方々にも貢献できるように、山椒を始め、スパイスの価値向上に繋がる研究を続けていきます。

この知見を活用し、赤山椒エキスを使用した製品を今後発売する予定です。

ハウス食品では、「おいしさとやすらぎを」というコーポレートメッセージのもと、今後も様々な研究や製品の企画開発を通じて、豊かな食文化と食の新しい価値を創造していきます。

■リリースに関して
本件に関しましては、龍谷大学からもリリースされています。
●龍谷大学ホームページ(リリースページ)
https://www.ryukoku.ac.jp/nc/news_center/?pg=14


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